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第10回 :拡大版! 「グッとくる英語表現」「合格を勝ち取るためのQ&A」

  • 木村達哉のPower of Words 人生に効くコトバ

いよいよセンター試験が間近に迫ってきました。
ときに迷い、ときに不安になりながらも、果敢に挑む皆さんにエールを送るべく、今月は大好評の「グッとくる英語表現」、さらに「合格を勝ち取るためのQ&A」と、盛りだくさんの拡大版でお届けします。


Volume 47 : Determine that the thing can and shall be done, and then we shall find the way.

エイブラハム・リンカーン

奴隷解放を成し遂げたアメリカ第16代大統領。「人民の、人民による、人民のための政治」のゲティスバーグ演説でも知られる。

 受験本番が近づいてくると、合格するかなとか、この方法でいいのかなとか、余計なことを考えてしまい、イライラしたり焦ったりして学校に来なくなる生徒も出てきます。客観的に見ればそういう生徒の合格率が高いわけがないのですが、当の本人は自信がなくて気が急いているものだからわからないのでしょうね。

 そんなときに思い出してほしいのが、リンカーンの言葉です。訳すと、「それはできるし、やるのだと決めろ。方法は二の次だ」とでもなるでしょうか。決めるって、とても重要なことです。自分は絶対にビジネスに成功する、と決める。この試合に勝って決勝に進む、と決める。試験に合格してあの大学に通う、と決める。何の根拠もなくても、とりあえず好結果を出すことに決めるところからスタートするのです。僕の同僚は、東京大学の願書を取り寄せる際、「私は貴学に入学しますので、ついては入試要項(願書)をお送りください」とメモに書いて送ったそうです。普通は「受験しますのでお送りください」と書くんじゃないかと言ったら、「入学することしか考えていなかった」という返事が返ってきました。本人は自分が東大で勉強しているイメージしかなかったそうです。まずは、東大で勉強することを決めたのですね。

 我われは自分の力と目標とを見比べては不安になります。合格するかな、勝てるかな、成功するかなと考えて、心配で寝られなくなることもあります。でも実は、合格した人、勝った人、成功した人って、不安はあっても、合格したり勝ったり成功したりする自分をイメージできた人たちなんですよね。これはビジネスでもよく言われることですが、失敗するイメージを持っていると失敗する確率が高くなるのです。

 勉強していると不安にはなるでしょうが、不安になったからといって成績が上がるわけではありません。「絶対に合格する。そんなことは決まっている」と思い込みつつ、最後まで人事を尽くすという謙虚な気持ちで取り組んでほしいなと思います。

絶対勝つと決める。
すべての戦いは、そこから始まる。

Volume 48 : バットから離れるべきです。

イチロー

大リーグ、マイアミ・マーリンズに所属。2016年には大リーグ通算3030安打、日米通算4308安打を成し遂げた。

 イチロー選手はこう言っています。「打てない時期にこそ、勇気を持ってなるべくバットから離れるべきです。勇気を持ってバットから離れないと、もっと怖くなるときがあります。そういう時期にどうやって気分転換をするかは、すごく大事なことです」。イチロー選手って常に努力してバットを振っているイメージが強いので、意外に思うかもしれないですね。

 僕は本を書くときは何時間も集中しますが、疲れてくると突然言葉が浮かばなくなって書けなくなることがあります。そんなときは、机を離れて、散歩やジョギング、あるいはゴルフの打ちっぱなしに出かけます。

 きっと皆さんも同じだと思うのです。センター試験まであと1か月になり、空き時間があると必死になって問題を解いたり単語を覚えたりしていると思うのですが、突然なぜかやる気が出なくなったり、単語が思うように覚えられなくなったり、場合によってはイライラしてしまったりすることがあるはずです。なかなか机の前に座る気になれず、気持ちばかりが焦るということもあるでしょう。

 でもね、そんなときこそイチロー選手が言うとおり、離れるべきなのです。離れるのは勇気がいるかもしれません。でも、一度離れてみて、やる気が出るのを待ったほうがいいときもあるのです。単語が頭に入ってこないなら、単語からは離れて徹底的に数学をやるなど、別のことをしましょう。不調の波は誰にでも訪れますが、一番怖いのが、焦ってしまって不調を長引かせることです。そう、スランプの波を短くすることが、成功への秘訣なのです。

 今日はうまくいかないと思ったら、「ネガティブの波を最短にするぞ」と決め、勉強から離れて気持ちを充実させることに時間を費やしましょう。そのためのメソッドは、あなたにしかわかりません。イチロー選手が言っているように、気分転換の方法は人によって違います。自分を立て直す方法を見つけましょう。それは、今後の人生でも大きな強みになるはずです。

勇気を出して離れることで、
自分を立て直す

Volume 49 : 勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。

松浦静山

江戸時代後期の平戸藩藩主(本名は松浦清。静山は号)。大名ながら剣術の達人で、この言葉は剣術書『剣談』の中に記されている。

 松浦静山のこの言葉は、野球の野村克也さんが引用したことでよく知られるようになりました。長いこと進学校の教員をしていると、「よく合格できたな」と思う生徒がまれにいます。静山の言葉で言う「不思議の勝ち」です。ちょっと厳しいんじゃないかと思われた生徒が、秋以降に毎日15時間ぐらい勉強して逆転する、という例も何度か見てきました。でもやはり、そういう生徒は少数派です。

 入試は、全体として見たときに穴の少ない生徒が合格するようになっています。だから、教えていて穴が多い生徒、たまにいい点数を取ることはあっても全体として安定感のない生徒に対して、合格は厳しいだろうなと思うのです。受験勉強というのは穴を埋める作業です。片っ端から過去問を解いている生徒がいますが、そんなことをする前に覚えるべきことを早く覚えて穴を少なくすればいいのに、と思うことがあります。穴があるのに埋めようとしないのですから、合格は遠ざかってしまいます。

 教科の穴は自分である程度わかる場合もありますが、担当の先生に相談すると、自分では気づいていなかった穴を教えてくれるはずです。僕も尋ねられるとアドバイスをします。気付いているなら早く言ってくれればいいのにと思うかもしれませんが、求められてもいないのにアドバイスをすることで、生徒の勉強のペースを狂わせかねません。だから生徒から聞きにこられると、遠慮なくアドバイスができるんです。

 受験勉強とは「知らなかったことを覚える」と「理解できていなかったことを理解する」の2本立てで進めるものです。知らなかったことを覚えず、理解できてもいないのに問題だけを解き続けていても意味がありません。そういう生徒が合格できないのは当然です。まさに、「負けに不思議の負けなし」なのです。

 穴を減らせば負ける可能性は小さくなります。自分の穴を見つけ、どんどん埋めていきましょう。入試までに「あいつは勝てる」と言ってもらえるように。

穴を減らせば、
勝てる可能性は確実に高くなる



【受験に役立つ!】グッとくる英語表現


語彙が豊かになれば、世界も広がります。
それはまさに、Power of Words.
思わず使ってみたくなる英語表現、受験にも役立つ英語表現をご紹介します。

I’m getting psyched up.

 これは僕がもっとも好きな英語のフレーズで、しょっちゅう一人で声に出して言っている。get psyched upは「やる気を出す」というようなニュアンスで、I’m getting psyched up.(発音は「アーイムゲリンサイクターップ」)は「気合いが入ってきた!」とか「よっしゃ、行くぜ!」という意味になる。

 能力というのは誰にでも等しくあるのではないかと僕は思う。それほど大きな能力の差などないのに、うまくいく人とそうでない人がいるのは、やはり気合いの差、根性の差、気持ちの持ち方の差が大きいからやろう。やる気が少し落ちてきたなと思ったときこそ、このフレーズを口に出して言ってみてほしい。何度も何度も口にしているうちに、気合いが満ちあふれてくるはずや。


until the last minute

 もちろんこれは「最後の最後まで」という意味で、Never give up until the last minute.(ギリギリまで絶対にあきらめるな)というように使う。until the end(最後まで)もほとんど同じ意味やけど、until the last minuteとするほうが切迫感があって僕は好きなんや。

 untilとbyは間違えやすい。untilは「~まで」、byは「~までに」という覚え方をしている人も多いけど、これでは忘れやすい。そんなときには、フレーズを含めた英文ごと覚えておけばいいんや。加えて、I will never give up until the last minute.(最後まで自分はあきらめないぞ)というような英文を何度も口にする習慣をつければ、英語を覚えるだけではなく、気持ちがどんどんポジティブになっていく。まさに、直前期にはうってつけの英語表現や。


rain or shine

 もともとは「降っても晴れても」という意味の表現。例えば、Game on, rain or shine.と書かれた貼り紙が掲示板にあったら、「雨天決行なんだな」と思えばいい。

 この「降っても晴れても」の意味が転じて、「何があっても」という意味の副詞句としても使われる。 I’ll attend it, rain or shine.と言えば、「何があっても参加します」という意味になる。みんなの立場で言えば、I’m going to pass the entrance exam, rain or shine.(どんなことがあっても私は入試に合格するつもりだ)となるんやろうな。英語にはこのように天候から意味が転じた言葉が多く興味深い。英作文などでも使えるので、覚えておこう。


roller coaster

 これは遊園地にある「ジェットコースター」という意味やけど、それ以外に「激変」という名詞として使われたり、「急激な動きの」という形容詞として使われたりもする。例えば、emotional roller coasterは「感情の起伏が激しいこと」という意味、roller coaster lifeは「波瀾万丈な人生」という意味、そしてroller coaster of temperaturesは「気温の変化が激しいこと」を表すんや。

 僕がこの表現を使うようになったのは、映画俳優のレオナルド・ディカプリオがインタビューで使っていたのがきっかけ。登場人物の「波瀾万丈の恋愛人生」を表現するために、He’s had a roller coaster love life.(この登場人物は波瀾万丈の恋愛人生を送ってきたんだよね)と言っていた。入試でも使える表現なので、ぜひ覚えておこう。


take the big calls

 take a callは「電話に出る」という意味やな。そこから転じて「アンコールに応える」という意味もある。また、2016年7月に就任したテリーザ・メイ英国首相は、「決断をする」という意味でこの表現を使った。彼女の就任演説には、When we take the big calls, we’ll think not of the powerful, but you.(重大な決定をするときには、力を持つ人たちのことではなく、あなた方のことを考えます)とある。

 選挙と言えば、アメリカ大統領選挙ばかりに注目が集まったけど、イギリスでもキャメロン前首相から彼女に変わった。こういったcelebrity(著名人)の演説は覚えておきたいフレーズの宝庫や。覚えるだけでなく、自分でも使えるようにしておこう。


I’m doing OK.

 最後は口語表現を紹介しよう。これは「うまくいっているよ」という意味や。Things are going smoothly.なども同じ意味やけど、I’m doing OK.って言いやすいし、なんだか力が湧いてくる。

 今回紹介したI’m getting psyched up. などもそうやけど、日本語で「大丈夫、大丈夫」とつぶくよりも、英語でつぶいたほうが力が湧いてやる気がみなぎってくるように思えるんやな。とくに本番が近づいてきて気分を盛り上げたいときなどに使ってもらいたいな。

 ちなみに、僕がよく使うフレーズに、Couldn’t be better!(これ以上良くなりようがない!=最高!)というのもある。ポジティブな表現をたくさん覚え、日常的に使って気持ちをインスパイアさせよう。


【勝負のとき!】合格を勝ち取るためのQ&A


Question:試験直前期、ずばり、今やるべきことは何?

 勉強に関して言えば、とにかく穴を埋めていくことや。自分がまだ覚えていないことを正しく認識して、どんどん覚えていくことが重要や。覚えるのが苦手と言う人がよくいるけど、それは現実逃避やと思う。覚えられないのは、得意不得意の問題ではなく、反復回数が少ないから。甘えていないで、何度もやって覚えよう。

 精神的な面で言えば、「自分は絶対に成功する」と強気になることや。根拠なんてなくていい。自信が大きければ大きいほど、実際に成功につながるんや。最初はばかばかしく思えるかもしれないけど、毎日「自分はうまくいく」と声に出そう。逆に、直前期に弱気になると、ほぼ間違いなく本番で失敗する。最後はとにかく強気で攻めることや。どーんと胸を張って本番に臨もう。

【Answer】反復学習で穴を埋め、自信を持って強気で攻める!


Question:本番に弱く、本番を迎えるのが不安でたまらない

 不安になったからといって点数が上がるわけではない。考えても仕方がないことを考えるのはやめることや。これは今後の人生においても役に立つ。大学の試験、部活動の試合、就職の面接、職場でのプレゼンテーション、取引先との交渉と、すべてが本番や。まずは、うまくいかなかったらどうしようと、誰にもわからない未来のことを思い悩む習慣を捨てよう。

 そして、不安感を消すためには、数をこなす以外に方法はない。スポーツの試合やステージでの演奏などを経験したことのある人ならわかると思うけど、「あれだけ練習をしたのだから、うまくいかなかったらもう仕方がないわ」と思えるまで反復することや。勉強も同じ。不安になるのは回数が足りない証拠。後悔しないようやり切ってほしい。

【Answer】不安を吹き飛ばすには、思い悩まず反復あるのみ!


Question:センター試験から2次試験まで、気持ちを切らさないためには?

 センター試験っていうのは、2次試験の持ち点を決めるための試験なのであって、センター試験だけが入試なのではない。2次試験までが入試なんや。まずはそこを改めて認識しておこう。

 センター試験でうまくいかなかった人は焦るから、あまり気持ちを切らすことはない。危険なのは、ボーダーラインを超えた人や。各予備校が行っているリサーチの結果、良い判定が出た人はとくに油断しがちや。そういう人がいるからD判定やE判定でも合格する人が出てくるのやから、勝負事というのはわからんものやな。A判定やB判定が出た人、D判定やE判定の人に席を譲るのは悔しくないか?せっかくセンター試験まではうまくいっていたんやから、絶対に追い抜かれないぞと気合いを入れ直そうや。

【Answer】調子が良い人ほど要注意! 勝負はまだ、ついていない


Question:気持ちの切り替えが苦手。失敗から立ち直るためには?

 最終結果が出るまでは、成功したか失敗したかはわからない。失敗したという感覚は、思い込みに過ぎないんや。受験というのは相対的なものやから、たとえキミが失敗したとしても、キミ以上に失敗した人がいれば、合格圏内に入る可能性はある。かつて、東大の英語で30点ぐらいしか取れなかった生徒が合格したときに、「野球部に入っていてよかったです。審判がゲームセットを宣告するまでは逆転をねらって集中するぞ、と思ってがんばりました」と言ったのを聞いて、受験もスポーツも同じやなと思ったものや。

 落ち込むのはまだ早い。そんなもの、不合格通知を受け取ってからでいい。まだ負けたわけでもないのに勝手に落ち込むのは、それまでずっとがんばってきた自分に対して失礼やで。

【Answer】その失敗は思い込み。落ち込んでる場合じゃない!




編集 笹原風花
撮影 荒川潤
スタイリング 眞藤伸子
ヘアメイク 泉雅人


この記事は「螢雪時代2017年1月号」より転載いたしました。

著者プロフィール

木村 達哉先生

灘中学校・高等学校英語科教諭
教壇に立つ傍ら、英単語帳『ユメタン』(アルク)や参考書などを多数執筆。また、「英語教師塾」を立ち上げ、全国的な活動を展開している。近著に『キムタツ式 英語長文速読特訓ゼミ』シリーズ(旺文社)がある。

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