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第1回テーマ「一票の格差」

  • 昼神洋史のコラムは学ぶ
  • [2013/6/1]

「一票の格差」-裁判所は業を煮やし、国会は白を切る

「一票の格差」については、最高裁判所も1970年代~80年代にかけて、2回違憲判決を出したことがある。“2回”というのはちょっと少ないが、国会の動きはもっと鈍かった。今、その“鈍さ”は頂点に。
世間が喋れたら、きっとこういう。“開いた口が塞がらない”。


“格差”は数々あれど…

 世の中には、いろいろな格差がある。例えば、所得格差。これ、結構、神経質になる。お小遣いにも、モロ響いてきます。でも、自分たちにあんまり影響のなさそうな格差は“まっ、いっか”と、見過ごしてしまう。一票の格差は、その最たるものです。
 でも、こう思っている人、いませんか? “一人一票が原則なんだから、格差なんてないはず”。そうじゃなくて、選挙区ごとの議員定数と有権者数の比率に差があるということです。仮に、AとB という二つの小選挙区(議員を1名選出)があるとして、A の有権者数が5 万人、Bが15 万人だとすれば、一票の価値には3倍の開きがあるということになります。


◎所得格差
世代間格差だってある。皆さんも20 歳になったら、国民年金(基礎年金)に入らなくちゃぁいけない。でも、皆さんが将来受けとる年金額は、 現在の高齢世代よりも少なくなる。他人事じゃあ、ない。


各地の高裁は声を揃えて“ノン”

 今年の3月、衆議院小選挙区の一票の格差について、各地の高等裁判所(とその支部)が次々と違憲判決を出した。たった1か月の間に、全部で14。このほかに「違憲状態」という判決が二つある(“このまま放置しておけば、近い将来、違憲判決を出しますョ”という意思表示)。
 ポイント、その1。合憲がゼロだということ。これ、ホントに珍しい。
その2。14 の違憲判決のうち二つが、選挙を無効としてやり直しを命じたこと。いままで、違憲判決を出したとしても、やり直しを命じたことはない(こういうタイプの判決を「事情判決」といいます)。
 “怒り心頭”の裁判官を代弁すると…。最高裁判所が2011 年3月に「違憲状態」の判決を出していたのに、2012 年12 月の総選挙をそのまま実施するたぁ、いい度胸しとる。司法も軽く見られたもんだ。
 この怒りには、もう一つウラがある。国会も、「違憲状態」のまま総選挙に突入するのはさすがにマズイと考えて一計を案じ、総選挙直前に、一票の価値が著しく重い小選挙区をなくすための法律を成立させた。でも皆さん、小選挙区の区割りの見直しには数か月かかります。そんなことは、国会議員なら誰でも知っていた。これさえやっておけばまさか裁判所も…、と“タカをくくった”。


◎怒り心頭
「怒り新党」幹部なら、こうコメントする?
“その怒り、わかるわ、ふざけんじゃねぇ!!” (マツコ・デラックス幹事長)。“裁判官の頭の 固さも使い方次第なんじゃないですか?” (有吉弘行政調会長)。“それじゃ、採用ということで ”(夏目三久総裁秘書)


国会はきっと“知らんぷり”

 次のステージは最高裁判所。判決内容を予想してみます(夏頃には出そうです)。まず、格差そのものは違憲と判断。見どころは、選挙のやり直しを命じるかどうかです。従来の判決よりも厳しい口調で違憲と判断するでしょうが、やり直しの方はちと…(もし命じたら、拍手喝采)。
 これって、国会や内閣の思うツボです。どうせ最高裁判所は…、とまたまた“タカを…”。そもそも、国会議員が自分たちに都合の悪いことをやるはずがない。その間接証拠を一つ紹介しましょう。
 今年4月、安倍内閣が、一票の最大格差を2倍以内に抑えるための法案を国会に提出した(早期成立を目論んでいます)。2倍以内なら、まっ、いいか、と思うなかれ、中味は1.998 倍( なんとまぁ、セコイ)。
 しかも、です。この法案が成立した時点で、すでに最大格差が2倍を超えている。というか、こともあろうに、法案が提出された時点で、すでに格差2倍を超える選挙区が複数あるらしい。利害関係者に利害の調整をやらせるなんざぁ、どだいムリ
 そこで一句。
 “国会の 常識世間の 非常識”
 (字余り)


◎安倍内閣
経済政策ではアベノミクスなんて威勢のいい アドバルーン上げてまくっていますが、格差是正の 方は、風船、萎しぼんじゃってますョ。安倍さん、 ショボクないですか?

◎どだいムリ
例えるなら、サッカーのワールドカップで、 対戦国の一方から主審を出すようなもの。 そんなことしたら、サポーターがどっとピッチに 雪崩込み、ゲーム不能。(サッカー関係者の皆さん、 悪意はありません)。


この記事は「蛍雪時代2013年6月号」より転載いたしました。

著者プロフィール

昼神 洋史先生

河合塾講。1955年、長野県生まれ。老いた見た目に、若さを宿す(ほんのちょっと)。“公民科目は世の中のことを見えやすくするルーペである”がモットー。著書に『センター試験 現代社会集中講義』(旺文社)などがある。

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