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[インタビュー] 未来の自分のために何ができますか?【今村久美さん 認定NPO法人カタリバ代表理事】

  • 大学合格、その先の道を知ろう
  • [2017/6/28]

皆さんはこれから大学に入り、社会へと出る。
自分の将来のために、今やるべきことは何だろう。
高校生と本音で語り合うキャリア学習プログラムを主催する、NPO法人カタリバの代表理事 今村久美さんに高校生が進路を考える際に大事な点を伺った。
受験生のみなさんは、ここであらためて自分の進路、自分の将来について考えてみよう。

今村久美さん
《プロフィール》
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を卒業。大学在学中の2001年にNPOカタリバを設立し、高校生のためのキャリア学習プログラム「カタリ場」を開始。2011年の東日本大震災以降は被災した子どもたちに学びの場と居場所を提供する「コラボ・スクール」を運営するなど、社会の変化に応じてさまざまな教育活動に取り組む。ハタチ基金代表理事。2015年より文部科学省中央教育審議会 教育課程企画特別部会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 文化・教育委員会委員。

自分らしいキャリアは、主体的に学ぶ先に見えてくる。
体験をとおして内から湧き上がる興味・関心をもとに、将来を考えてほしい


進路について考える

予想できない未来に対して、今の基準で断定しない

 10~20年後には、今ある仕事のほぼ半数が人工知能(AI)やロボットによって代替できる、という研究結果が発表されました。この研究が表すように、社会はこれから大きく変化をしていきます。
 過去に経験したことがない状況が生まれ、見たこともない仕事が生まれるでしょう。今ある仕事も現状とは異なるものになるはずです。皆さんは近い将来、そうした変化の激しい社会へと出ていくわけです。
 高校生が進路を考える際に大事なのは、決めつけないこと、だと思います。現時点で考えられる限られた選択肢の中から「これが自分の進むべき道」と断定しない、ということです。
 もちろん、医師など専門的な技術職を志望する場合は、その専門課程に進むべきでしょう。しかしそうでないなら、社会がどう変化するのか誰も予測できないのですから、今の基準で進路を限定しないほうが、いずれ自分に合った道にたどり着きやすいのではないでしょうか。

※オックスフォード大学のマイケル A.オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士の共同研究による


社会の構造は変化し、知識も更新されていく

 そうした時代を生き抜くためには、「学び続けること」が大事だと私たちは考えています。
 社会が変化すれば、それに合わせて知識も更新されていきます。それが当たり前とされていた知識でも、将来においては捉えられ方が変わったり、新しい見解によって別の意味になっているかもしれません。
 世の中が激しく変化し、知識も更新されていく時代においては、それに合わせて自分の理解も更新し続けていかなければいけません。それができなければ世の中の流れに取り残されてしまいますから、これからの時代は「学び続けること」がより一層厳しく求められるでしょう。
 受験生の皆さんは、まさに今、志望校合格のために勉強をしていると思います。しかし、今の勉強は大学に入るためだけのものではないはずです。入試の合格はゴールではなく、スタート地点にやっと立った、ということではないでしょうか。社会に出た後、自分が学んだことを人や社会に還元できるように、真剣に学ぶ準備を今まさに受験勉強をとおしてしているのだと思います。
 でも、学び続けることは簡単なことではありません。受験勉強は、細かい知識を暗記する作業が多くて大変です。受験勉強を含めて、苦労がともなう勉強をこれからずっと続けていくには、主体的に学ぶという意識がやはり欠かせません。人からやらされている意識では、勉強はただ苦しいものでしかありませんから。

学び続けるために

興味や関心を見つけて、学ぶ意欲につなげていこう

 それでは、主体的に学ぶとはどういうことでしょうか。それは、学ぶことを楽しむ、ということだと思います。興味や関心、また問題意識をもって学ぶ、ということです。「それについて知りたい」「そのためにもっと学びたい」と心から思えるきっかけを見つける努力をしてほしいと思います。
 ただ暗記をしていては苦しいだけですし、知識は身につきません。受験勉強でも、そこに学ぶ楽しさを意識的に見つけてみましょう。覚えた知識の背景を考えたり、それが活用される場面を考えたり。たとえば、日本史などで人物の業績を覚える際には、ただそれを暗記するだけでなく、なぜその人物がその時代に求められて登場したのか、どういう時代背景があったのかを考える。数学や理科であれば、覚えた公式などが、現実のどういった場面で活用できそうかと考えてみる。そうすることで、生きた知識として自分の身になっていきます。


限られた自分の世界の外に意識を向けてみて

 興味や関心をもつきっかけは、教科書の中以外にも、いくらでもあります。新聞などで世の中の動きや社会の問題に目を向ければ、今まで知らなかった世界の一面を知ることになるでしょう。そこから「もっと知りたい」と思うテーマが見つかるかもしれません。
 意識を向ける先は、もっと身近なことでもいいのです。そのほうが、よりリアルに感じられるでしょう。自分の身の回りをあらためて見渡してみると、「なぜそうなのか」と疑問に思えることが、いろいろと見えてきます。
 さらにもっと身近なところで、自分の家族が抱える問題でもいいし、さらには自分の悩みでもいい。どういう社会構造があって、そういう問題が起きるのか。自分の悩みが、他の多くの人も感じているものならば、どういう背景があって自分はその悩みを抱えているのか。そのように問題意識を持って周囲を見てみると、今まで気づかなかったこと、誤解をしていたことに気がつき、「それをもっと知りたい」という気持ちにつながると思います。

価値観を変える体験を

自分とは違う人と接して、新しい気づきを発見しよう

 主体的に学ぶためには、「リフレーミング」が大事だと私たちは考えています。それは、限られた環境の中で形成された見方や考え方の枠組みを外して、それまでとは違った見方をすることです。リフレーミングによって、それまで見えなかった世界が現れ、物事の意味が変わり、考え方や価値観が一変します。そうして得られた新しい気づきこそが、主体的に学ぶきっかけになるのです。
 リフレーミングのために、普段の生活環境から一歩外に出てみましょう。そして、自分とは異なる経験をしている人たちに会って話をすることです。他者とのギャップに直面することによってリフレーミングが起こり、新しい視点を得られて、さらには自分を見つめ直すことにもつながります。その時、内側から沸き上がるものを感じるでしょう。その気持ちの向かう対象が、本当の興味・関心であり、学び続けるために欠かせないものなのです。
 リフレーミングは体験からしか生まれません。限られた生活環境の中にとどまっていては、考え方が凝り固まってしまうばかりです。
 どうか皆さんは、高校生の間に、または大学生になってからでも構いません、一歩外に出て多様な人たちと接する機会をもってほしいと思います。感性が柔軟で敏感な若いうちに、そうやって未知の経験を積み重ねてください。


興味が変わっても、失敗しても、問題なし

 将来の社会を見すえて、これから高校でも思考力や主体性がさらに強く求められるようになります。自分が探求したいテーマを見つけて、それを徹底的に考え抜く。それが勉強であるということが当たり前の世の中になっていくと思います。
 受験勉強ができるのは、学校や家族のサポートがあるからです。そうやって人の助けを受けながら勉強ができるというのは、本当にラッキーで恵まれた期間です。大学や社会では、誰もあなたを手取り足取りお世話してくれる人はいません。そこで自立して主体的に学び続けるために、今の恵まれた期間のうちに主体性を養う準備をしておいてほしいと思います。
 いろいろなことに目を向けて、いろいろなことに興味をもってほしい。その興味が次々と変化してもいいのです。興味なんて学ぶうちに、どんどん変わっていくもの。その過程で失敗をしたって、まったく問題なし。失敗が許される今のうちに、たくさん失敗をしておきましょう。失敗は人生の糧。失敗が許される十代のうちに、遠慮せずにどんどん外に出て行って、自分の成長につなげていってください。
 自分のキャリアは、人から決められるものではなく、主体性をもって考えていくもの。社会の変化も見すえながら、自分の心が求める道を、体験をとおして探し続けてほしいと思います。

主体的に学び続けていく先に、自分の進むべき道が見えるはず


今村さんが代表理事を務める
認定NPO法人カタリバについて

 2001年に設立。当時まだ大学生だった今村さんと三箇山さん(共同創業者)の二人が「たまたま出会った環境や、受けられた教育によって、描き出せる未来のイメージさえも違ってしまうこと」に疑問を抱き、大学生との対話によって“高校生の意欲に灯を灯す”「カタリ場」を構想。2006年に法人化。一貫して「ナナメの人間関係」と「本音の対話」を軸としながら、「内発性溢れる学びの意欲」を育むことを目的とした教育活動に力を入れている。

[主な事業・拠点]
●高校生へのキャリア学習プログラム「カタリ場
●被災地の放課後学校「コラボ・スクール
●中高生の秘密基地「b-lab
●高校生が地域の課題に取り組む「マイプロジェクト
●教育から地域の魅力化に取り組む「おんせんキャンパス
●生活困窮世帯の子どもたちに学びと居場所を提供する「アダチベース


この記事は「螢雪時代(2017年7月号)」より転載いたしました。


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