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小論文の書き方・対策

小論文は、自分の考えをそのまま書けば合格するというものではない。
出題テーマがどのような形式かによっても、対策が異なる。
合格するにはどのような点に気をつけて、どのように書けばいいのか。
具体的にみていこう。

執筆:山田耕司
予備校および短大などで国語全般を指導。俳人。

課題論述型

限られた条件の中から、論述すべき対象を見極める。どんな視点で対象に向かい合うのかを考察する。設問文は短い。だからこそ、その中から論述に必要な条件を探り出すことが、合格のためには重要だ。

[例題]
ホームレス問題が社会問題としてクローズアップされ、ホームレス対策が本格化してから約20 年になります。①ホームレス問題がいまだに解決できていないのはなぜか、また、②解決するためにはどのような方策があるか、あなたの考えを400 字程度で述べてください。
高知県立大学 社会福祉学部 2021 年度学校推薦型選抜(11 月22 日) レポート


攻略のポイント① 〈理由〉の奥を掘り起こそう

 ホームレス対策がいまだに解決できていないのはなぜか。これを「ホームレス対策」にかかわる行政機関の責任として追求することは、積極的な意見に見えるのではないだろうか。「役所仕事には熱意と愛が足りない」などという文は勇ましく受け取られるだろう。
 しかし、〈誰かのせい〉にすることでは、小論文の合格点を獲得するのは難しい。①その問題が発生する元々の原因に触れていない。②複数の立場からの検証ではなく、自分の感情に任せた意見しか書かれていない。この①・②の点において、〈誰かのせい〉にする文の評価は低くなる。
 つまり、①問題が発生する元の原因を考察する。②複数の立場からの考察を行う。このふたつの点によって得点アップが可能になるということでもある。
 〈批判〉の声を大きくするよりも、〈原因〉と〈結果〉のつながりに注目すること。社会活動においては、行政・企業や地域・個人など、行動の主体を置き換えながら考察を深めること。この2点に注意しよう。


合格するための解答作成手順

①準備通りに書けたとしても合格するとは限らない。
 反対意見の立場を汲み取る力=「総合力」を身につけよ!

②その場で設問をしっかり読み取ることこそ合格への道。
 書きはじめる前に構想を準備する。これが大切。練習しよう!


攻略のポイント② 具体例に溺れてはならない

 「たとえば」。この言葉を、自分の意見を述べた直後に書きたくなったら、ちょっとストップ。「たとえば」からはじまる具体例は、書き込みやすく読者にもわかりやすいと考えられがちだ。しかし、テーマへの対応を忘れたままに具体例をたっぷりと書くのは、危険。設問の趣旨をとらえていないという減点の対象になりかねない。設問に「具体例を挙げ」などと指示がない限り、なるべく具体例を避けるのが合格する小論文作成に必要なポイントである。因果関係の流れが明確に見えるしっかりとした骨組みの論文作成を目指そう。


NGポイント:論述の焦点がずれている

●原因を探らないままの論述はNG
 問題の根底には、何があるのか。そのことを踏まえないまま「誰が犯人か?」というような視点で批判を重ねる文章は、いくら言葉を鋭くしても、思考力が表面的であるというマイナス評価に位置づけられてしまう。「ホームレスの人がもっとも求めているもの」とあるが、それが何であるかが示されていない。原因が特定できなければ、対策も立案できないのだ。

●「約20年」という条件を解釈せよ
 設問文で触れられている「約20年」とは、一体どう意味を持つのだろう。ホームレス問題が解決しにくいという点から、経済的な成長がストップし景気が悪化しているために雇用環境が不安定になっているという流れが見て取れるのではないだろうか。そのことに何らかの言及がほしかった。課題論述型の場合には、文言のすべてがヒントなのである。


GOODポイント:【最優先事項】設問の条件に明確に対応すること

●設問は何を求めているのか?
 与えられた課題に対して明快に対応する姿勢。それこそが、設問が求めるものである。シンプルに対応することで、思考力や表現力における高評価が与えられる。「方策」を示すとは、〈誰が〉〈何を〉行うことかを記すことである。「こうなったらいいなあ」という結論を表示することではない。複数の「誰が」を提示することで、重層的な論述となる。

●自分の意見のマイナス面をチェック
 最終部分を書く前に、もう一度文章を読み直そう。問題解決の上でホームレスがそれぞれの意思を持つ人間であることを忘れがちであることを、この論のマイナス面としてとらえた。そのポイントを上手く取り入れることで最終部分を仕上げている。自分の意見を外側から見直すような視点が含まれることで、文に〈総合性〉という評価が与えられる。



文章読解型

文章を読みながら、筆者がもっとも伝えたかった事項を汲み取る。趣旨を、しっかりとまとめる。設問の指示に注意しながら、筆者の意見に対する自分の意見を述べる。書きはじめる前に、まずは、適切な準備を。


攻略のポイント① 〈まとめ〉のための3つのポイント

1.具体例を封印せよ
 文章全体を圧縮するのが〈まとめ〉ではない。筆者がもっとも言いたい内容を取り出すのが〈まとめ〉だ。まず、具体的な内容を省く。「他者との関係」を優先させることで、「自分の内心の深いところ」にかかわらなくなっている事態を抽出できただろうか?
2.筆者は何を〈評価〉しているのか
 何を高く評価し、何を批判しているのか。課題文のなかからその部分を発見しよう。筆者の意見とは、この〈評価〉にあらわれる。「大事なことを見落とす」というマイナス評価は、何に対して向けられているのか読み取れただろうか?
3.〈きっかけ〉を見出そう
 「それまで」の事態が、「きっかけ」を境にして、「結果」へと変化する。この変化を見届けることができる読解力は入試において重要である。「自分の内心」を言葉として表現する行為が少なくなるのは、何を「きっかけ」としているのだろうか?



攻略のポイント② 文章を生かすのは〈構成〉

○意見表明をはっきりと
 自分の態度を明確に、そしてシンプルに示そう。文章中から読み取った内容を示す最初にして最大のステージ。「これからの大人」に求められる「国語力」を「母語によって自分の考えを整理して他者に伝える能力」と定義した。設問文の条件を満たすのが絶対条件。
○対立意見を視野に
 対立意見を示す。そして、そのよい点を評価する。ここで対立意見を否定的に扱うと、〈物事を善悪のふたつに分ける〉姿勢を表現してしまうことになる。小論文の評価である〈総合性〉とは、〈他者の立場を理解する能力〉であると考えてみよう。すると、よい点を見出したほうが効果的だと理解できるだろう。
○本論は対立意見を乗り越えて
 情報化社会において他者の意見に同調する傾向が増加している。そんな直前の表現をもう一歩前進させてみよう。「情報化社会」だからこそ、自分の内心を言葉にすることが重要になるのだ、と。「母語」というこだわりは、内面を磨き深める作用を想定。冒頭で挙げた意見をさらに詳しく説明することで本論とした。


攻略のポイント③ 文体についての注意

 文章を書き進める上で注意したいのが「表現上のポイント」。いわゆる「文体」の整え方である。
○「だ・である」調に統一しよう
 文末の表現。「私はその意見に賛成します」という「です・ます」調よりは、「私はその意見に賛成だ」という「だ・である」調で統一しよう。
○「と思う」はなるべく使わない
 「筆者はそのことに関心を持っているのだと思う。」という文から「と思う」を除去してみる。そのことで文に切れ味が生まれる。確信が持てない内容の場合には「筆者はそのことに関心を持っているのだろう。」と推量形でしめくくればよい。
○ここぞというときの「疑問形」
 もっとも強調したい箇所にきたら、疑問形を使ってみよう。「それこそが筆者の考えに近いのではないだろうか。」という具合だ。使いすぎには注意したい。

◆合格へのアドバイス ~【練習】文章読解へのヒント

【ヒント1】 対象への〈評価〉に注目
 対象を「プラス・マイナス」のどちらで扱っているか、それを「評価」と考えてみよう。本文中で〈「頼りになる武器」からほど遠くなっている〉とあるのは、「プラス・マイナス」どちらの表現だろうか? また、対象となる「ことば」とはどんな内容を指すのだろうか?
【ヒント2】 ふたつの価値を〈比較〉せよ
 同じ「ことば」という表現に、ふたつの内容があることを読み取ろう。「他者との関係」を優先する上で反射的に使う言葉、そして、「自分の内心」を表現する深い言葉。ふたつを比較しながら、自分の意見を整理してみよう。
【ヒント3】 物事の〈変化〉をとらえよ
 「これからの大人」という条件に注目。「これまで」と「これから」を分けるものは何だろうか。現代社会を象徴する変化の分岐点を「情報化社会の発展」に見出したのが今回の解答だ。
 そのほかに「自然環境の危機」などの分岐点も想定できる。分岐点を押さえることで、〈変化〉という視点を利用することができる。


NGポイント:最重要ポイントを見失うな

●問の中にヒントがある
 これからの大人に求められる「国語力」について答えなければならない。つまり、課題の文章から国語力として重要な内容を読み取るところから対策がスタートするのだ。何をターゲットとする必要があるのか、そのヒントは設問にある。〈書く〉前に、まず〈読む〉。問を読み、もう一度、文章を読む。テーマを離れての論述に合格は訪れない。注意しよう。

●筆者の意見は〈ど真ん中〉を使え
 筆者の考え方を引用する。その際には、どの意見でもよいわけではない。テーマである国語力に関してコメントしている最重要の意見をピックアップしよう。最重要=〈ど真ん中〉コメントを選ぶことで、自分の意見も整理される。読解力も高く評価される。自分の意見に合わせて筆者のコメントを部分的に利用するのは減点対象になるので避けよう。


GOODポイント:設問の条件を文章に求める

●まずは設問を読み取ること
 設問において、「国語力」には(母語の力)が添えられている。わざわざ「母語」というからには、国語力とは、外国語と接する際にパワーを発揮するような力として想定されているのだろう。「これからの大人」とは、情報化社会が進行しつつある環境において個人として言動に責任を持つ者と定義した。設問への解釈が合格解答への扉を開く。

●対立意見を利用する
 文章で挙げられているのは、他者との関係性を尊重するあまりに自分の内心を表現しない日本人の姿である。論述においては自分の内心を表現し深める方向の国語力養成を論旨としたが、「他者との関係性を尊重する」姿勢の〈よい点〉を評価することで、自分の意見との相違点を明らかにした。対立意見を認める総合的な視点は合格に不可欠な要素である。



資料分析型

分布の偏りを見分け、変化の経緯を見届ける。その奥に潜んでいる「論じる上でもっとも重要な対象」を見抜く。「すべてを説明する」のではなく、最優先事項を論述する対応が求められる。


攻略のポイント① ×〈読み上げ〉 ○〈読み取り〉

 資料に示されている数字や動きを、言葉に直して書き表す〈読み上げ〉。資料に示されている数字や動きから、もっとも重要な流れをくみ取る〈読み取り〉。
 限られた文字数のなかで設問の課題に対応するためには、〈読み取り〉のほうが有効である。〈読み上げ〉は、手元のメモをつくる上で活用するように心がけたい。
 〈棒グラフ〉にて表現される資料では、分布の偏りを「読み取る」。その際に用いるのが〈くくりあげ〉という技法だ。テーマに即しながら、最大公約数的な内容を各項に見出そう。〈折れ線グラフ〉にて表現される資料では、変化の経緯を〈読み取る〉。折れ線が著しい変化を示しているポイントに注目。そのポイントの意味を考察することが〈読み取る〉コツとなる。
 今回の問題は、基本的には〈棒グラフ〉系のデータ。「そう思う」「どちらかといえばそう思う」を〈くくりあげ〉て読み取る。「満足」の度合いもまた、〈くくりあげ〉ることができるだろう。細かい数値の説明だけで文字数を消費することを回避しよう。



攻略のポイント② 論述の〈対象〉を見きわめよ

 設問の条件をしっかりと理解することが、論述の準備としてもっとも重要なポイント。「若者」における「自己イメージ」こそが論述の〈対象〉であることを読み取ろう。「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」という表現は、「積極的」「柔軟」などという言葉に置き換えられそうだ。「自分は役に立たないと強く感じる」という表現においては、「そう思わない」系の立場を「自己の有用性を信じている」とまとめてみた。「自分は役に立たないと強く感じると思っていない若者」という表現でも同じような内容になるが、小論文論述においては、できるだけ「ではない」という条件を避けて「である」という方向でくくりあげるのが望ましい。さて、これで、〈対象〉の主体である「若者」を「積極的で柔軟な姿勢を持ち、自己の有用性を信じている若者」と整理することができた。設問を〈読み取る〉。それはグラフだけではなく、添えられている具体的な内容を〈まとめ〉の言葉に置き換えることでこそ、合格する論述のコツとなる。



攻略のポイント③ 社会問題の「対応策」について

 資料分析を求める設問は、〈社会〉を客観的に判断する姿勢そのものを評価のポイントにしている可能性が高い。悪者と決めつけた対象を攻撃する姿勢や、「高齢者の方々の笑顔を取り戻す」などの主観的な基準は、客観的な判断を志している姿勢とは言いがたい。〈社会〉の構成をふまえて、解答を作成しよう。
 〈社会〉とは、多くの〈立場〉が構成するものである。そして、〈立場〉とは、次の3つのフレームを使ってとらえるのが有効だ。①国・自治体、②地域コミュニティー(学校や企業を想定する場合もある)、③個人。
 社会問題の「対応策」を考える場合にも、この3つを意識しよう。①の対応策は、〈公助〉。実態を調査し制度を整備・実施することを含む。②地域コミュニティーが行う対応策は、「共助」。人的交流、文化活動も含む。③での対応は「自助」。自分のことはまず自分で、ということ。志望学科・専攻の内容において〈公助・共助・自助〉がどのようになるか、検索して調べたり議論をしたりしながら理解を深めておきたいところだ。

◆合格へのアドバイス ~くくりあげ~

 人、鯨、ネコ、ネズミ。これらを「哺乳類」という特徴ですくいあげるのを〈くくりあげ〉と名づけてみる。人、鯨、ネコ、カエル。これを「哺乳類」とくくりあげるのは間違いだ。「脊椎動物」あたりがふさわしい。「地球上の生物」というくくりあげは、ちょっと大げさ過ぎるだろう。資料の具体的な項目を適切に〈くくりあげ〉するのが、腕の見せどころ。
 複数のデータを対象に論述のポイントをつくるためには、一つひとつを読み上げるのではなく、その最大の特徴を〈くくりあげる〉のが有効となる。
 小論文とは、細かい数値を報告する場ではない。論述すべき対象を限定した上で、それに対してどのような評価を施すか、その過程を示すことが、合格解答作成のための条件である。
 資料分析とは、データの奥に潜む「意味」や「価値」を見届ける行為に他ならない。そして、それは、データの向こうにある人や世界への想像力によって促され培われる。世界へのまなざしを鍛えよう。


NGポイント:その資料、〈分析〉したのか?

●論点は社会的な視点で見定めよう
 体験談。そこから導き出される教訓。その流れそのものに価値がないわけではない。しかし、資料分析型の小論文の場合には、体験を書き込めという指示がない限り、論述の根幹に据えるべきではない。社会を対象に得られたデータを分析、その結果をふまえて論述するのである。社会的な大きな視点から論点を見定めてこそ、合格する論述となるのだ。

●〈意味〉を見つけ〈価値〉を与えよ
 資料の上の項目をそのまま記述。資料上の言葉を尊重した結果だろうが、〈分析〉にはならない。具体的な事柄にどのような〈意味〉があるのか、それを読み取ってこそ〈分析〉となる。得られた〈意味〉のどの点に注目するのか、それにプラスあるいはマイナスの評価を施すのかを示すことで、〈意味〉に〈価値〉が与えられる。意見とは〈価値〉を示すことだ。


GOODポイント:的確に〈読み取り〉明快に論述する

●〈読み取り〉の質こそ合格への道
 数値や割合を細かく〈読み上げ〉るのではなく、このグラフが示す内容を簡潔に作文している。つまり、質の高い〈読み取り〉ができているのだ。グラフにおける文言を、〈くくりあげ〉つつ、的確にまとめの言葉に置き換えているのも評価が高い。資料を分析して、〈読み取り〉の質を高めるためには、ふだんからの練習が有効だ。練習を重ねよう。

●社会の構成をふまえた分析要
 自分に満足できないでいる若者に注目しながら、その存在への評価を示している。国家や企業などの視点と、個人の内面への視点とを区分することで、自己満足できない若者の可能性に言及しているのだ。社会を構成するフレームを利用することで、「視点」を設定しやすくなる。結論において複合的な視点を尊重することで、総合的な視野を持つ論述となった。



このページの内容は螢雪時代7月臨時増刊「大学入試 推薦&総合型 合格対策ガイド(2022年度入試対策用)」を基に作成しています。
※資料分析型については2021年度入試対策用を基に作成しております。

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