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順天堂大学 悪性リンパ腫の治療抗体を樹立 がん細胞に大きな穴をあけて破壊する

順天堂大学

  • 2017.5.10

順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座の松岡周二助教たちの研究グループは、悪性リンパ腫細胞や成人T細胞白血病(ATL)細胞を、これまで知られている仕組みとは異なった機序(仕組み・機構)で死滅させる抗体を樹立した。

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悪性リンパ腫は、血液腫瘍の中で最も頻度の高い疾患で、日本では年間1万人以上が発症している。
現在治療効果を示す抗体医薬が開発されている。しかし、一部の効果が見られない患者や、一度寛解(症状が落ち着いて安定した状態を示す)しても、標的にする分子を失った耐性株が現れ、再発する患者も多いのが現状という。

そのため、多くの種類の悪性リンパ腫に対して傷害活性(細胞や病原体に抗体が結合し、その細胞や病原体を殺傷すること)を持ち、耐性株の現れにくい分子標的治療薬の開発が望まれている。

今回の研究では、多くの悪性リンパ腫細胞を傷害する抗体を樹立することを目的に実験が行われた。複数の悪性リンパ腫で免疫したマウスの抗体産生細胞を用いて融合細胞を作製し、悪性リンパ腫細胞への細胞傷害活性を指標に選別を行った。

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その結果、複数の分子に結合し、多くの悪性リンパ腫に障害活性を持つ抗体が得られた。

この抗体は、短時間で直接巨大な穴を血液がん細胞にあけるという特徴的な作用を持ち、補体非依存性に傷害活性を示した(普通の抗体は補体との共同作業で細胞を殺す)。

また、この抗体を注射することによって、悪性リンパ腫細胞を移植したマウスの生存が延長されたという。さらに、正常な細胞に対しては傷害活性がないことも確認され、この抗体は血液のがん細胞だけを攻撃することも判明した。

これまでの分子標的薬治療では、一度、症状が安定した状態を見せても、標的分子を失った抗がん剤耐性がん細胞が現れ、増殖することによって再発することがある。しかし、この新しい抗体は複数の分子を標的とするため、がん細胞は一つの遺伝子異変だけではこの抗体攻撃から逃げることができない。

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したがって、この抗体治療薬は従来の分子標的薬に比べて耐性がん細胞が出現するのを抑えることができる。また、この抗体は免疫細胞なども必要とせず、腫瘍細胞(がん細胞)に直接大きな穴をあけて破壊する新たな作用を持っている。

今回の研究によって、再発例も含めた悪性リンパ腫や白血病の患者に対して、効果的な治療薬の開発が期待されている。

この研究は、文部科学省学術研究助成基金「新規抗悪性リンパ腫治療抗体の樹立方法の確立と治療応用への研究」の支援を受けて、理化学研究所、創薬基盤ユニットとの共同で実施された。


【松岡周二 プロフィール】

所属: 順天堂大学医学部 助教
専門・実績: 病理・腫瘍学、免疫学
経歴: 昭和60年山口大学医学部卒業
    平成5年東京大学大学院医学系博士課程修了
    La Jolla Institute for Allergy and Immunology
    (ラ・ホヤ アレルギー免疫学研究所勤務)を経て
    平成8年より順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座勤務


この記事は「医学部サイト」より転載いたしました。


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