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学部長インタビュー「食品栄養科学部の魅力とは?」静岡県立大学 坂田昌弘先生

  • 【学部リサーチ 2017年版】家政・生活科学・栄養学部系統の総合的研究

地域に根ざし、食や環境の視点から「健康長寿」の実現を目指す

《公立》静岡県立大学 食品栄養科学部 学部長
坂田 昌弘(さかた まさひろ)先生

愛知県出身。1976年、静岡大学理学部化学科卒業。名古屋大学大学院理学研究科、電力中央研究所、静岡県立大学教授などを経て現職。理学博士。専門は環境化学で、有害重金属による水質・土壌汚染の研究が多い。2014年、環境化学学術賞を受賞。編・共著書に『もう水道の水は飲めない』(ミオシン出版)、『環境化学』(講談社)など。

先生のご専門は?また、その道に進まれた理由は何ですか?

 1950年代から70年代にかけて、当時の日本では水俣病やイタイイタイ病など、化学物質による深刻な公害が社会問題となっていました。私は理学部で化学を専攻するうちに、公害の原因物質を研究し、問題の解決に役立ちたいと思ったのです。また、ワンダーフォーゲル部に所属し、自然と親しんでいたことも、「将来、自然環境の保全に関わる研究をする」という目標を立てるきっかけになりました。

 現在は、自然環境中の重金属(水銀やカドミウムなど)による汚染の解明など、食の安全に関わる問題に取り組んでいます。現在、日本では環境基準が厳しく決められ、企業もそれを守る努力を重ねた結果、ほぼ100%、基準を満たすことができています。

 しかし、以前に排出された重金属は分解や無害化がされず、いつまでも湖・海底や土壌に残っています。また近年、PM2.5とそれに付着する有害物質の飛来など、中国などからの「越境汚染」も懸念されています。

 私が所属する環境生命科学科では、駿河湾や浜名湖などでフィールドワークを行い、データを蓄積、解析しています。その結果、例えば海水中の水銀は、毒性の強いメチル水銀(水俣病の原因)となって生物の食物連鎖の過程で蓄積し、しかも上位の捕食者になるほど体内で濃縮されることがわかってきました。

 さらに、発展途上国では工業化の進展とともに、重金属汚染が深刻な問題となっています。「公害」は、けっして過去の問題ではないのです。


食品栄養科学部には3つの学科があります。それぞれの特徴は?

 静岡県立大学が全学で取り組むテーマが「健康長寿」です。つまり、健康寿命(心身ともに健康で、自立して生活できる期間)をいかに延ばせるか、ということです。本学部を構成する、食品生命科学・栄養生命科学・環境生命科学の3学科も、「食・栄養・環境」それぞれの観点から「健康長寿」の実現に向け、取り組んでいます。

 本学部は1987年、食品学と栄養学を融合させた、日本で初の学部として出発しました。2002年には「薬食同源」を重視した教育研究プログラムが、文部科学省から21世紀COE(センター・オブ・エクセレンス)プログラムに採択され、さらに2007年にはグローバルCOEプログラムにも採択されました。

 3学科ともコンパクトな規模で(定員は1学年あたり、環境生命科学科が20人、他2学科が各25人)、少人数教育を実現しています。

 まず、食品生命科学科は、食の生産・開発や機能性を研究する、高度な知識を持つ食品技術者の養成を目的としています。卒業生は食品衛生監視員・食品衛生管理者の資格を取得でき、さらに、食品学分野としては日本で初めて、カリキュラムがJABEE(日本技術者教育認定機構の略称で、技術者教育プログラムが国際的水準を満たしているか評価する制度)の認定を受けており、技術士補の資格も取得できます。卒業後は、食品メーカーの技術職に就職するケースが多く見られます。

 栄養生命科学科は、管理栄養士の資格取得を目指す学科です。国家試験対策には特に力を入れており、毎年、卒業生の9割以上が合格します。カリキュラム面では、必修が多いことと、3年後期から4年前期にかけ、病院や給食施設などで行う「臨地実習」をはじめ、実習が多いことが特徴です。

 これら2学科では、それぞれ他の学科の研究室でも卒業研究ができます。

 環境生命科学科は、2014年に開設された最も新しい学科です。安全な食品や水の確保のために、環境や生態系の保全を教育・研究のテーマとし、他の2学科を支えています。カリキュラムの面では、実際面を重視した実験・実習(フィールドワーク)が多いのが特徴です。本学科では「環境計量士」という、平均合格率が15%前後の難関資格の受験資格を取得できます。環境コンサルタントなど、環境基準を満たしているか計量結果を証明するのに必須の資格ですが、今年は本学科の学生の約3 分の1 が合格できました。

 これら3学科の密接な連携により、「食・健康・環境」に関する総合的な知識と技術を身につけ、食品の安全性、生活習慣病の蔓延、複雑で多様化する環境汚染など、食と健康をめぐるさまざまな課題について、研究意識をもって取り組むことのできる、専門技術者や管理栄養士の育成を目指しています。


注目してほしい取り組みは何でしょうか?

 本学では全学共通科目として、静岡県内の地域文化や産業、防災などについて、講義とフィールドワークを組み合わせ実践的に学ぶ「しずおか学」というカリキュラムを展開しており、文部科学省から大学COC(センター・オブ・コミュニティ)事業という、地域貢献を目的とした教育プログラムに採択されています。その中でも、本学部と付属の「茶学総合研究センター」が深く関わる「茶学入門」は、特に人気が高い講座です。お茶の歴史・文化、生理機能、生産技術、マーケティングに至るまで、外部講師を招いてさまざまな側面から学びます。さらに、「静岡地域食材学」という講座も開講しています。

 また本学部では、英語力向上のカリキュラムを整備し、グローバル化への対応を積極的に進めています。1~2年次の英語科目は、TOEIC対策と、ネイティブスピーカーが担当するオーラルコミュニケーションを中心に行います。さらに、各学科で開講する、ゼミナール形式の「科学英語」では、専門書の講読、英語でのプレゼンテーションなどを通じ、専門的かつ実践的な英語能力の取得を図っています。


どのような受験生に入学してほしいですか?

 3学科いずれにも共通することですが、食品や健康、環境について強い関心を持ち、主体性をもって学んでいける学生に受験してほしいですね。そして、本学部で学び、さまざまな資格を取得するためには、特に化学と生物、そして英語の基礎学力が必要です。

 充実した研究設備と、熱意ある多くの教員を用意していますので、「食と健康の科学」を究め、より充実した「健康長寿社会」の実現を目指し、一緒に取り組んでいきましょう。

この記事は「螢雪時代(2017年7月号)」より転載いたしました。

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