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学部長インタビュー「理工学部の魅力とは?」横浜国立大学 渡邉正義先生

  • 【学部リサーチ 2017年版】理学部・工学部系統の総合的研究
  • [2017/8/1]

工学に理学的センスを取り入れ、未来のサイエンス型産業に対応

《国立》横浜国立大学 理工学部 学部長
渡邉正義(わたなべ まさよし)先生

早稲田大学理工学部応用化学科卒業。同大学院理工学研究科博士課程中退。1982年上智大学助手。88(~90)年米国ノースカロライナ大学研究員、92年横浜国立大学講師、助教授を経て98年教授。2017年4月理工学部長に就任。主な研究テーマは「高分子イオニクスに関する研究」「ナノマテリアルに関する研究」。

理学と工学の違いについて教えてください

 理学は、英語でいうとScience。科学における基礎研究を担う学問です。世に存在する事物の成り立ちや原理を解明しようと研究が行われます。言い換えると、0から1を創る研究。新しい学術的な発見を目指します。

 一方、工学は、応用研究を担う学問です。理学により発見された原理を応用し、実用化を目指します。さらに既存の技術も改良しながら、世の中に役立つ製品の製造につながるように、さまざまな新しい技術を開発する研究が行われています。言い換えると、それまで10だったのを11にするのが工学の役割と言えるでしょう。たとえば、スマートフォンなどに使われているリチウムイオン電池は、かつてはパソコンや携帯電話を動かせる程度の電力しか出せませんでしたが、それに関わるさまざまな技術を革新させることで、今では電気自動車を走らせるまでになりました。

 科学の進歩の発端は理学から生まれます。それを理学から工学へと移行し、絶え間ない技術革新をとおして製品が生まれます。そうしたサイクルが繰り返されて、科学は進歩してきたのです。


横浜国立大学では「理工学部」としているのは、なぜでしょうか

 明治時代以降、日本は欧米の産業に追いつこうと工学に力を入れてきました。それによって日本の工学は発展し、一時は世界をリードするまでになりました。しかし、現代はどうでしょうか。スマートフォンなど革新的な製品や技術のほとんどは外国から日本に入ってきたものです。近年、人々を驚かすような画期的な製品が日本からは生まれることが少なくなりました。そのことは、工学中心の考え方だけでは新しい産業を切り拓いていくことは難しい、ということを表しています。

 今後、世界を驚かせる製品を生み出すには、原理原則に立ち返って、ものづくりを考えていく必要があります。つまり、理学のセンスを取り入れて、0から考え直してみることです。

 そうした未来のものづくりとは、すでに始まっているものでは、AI(人工知能)、IoT(=Internet of Things/さまざまなモノをインターネットにつなぎ情報交換やその制御を行う仕組み)、ビッグデータなどの情報通信の分野のほか、バイオテクノロジーやナノテクノロジーといった分野です。こうした分野の産業をイノベーション型産業またはサイエンス型産業と呼んでいます。

 本学が理工学部としている理由は、サイエンス型産業で活躍できる人材を育成するために、工学だけではなく、そこに理学的な素養も併せて学ぶ教育方針をとっているためです。本学の理工学部は、平成23年に工学部を改組して設立されました。それは、10~20年先を見据えて、未来の社会やサイエンス型産業に貢献できる学生を育てていきたい、と考えているからです。理学のセンスをもった工学の人材、そして、工学も理解できる理学の人材を育てることを目標としています。


理工学部で実施する教育の特徴について教えてください

 本学の理工学部の教育方針として、2本の柱を立てています。

 そのひとつは、もともとは工学部でしたので、工学での伝統的なものづくり、そのための技術を継承していくこと。もうひとつは、未来のものづくりに対応できる人材を育てることです。サイエンス型産業に対応するため、工学に加えてサイエンスのセンスも身につけられる教育を行います。

 学部卒業時の学位は、専攻によって「学士(工学)」「学士(理学)」のどちらかが取得できます。しかし、学生の8割が大学院に進学し、実際の研究は大学院に入ってから行われるもの。学部4年間はその準備段階ですから、大学院を含めたお話しになりますが、サイエンス型産業に対応するために特に強化している分野は、情報技術や数理科学の分野です。この分野の基礎的な素養を十分に身につけられるように、たとえば、それらに関わる科目を共通科目として大学院に設けることを目指しています。学部でも従来の工学に、その分野と重なる部分の大きい理学分野も併せて学べるようにしています。

 サイエンスとテクノロジー。その両方を大事にしたいと考えています。


理系の分野はさまざまあって選択が難しいです

 理系の研究分野は細分化されていて、そうした指摘があります。そこで本学では、平成29年に学科改組を行い、それまで4学科体制だったのを3学科としました。この目的は、まずは、サイエンス型産業を見据えた教育を強化すること。それとは分野を異にする建築都市・環境系の分野を切り離して、それを学部として独立させました。

 そして、より広い視点で進路を考えられるように分野を3つの学科に整理してまとめ直しました。各学科では、それまでの伝統的な工学に加えて、物理、化学、生物、数学などのうち、その学科の領域に関わる理学分野も取り入れて学べるようにしました。

 また、本学には「ROUTE」というプロジェクトがあります。これは、学部学生のうちから学内の先端研究に参加できる制度です。研究室の先生から学部学生向けにテーマを提示してもらい、それをリスト化して公表しています。さまざまあるテーマの中から興味に近いものを学生が選び、参加申込をしてそれに取り組むことができます。いろいろある理系の研究分野の中から自分に合ったものを選ぶのは難しいですから、早い段階から研究分野を知ってもらい、それに触れることで、自分に合った分野を選べるようにと設けました。これは学生が任意で申込むものですが、早い段階から研究に触れたいという学生が積極的に利用しています。

理工学分野を志望する受験生にメッセージを

 研究において大事なのはチャレンジング精神。研究は、結果のわからないことに対して道筋を立ててトライアンドエラーを繰り返していくもの。受験勉強や大学での講義は、答えや方法が示されているものですが、研究になると、そういったものはなく、自分で見つけ出すことが求められます。

 皆さんには、好きなことを探して、見つけて、その道で努力を重ねてください。大学生活は、好きなことを見つけるための時間でもあります。それまでの基礎学力は一生ついてまわるので、今のこの時間を大切に、努力を続けてほしいと思います。

この記事は「螢雪時代(2017年8月号)」より転載いたしました。

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