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大阪大学 脱細胞化処理による高耐久性の人工心臓弁移植手術に成功

ニュース

2016.8.5

大阪大学大学院医学系研究科外科学教室(心臓血管外科学)の澤芳樹教授らのチームは、2016年5月13日大阪大学医学部附属病院にて、新鮮脱細胞化ヒト心臓弁を使用した心臓弁移植手術に成功した。

大阪大学における脱細胞化ヒト心臓弁の移植手術は、今回で3例目。今回使用した心臓弁は、大阪大学にて行われた心臓移植のレシピエント(※1)から提供されたものであり、いわゆるドミノ移植で行われたもの。日本で提供された心臓弁を用いた初めての症例となった。

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「今回の患者さんのように、先天性の心臓病であるファロー四徴症では、幼少期に手術を行いますが、成長すると心臓弁が機能不全を起こしやすく、再手術が必要になります。今回はその再手術として、ヒトの心臓弁を脱細胞化処理(※2)し、移植したのです」と、チームを率いる澤教授は話す。

人工心臓弁は、大きく分けると機械弁と生体弁がある。機械弁は耐久性に優れるものの、ワーファリンという血液の凝固を防ぐ薬を一生飲み続ける必要がある。一方、ブタ由来の生体弁は移植後10~20年ほどで機能しなくなるなど、耐久性の面で課題があった。

今回用いられた脱細胞化ヒト心臓弁は、移植後の拒絶反応が起きにくく、さらに、患者自身の細胞が脱細胞弁に入り込み、生着して自己組織化することが報告されている。従来の人工弁と比較しても、良好な成績であることから、耐久性に優れ、再手術の必要性が減少することが期待されている。

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「“One Life One Valve”というように、一生に一つの心臓弁で済むのが理想です。脱細胞化ヒト心臓弁は、われわれが模索していた理想の人工弁に一歩近づいたといえるでしょう」と、澤教授は成果を示す。

また、澤教授は心筋シートを使った心不全治療の第一人者としても知られる。筋芽細胞を培養して作製した心筋シートはすでに臨床実験段階を経て、心不全治療用の再生医療製品として承認されている。現在は、より治療効果の高いIPS細胞由来の心筋シートの研究開発に重点を置いているという。

大阪大学医学部長でもある澤教授は、医学部を目指す若者たちに「大阪大学医学部のルーツである適塾を開いた緒方洪庵先生は『医の世に生活するは人のためのみ、己がためにあらず』とおっしゃっています。これは現代にも通じる教えです。医師というのは、基本的にはボランティアであるという気持ちで自分を支えないといけない。そういう覚悟を持って医師を目指してほしい」とメッセージを贈る。

  • レシピエント…移植手術を受ける患者のこと。
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  • 脱細胞化処理…薬剤等を用いて、組織から細胞成分のみを除去する方法。除去後に残った細胞骨格を移植すると、患者の細胞がその骨格の中に入り込み、自己組織化される。大阪大学では、2010年ごろからドイツ・ハノーファー大学と共同研究を行っており、今回の移植手術でもドイツで脱細胞化した人工弁が使用された。

【澤 芳樹教授プロフィール】

所属:大阪大学大学院医学系研究科長、大阪大学医学部長
専門:心臓血管外科、重症心不全に対する再生治療、心臓移植など
経歴:1980年大阪大学医学部卒業。1989年、フンボルト財団奨学生としてドイツのMax-Planck研究所心臓生理学部門、心臓外科部門に留学。大阪大学医学部助手、講師、助教授を経て、2006年同大大学院医学系研究科外科学講座心臓血管・呼吸器外科教授に就任。2015年から現職。


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