page_top

第11回 : ベストを尽くすだけでは勝てない。僕は勝ちにいく。/Kites rise highest against the wind - not with it.

  • 木村達哉のPower of Words 人生に効くコトバ

志望校の試験日がゴールとすれば、センター試験はまだ通過地点に過ぎません。
その結果よりも大切なのは、気をゆるめずに最後まで走り切ること。
どんな姿勢で臨んだ受験生が勝つのか、木村先生が実話を交えてアドバイスします。


Volume 49 : ベストを尽くすだけでは勝てない。僕は勝ちにいく。

松岡修造

日本を代表するプロテニス選手として活躍。引退後はスポーツ解説者などを務め、熱い言動で見る人に元気を与えている。

 松岡修造さんは多くの名言・迷言を残していますが、この言葉には魂が震えたので、生徒たちにもよく伝えています。とくに上昇気流に乗っているときですね。センター試験に成功して「よし2次試験に向かうぞ!」というときに、心の中で反復してほしい言葉です。

 日本人は謙虚ですから、「勝ち負けよりもベストを尽くす」とか「人事を尽くして天命を待つ」というような言葉が好きです。謙虚なのもいいですが、勝負事には勝ちにいく姿勢が大事だと思うんですよ。では、どうすれば勝てるのか。それは、相手を分析し、現在の自分を分析することに尽きます。大学入試で言えば、大学がどのような学生を望んでいるのかを分析し、その学生像に足りない部分があるなら、不足部分や弱点を埋めていくことが重要なのです。

 弱点を克服するための第一歩は、弱点を発見することです。英語のリスニングを例に考えてみましょう。問題集をいくらやっても点数が上がらないとします。その場合には、やはり何らかの原因があるはずです。語彙が少ないのか、速度についていけないのか、音の知識に乏しいのか、原因を発見しないまま数だけをこなしても意味がありません。弱点を発見したら、それを徹底的につぶしていきます。語彙力がないなら全力で覚える。速度についていけないなら、音読のスピードを上げ、速さに耳を慣らす。音の知識に乏しいなら、オーバーラッピングやシャドーイングをくり返す。勝ちにいくというのは、弱点をつぶすことなのです。

 ただし、直前期にはもう一つの視点も大切です。発見した弱点が克服できないほど大きな場合には、弱点をつぶすより長所を伸ばすことに力を入れる作戦も有効です。以前、ある野球の強豪校の監督に聞いたのですが、甲子園大会の直前には弱点の克服はあきらめて、自分の得意な球種やコースなら確実にヒットが打てる練習に切り替えるそうです。絶対に点数を落とさないという部分を増やすこともまた、勝ちにいくための戦略なのです。

攻略できる弱点かを見極め、
結果を出す


Volume 50 : Kites rise highest against the wind - not with it.

ウィンストン・チャーチル

第2次世界大戦時にイギリスの首相を務めた、20世紀を代表する政治家。回顧録により、ノーベル文学賞も受賞している。

 「凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時であって、風に流されている時ではない」。逆風の中を走るのはとてもきついですよね。でも、順風や無風状態で走るよりもずっと力がつきます。あまり成果が上がっていない人、あるいはセンター試験で思うような点数が取れなかった人に、この言葉を捧げたいと思います。

 僕の野球部の教え子を2人紹介します。A君は東京大学理科Ⅰ類を志望していました。東大模試はA判定、センター試験では9割以上を取って、合格まで駆け抜けるだけだと思われました。その頃、彼は野球部をよく手伝いに来てくれていました。「勉強があるやろうからいいよ」と言っても「夜にやるから大丈夫です」と答えていました。とてもいいヤツでした。しかし結果は、まさかの不合格だったのです。その後、後期日程でなんとか東大に合格した彼は、僕にこう言いました。「監督、A判定って、全力でやったら絶対に合格するレベルなんだと後輩に伝え続けてください。油断していたらあいつみたいに不合格になるぞって」。

 一方、B君は大阪大学医学部を目指していましたが、センター試験では8割しか取れませんでした。各予備校のリサーチでもE判定のオンパレード。どうするのかと聞くと、「監督、絶対に合格します。3月に合格通知を見せに来ますので待っていてください」と言って、2月初旬の卒業式以来、まったく学校には顔を出しませんでした。E判定だったこともあり無理だろうと思っていたのですが、結果は合格でした。約束通りに合格通知を手にして現れた彼は、喜色満面の笑みでこう言いました。「友だちといると負け組ばかりでつるむことになるので、ずっと一人で1日20時間ぐらい勉強していました。2次試験で9割以上取って逆転してやる、と思いながら弱点をつぶし続けていました」。

 結局のところ、残された時間を精一杯使って全力を尽くした人が勝つのです。最後の最後まで気を抜かずに、そしてあきらめずに、全力で前だけを見て駆け抜けてください。

油断せず、あきらめず、
前だけを見て駆け抜けろ!



編集 笹原風花
撮影 荒川潤
スタイリング 眞藤伸子
ヘアメイク 泉雅人


この記事は「螢雪時代2017年2月号」より転載いたしました。

著者プロフィール

木村 達哉先生

灘中学校・高等学校英語科教諭
教壇に立つ傍ら、英単語帳『ユメタン』(アルク)や参考書などを多数執筆。また、「英語教師塾」を立ち上げ、全国的な活動を展開している。近著に『キムタツ式 英語長文速読特訓ゼミ』シリーズ(旺文社)がある。

木村達哉のPower of Words 人生に効くコトバ 記事一覧

入試・勉強法 記事一覧

大学を比べる・決める

My クリップリスト

0大学 0学部 クリップ中