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名古屋大学 認知症の一種である前頭側頭葉変性症(FTLD)の発症メカニズムを解明

名古屋大学

  • [2017/4/12]

名古屋大学大学院医学系研究科の祖父江元特任教授と石垣診祐助教らの研究グループは、前頭側頭葉変性症(FTLD)の発症メカニズムの一つとして、RNAタンパク質FUSの機能不全がタウタンパク質のアイソフォームの変化を通じて症状を引き起こしていることを明らかにした。

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FTLDは、認知症の一種である前頭側頭型認知症(FTD)とほぼ同義であり、若年性認知症の約2割を占めているという。

「FTLDは人格の変化や情動の障害が前景に生じることが特徴で、反社会的行為を起こしてしまうことがあります。それまで社会生活を問題なく送ってきた、たとえばある程度高い地位にあった人が万引きや痴漢で逮捕された、あるいはゴミ屋敷問題を引き起こしたといった報道がありますが、その中にはFTLDの初期症状の方が含まれている可能性も考えられます」と、研究にあたった石垣助教は指摘する。

また、FTLDはアルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患に分類される。

「アルツハイマー病はアミロイドβとタウタンパク質の異常蓄積が大きな特徴ですが、FTLDにおいてもタウタンパク質の異常蓄積が認められる症例があり、タウオパチー(異常タウタンパク質が神経細胞内に蓄積する疾患の総称)の一種だと考えられます。一方でFTLDと運動ニューロンが侵される筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、TDP-43やFUSをはじめとするRNA結合タンパク質が遺伝的、病理学的にどちらにも強く関与していることから類縁疾患と考えられています。これらからわかるように、孤発性の神経変性疾患の分類には明確な境界がなく、グラデーションを形成していると言えます」と、石垣助教は話す。

今回の研究では、FUSが神経細胞の核内で別のRNA結合タンパク質であるSFPQと結合して、複合体を形成することで選択的スプライシングを制御し、タウタンパク質の種類(アイソフォーム)のバランスを保っていることが明らかになった。また、FUSやSFPQの機能喪失マウスモデルでは、情動の異常などFTLDに類似する高次機能障害が生じた。

さらに、崩れたタウアイソフォームのバランスを元に戻したところ高次機能障害が回復したことから、タウアイソフォームのバランス異常が、FTLDをはじめとしたタウオパチーの早期病態を引き起こしていることが示唆され、治療法開発の大きな手がかりになったという。

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▲生理的な状態では、FUSとSPFQの複合体が選択的スプライシングによって4R-Tと3R-Tのバランスを維持しているが、疾患の状態ではFUSとSPFQの複合体が形成されなくなり、4R-Tが優位となる。

FTLDをはじめとした神経変性疾患の根本治療薬は未だに開発されておらず、残念なことに95%以上の臨床試験は失敗に終わっている。これは、未発症状態の早期に疾患を診断できるバイオマーカーが存在していないことが大きな原因ではないかという。そこで、疾患の発症メカニズムの解明から、治療法の開発だけでなく、早期診断に有効なバイオマーカーの発見にもつなげていきたいと石垣助教は今後の展望を語る。

「神経科学的に疾患のメカニズムを見ていくと、FUSは神経細胞の生理的な機能を担っており、発達異常や精神疾患などにも関与しているのではないかと推測しています。医学研究のうえでも多面的に興味を持つと、別のことがわかってくるのです。医学部を志望する若い人は、幅広く視野を持ち、近視眼的にならないようにしてほしい」と、メッセージを送ってくれた。

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【石垣診祐 助教 プロフィール】

所属:名古屋大学大学院医学系研究科難治性神経疾患治療学助教
専門:神経内科学
経歴:2002年名古屋大学大学院医学系研究科後期博士課程修了。東京都臨床医学総合研究所分子腫瘍学研究部門特別研究員、マサチューセッツ大学医学部研究員などを経て、2010年から名古屋大学にて神経変性疾患の研究にあたっている。

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