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和歌山県立医科大学 筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症の一端を解明

ニュース

2016.11.18

和歌山県立医科大学神経内科の伊東秀文教授らの研究グループは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子である「オプチニューリン」の研究を行い、ALS発症のメカニズムの一端を明らかにした。この研究は、大阪市立大学大学院医学研究科の徳永文稔教授、東京大学大学院理学系研究科の濡木理教授らと共同で行ったもの。

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ALSは、筋肉を動かし、運動を司る神経細胞(ニューロン)が徐々に侵され、手足を動かすことも困難になるほか、呼吸不全から最後は死に至る難病である。

ALSは、パーキンソン病やアルツハイマー病と同じ神経変性疾患の一つ。神経変性疾患のおよそ90%は原因不明の孤発性で、残り約10%が特定の遺伝子に変異が起きることが原因となる家族性とされる。

ALSでは、これまで約20の原因遺伝子が発見されている。オプチニューリンも、2010年に発表された伊東教授らの研究により、原因遺伝子の一つであることが突き止められている。

研究グループは以前から、ユビキチンというタンパク質が特異的に結びついた「直鎖状ユビキチン鎖」に注目。この特異的構造体がこれまで考えられていたタンパク質分解ではなく、炎症や免疫応答に重要な役割を持つ「NF-кB」を介したシグナル伝達経路を活性化することを明らかにしていた。

今回の研究では、オプチニューリンが直鎖状ユビキチン鎖と結合し、NF-кBの活性化を抑制していることや、変異したオプチニューリンでは、直鎖状ユビキチン鎖と結合できずにNF-кBが活性化し、細胞死(アポトーシス)が亢進することが明らかになった。

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「細胞実験だけではなく、オプチニューリンの変異でALSを発症し、亡くなった患者さんの神経細胞を調べたのです。すると、細胞の中に直鎖状ユビチキンや活性型NF-κBが、TDP-43凝集体とともに局在しおり、人体でも同じプロセスが起きていることが証明されたのです」と、伊東教授。

このメカニズムの解明から孤発性ALSの発症原因を探ることや、直鎖状ユビキチンを合成する酵素群であるLUBACを阻害する薬剤の開発など、今後の研究の進展にも期待がかかる。

「アイスバケツチャレンジで知られるようになったALSですが、意識や自律神経、感覚神経も正常なのに、運動神経だけが侵されていく非常に過酷な病気です。臨床医として患者さんの診療に当たっていると、せめて進行を止めてあげたいという気持ちになり、それが研究の出発点にありました」と、伊東教授は研究への思いを語る。

また、「皆さんは、病気で苦しんでいる患者さんの力になりたいと考えている人が大半だと思います。医学の勉強は難しく、仕事もハードですが、医師になれたらそうした初心を忘れることなく患者さんの視点に立ち続けてほしい」と、医学部志望者へのメッセージを贈ってくれた。

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【伊東秀文 教授 プロフィール】

所属:和歌山県立医科大学 神経内科学講座 教授
専門:臨床神経学、神経病理学、分子神経病態学、神経変性疾患、脳機能手術
経歴:1984年京都大学医学部卒業。米国モンテフィオーレ医学研究所留学、関西医科大学助教授、京都大学大学院医学研究科講師などを経て、2012年から現職。


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