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[看護・医療・保健学部系統]学べることガイド

  • 【学部リサーチ 2017年版】看護・医療・保健学部系統の総合的研究

看護師をはじめ、医療検査技師や理学療法士など、人の命と健康を支える職業人を育成するこれらの学部。
プロフェッショナルになるための学びとは何だろうか。

幅広い学科設置形態と分野

 看護・医療・保健系統の学部・学科は、入学した学科や専攻が将来の職業に直結しやすいという点では医学部(医学科)・歯学部などと似ているが、看護師や各種医療専門職の国家試験受験資格は4年制大学だけでなく短大や専門学校でも取得できるという点で異なる。ここでは4年制大学に限定してみていこう。

 まず、設置形態。看護学の場合、公立大や私立大では「看護学部」として設置されているところが多いが、国立大で看護学部の名称は千葉大のみで、これ以外は「医学部看護学科」「医学部保健学科看護学専攻」のように、医学部に含まれる形で設置されているケースが多い。

 公立大は、看護学部看護学科のみの単科大学として設置されている例や、単科の医療大学の中に看護学が含まれている例が多い。

 私立大は、数も多く設置形態も多種多様。看護学部看護学科のみの単科大は、日本赤十字看護大(東京)ほか日本赤十字社を母体とする大学をはじめ、その他私立大を含めて2017年現在で19大学。医療・保健系あるいは福祉系学部に含まれていることも多い。

 看護学以外の医療・保健分野については「医療に従事する専門職の育成」と「人々の健康を維持・増進する社会の実現」という2つの目的によって学問分野が大別されるが、今月は前者を中心に紹介していく。国立大では医学部保健学科という形をとり、看護学と共に各専攻が設置されている場合が多い。公立大や私立大はさらに幅広く、言語聴覚、視機能療法、柔道整復、救急救命、義肢装具、医療情報管理など、医療に関するあらゆる分野がある。


看護学科

看護医療学科
保健看護学科 等

 近代看護学の母と言われる F・ナイチンゲールは看護を人間が生きるのを助ける「技芸(アート)」であるとし、その技芸を学問的に支えるために発展してきたのが看護学である。看護学のことを英語では nursing scienceというが、その学びの範囲は医学に関連する事項だけでなく、人間と人間の生活に関わる幅広い内容を習得することになる。これらは、人間が人間に対して緊密に働きかける看護という職業に欠かせない素養とされているからだ。

 看護系学部・学科では、 4年間をかけて自然系、人文系、社会系、外国語等の科目で教養を身につけると同時に、専門科目と実習を通じて看護学を習得する。看護の専門科目は「人間」「健康」「環境」「看護」の理解を主な目的とし、人間・人間生活や保健・医療福祉を理解するための専門基礎科目と、看護実践の理論と方法や看護を発展させる機能を理解するための専門科目がある。

 教室で講義を受ける理論学習だけでなく、実践的に看護を学ぶ臨地実習も必修だ。実習では、講義で学んだ知識を確かめるとともに、患者とじかに接することで看護職としての自覚が生まれていく。看護の本格的な実践にあたっては、栄養やリハビリテーションなどに関連する併設学部・学科(専攻)との共同授業や病院、保健センターなどでの実習を重視したカリキュラムを編成している大学が多い。

《看護・医療・保健学部系統》 Trend & Topic

新卒看護師の離職率は7.8%、人手不足感続く

 公益社団法人日本看護協会が調査を実施し、2017年4月4日に発表した「2016年 病院看護実態調査」結果速報によれば、2015年度、新卒看護師が1年以内に離職する率は7.8%で昨年比0.3ポイントアップ。常勤看護師の離職率は10.9%で、いずれもここ数年横ばいの状況が続いている。

 その他、病院の看護部長に対するアンケート調査の中では、自院の看護職員数について「不足感がある」「やや不足感がある」との回答が全体の75.7%に上り、根強い人材不足感が続いていることを伺わせる。また、月の夜勤時間が72時間を超える看護職員は回答者の34.8%(2012年調査に対し2.4ポイントアップ)に達した。

 人手不足解消と看護師のワーク・ライフ・バランスを実現する施策が待たれるところだ。


診療放射線学科

診療放射線技術学科
放射線学科 等

 X線撮影や CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像装置)などを行う診療放射線技師を養成する学科。物理学と化学を基礎に、電気電子工学、放射線科学などを幅広く学ぶのが特色だ。

 専門科目には、理化学技術系科目(放射線物理学、核医学機器工学、放射線計測学、放射線生物学、放射線管理学、放射化学など)、電気電子技術系科目(画像工学、自動制御工学、医用電子工学など)、診療現場技術系科目(放射線写真学、X線撮影技術学、放射線治療技術学、放射性同位元素検査技術学など)などがあり、それらを実習と組み合わせて学ぶ。

 人間の体の構造などを理解するための解剖学や病理解剖学、あるいは公衆衛生学などの医学系科目の履修も必須だ。

臨床検査学科

検査科学科 等

 血液検査、尿検査、脳波、心電図測定などを行う臨床検査技師を養成する学科。

 人体の構造と機能(解剖学や生理学など)、医学検査の基礎(病理学、微生物学、血液学、免疫学など)、医療工学・情報科学などを専門の基礎として学ぶ。

 専門科目は、臨床病態学、形態検査学(血液検査学、寄生虫検査学、染色体検査学など)、生物化学・分析検査学、病因・生態防御検査学(微生物検査学、臨床ウイルス学など)、生物機能検査学、検査総合管理学などからなり、いずれも実習と組み合わせて学ぶ。

作業療法学科

リハビリテーション学科
リハビリテーション支援学科 等

 絵画、木工、園芸などの作業を通じて、病気回復、社会復帰のためのリハビリを行う作業療法士(OT)を養成する学科。

 作業療法士がリハビリを行う対象は、身体障害者、精神障害者、発達障害者、老年期障害者などと非常に幅広いため、それら障害別のカリキュラムで学んでいくのが一般的だ。

 1年次に基礎科目・教養科目を履修するとともに、病院やリハビリテーションセンターなどでの早期臨床体験・実習が多くの大学で実施されている。2年次では各障害別の専門領域を講義で学び、3年次からはそれらを臨床実習と組み合わせて学ぶ。4年次では総合臨床実習と卒業研究が行われる。

《看護・医療・保健学部系統》 Trend & Topic

「チーム医療」と専門職の役割

 看護・医療・保健学部系統では、病院や診療所などの医療機関で活躍するさまざまな医療専門家を養成している。看護という行為を通して患者を支える看護師、放射線や CT(コンピュータ断層撮影)、 MRI(核磁気共鳴映像法)などにより病巣を撮影する診療放射線技師、血液、心電図、脳波などを検査して診断・治療の基礎データをつくる臨床検査技師、手術後、病気治療後のリハビリを担当する作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、視能訓練士などがその代表だが、それぞれの医療専門職(メディカルスタッフ)が医師と共にチームを組んで患者のために働くというのが「チーム医療」といわれる考え方。単に医師の指示を受けて動くのではなく、たとえば診療放射線技師や臨床検査技師の技術的視点、あるいは患者と接する時間の長い看護師としての視点などに基づく各スタッフの意見を、対等な発言権をもって伝え合い、集団的な取り組みをしていくことがチーム医療の目的だ。


理学療法学科

リハビリテーション学科
リハビリテーション支援学科 等

 電気や光、温熱・寒冷、マッサージなどでリハビリを行う理学療法士(PT)を養成する学科。

 理学療法士は、身体に障害のある人の運動能力の回復を手助けするために、治療体操などの運動や電気刺激、マッサージなどの物理療法を施すため、医学、栄養学、薬理学、運動行動学などにわたる幅広い知識が必要。患者に向き合うためのコミュニケーション力、心理学なども必須となっている。

 専門科目では、運動障害、神経障害、老年期障害、内部障害などの障害別に、一般臨床医学から理学療法までを学ぶ。

言語聴覚学科

言語聴覚療法学科
感覚矯正学科 等

 言語や聴覚の機能回復・向上のための訓練・指導を行う言語聴覚士(ST)を養成する学科。

 脳梗塞などの後遺症のひとつ「失語症」や、病気・ケガなどによる言語障害・聴覚障害、吃音、食物をうまく食べたり飲み込んだりできない「摂食・嚥下障害」などを治療するための技術・理論を学ぶ。

 解剖学や生理学の基礎科目で、こうした障害が起きるメカニズムを探り、そのうえで、失語症、構音障害、嚥下障害、聴覚障害、発達障害などに関する専門科目を学んでいく。

視機能療法学科

視機能矯正学科
感覚矯正学科 等

 弱視や斜視などの視覚障害を持つ人の機能回復を行う視能訓練士(ORT)を養成する学科。

 モノがぼんやりと見える視力障害や、見えても認知できない視覚認知障害、斜視、弱視など、さまざまな視覚障害に対して、機能回復の訓練を行うための理論・技術を学ぶ。

 解剖実習などで、目などの感覚器官のしくみや生理、病態などを学び、さらに、視覚などの感覚器官を支配する脳について総合的に学ぶ。

口腔保健学科

口腔健康科学科
口腔生命福祉学科 等

 4月の「学部リサーチ! 医学部・歯学部・薬学部の総合的研究」でも触れたが、近年の歯学においては、虫歯や歯周病、あるいはかみ合わせ不良といった歯のトラブルが歯そのものだけでなく全身の健康や病気に関連するという考え方に基づいた教育・研究が行われている。歯学部や歯科大学の学部組織に口腔保健学科といった名称の学科が設置されるようになったのは、こうした動きに基づいている。

 これらの学科では、基礎科目や臨床実習を通じ、歯科診療の補助に加えて歯科予防処置、保健指導、摂食嚥下支援などについて学ぶことで、歯を含む口全体の健康を支える歯科衛生士を育成する。歯科衛生士の存在は上で取り上げた「チーム医療」においても主要なメンバーの一人であり、高齢化が進むわが国においてその重要性は増している。

鍼灸学科

鍼灸スポーツ学科
はり灸・スポーツトレーナー学科 等

 東洋医学の治療法である自然治癒力を利用した鍼灸について学び、はり師、きゅう師を養成する学科。

 鍼灸学科では、鍼灸学の基本である東洋医学のほか、近代医学についても広く学ぶカリキュラムが組まれている。たとえば、日本で初めて鍼灸学部や大学院を設置した明治国際医療大(京都府)鍼灸学部では、独自のカリキュラムにより1年次から3年次にかけて一般的な専門学校の2倍の時間をかけて高度な専門医学教育を行い、3年修了時には国家試験を受験して4年次は有資格者として臨床実習に臨む。卒業後は、鍼灸師だけでなくスポーツトレーナーとして活躍する人も多い。

柔道整復学科

ヘルスプロモーション整復学科 等

 接骨院などで捻挫や骨折などに対し専門治療を行う柔道整復師を養成する学科。

 柔道整復は、日本古来の柔術において、けが人を回復する技術として伝承されたもので、柔道整復師は手術を行わずに骨や腱の損傷を回復に導く技術を持っている。柔道家の現役引退後の生活を考えて、講道館柔道の創始者・嘉納治五郎が推進したといわれている。

 柔道整復学科では、1・ 2 年次で基礎医学と柔道整復学の基礎理論を学び、 3・ 4年次では骨折や脱臼などの治療法について学ぶ。

《看護・医療・保健学部系統》 Trend & Topic

予防医学とQOL

 チーム医療が必要なのは、病気を治療する病院の現場だけではない。近年では増大する一方の国民医療費を削減するためにも、「治療より予防」の考え方が重視されている。予防医学は、一次予防(疾病の予防と健康増進)・二次予防(疾病の早期発見と早期措置)・三次予防(疾病の再発防止、リハビリテーション)に分けられる。病気予防に欠かせないのは、健康な生活習慣を身につけ実行すること。そのために、患者ケアや保健活動を行う看護師や保健師、健康栄養面でのアドバイスや指導を行う管理栄養士、全身の病気につながるとされる歯の健康を守る歯科衛生士などの活躍がこれまでにも増して重要になる。病気予防の鍵とされる健康診断などでは、X線撮影や CTなどに当たる診療放射線技師、心電図や脳波、血液などの検査にあたる臨床検査技師の役割が大きい。また、手術後や薬物治療後の回復には、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士などリハビリ専門家の力が欠かせない。

 また、現代の医療では病気の治療そのものよりも患者の “QOL”(Quality of Life=生活の質)を維持・向上することを重視する考え方が主流となっている。医療専門職はその技術の行使だけでなく、患者とのコミュニケーションや心のケアといった局面においても力を発揮できる重要なポジションなのだ。


この記事は「螢雪時代(2017年6月号)」より転載いたしました。

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