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学部長インタビュー「医学部の魅力とは?」東北医科薬科大学 福田寛先生

  • 【学部リサーチ 2017年版】医学部・歯学部・薬学部の総合的研究

患者の思いを受け止めることから
東北地方の医療に向き合う

《私立》東北医科薬科大学 医学部 学部長
福田 寛 先生

青森県生まれ。1974年に東北大学医学部を卒業し、1978年に同大大学院医学研究科修了。同大抗酸菌病研究所教授、加齢医学研究所所長等を歴任し、2013年に同大退職。2016年、東北医科薬科大学医学部の初代学部長に就任。放射線医学を専門とし、がん検査法としてのPET(陽電子放射断層撮影)の実用化に尽力した。

福田先生は
どんな医学生でしたか?

 医学部を志望した動機としては、医師の仕事よりもどちらかというと“医学”という学問そのものに興味があったように思います。そこから1年浪人を経て東北大学医学部に入学したのですが、当時は大学紛争が真っ盛りの時代で、大学全体が騒然としていました。毎日のように授業ボイコットや教室の封鎖といった事態が発生し、とても勉強ができる状況ではありませんでしたから、私も次第に大学から足が遠のき、しばらくは遊びやアルバイトに精を出していたものです。その後、機動隊の突入で大学の封鎖が解除されてようやく勉強できる環境が戻り、そこからわずか3か月間、死にものぐるいで勉強してやっと進級できたことを覚えています。

 在学中はバレーボール部に所属し、東医体(「東日本医科学生総合体育大会」の略。東日本の多くの医学部生が参加するスポーツ大会)に出場するなどスポーツにも打ち込みましたが、もちろん大学での勉強、特に臨床実習などには真剣に取り組みました。卒業後、研究医を志向していた私はすぐ大学院に入り、臨床研修と並行して放射線生物学の研究を行ってきました。この頃の取り組みが今につながっていると思うと、やはり一生懸命に勉強してきてよかったと思います。


「放射線医学」とは
どんな学問ですか?

 放射線医学は実はかなり幅の広い学問で、大きな分類としては「画像診断学」と「放射線治療」の2つの分野に分かれます。CTスキャンやMRIなどはご存知と思いますが、いずれも、人間の体内の様子を画像にして病気やけがの状態を知る技術です。その中で、特に放射線や放射性同位体を用いた検査・診断技術を研究するのが放射線医学における画像診断学です。放射線治療はその名の通り、放射線を用いてがんなどの病気を治療する技術に関する研究です。

 私の専門は前者の画像診断学で、特にPET(陽電子放射断層撮影)の技術開発に1981年頃から取り組んできました。これは患者の体内に投与された放射性同位体から出る陽電子が体組織を構成する電子と反応して放出される光子を検出して画像化する技術で、体内の生理学的な情報が得やすいことから、がんの早期発見に役立ちます。PETは2002年に実用化、つまり保険診療の対象となり、現在ではがん診断の現場に広く普及していますが、私は東北大での技術開発から実用化に至る厚生労働省との交渉にまで携わることができました。

 放射線医学の中でも、特にこうした診断技術の開発には、医学だけではなく物理学や工学など幅広い分野の専門家たちの協力が必要です。医師が各分野の専門家である必要はありませんが、他分野の協力相手が言うことをある程度理解してコミュニケーションが取れる、いわば「学際的」なセンスが求められる世界です。

 ところで、2011年の東日本大震災に伴って発生した東京電力福島第一原発事故以来、放射線や放射性物質に対する世間の強い不安が広がったことは記憶されている方も多いと思います。実際に放射線医学の現場でも、治療や検査に使う放射線について、患者さんから不安を訴える声が聞かれたことが少なからずありました。こうした声に対して向き合い、リスクコミュニケーションを取っていくこともわれわれ放射線医の使命と考え、その一環として東北医科薬科大学では、私立医学部としては珍しい「放射線基礎医学教室」を設置しています。残念ながら、放射線に関しては放射線科以外の医師の間にも正しい知識が定着しているとは言い難いのが実情です。放射線基礎医学教室では、医学生にまずは放射線の正しい知識を持たせるところから始め、患者さんや一般の方々が持っている不安な気持ちに対してどう向き合っていくか、という姿勢についても今後教えていきたいと考えています。


東北地方における
東北医科薬科大学の役割を
教えてください

 東日本大震災より前から、東北地方の医療現場では人口減少とそれに伴う医師不足、診療科の偏りといった問題が生じていました。そこに発生した震災がさらに追い打ちをかけたというのが正しい構図かと思います。地震と津波による医療施設の破壊や医師の死亡、また原発事故による放射線不安も相まって医療従事者が現地から撤退してしまうといった事態が、状況をさらにひどいものにしてしまったわけです。こうした状況にある東北地方の地域医療を支えることが、東北医科薬科大学のまさに使命であると言えます。

 東北地方の医療を支えるには、まず一人でも多くの医師を地域に定着させること。そのための施策の一つとして考えたのが、東北地方各県での医療機関等への一定期間の勤務を条件とした修学金制度です。これは医学部の募集人数100名のうち合計55名に対し、 条件により1名あたり2600万円から3000万円にのぼる返還不要の修学資金を支給するというものです。この制度の利用によって、 成績優秀ながら私立医学部への進学をあきらめていた受験生に道を開くことができたと考えています。

 教育面では、地域医療教育に力を入れています。先日も、地震・津波と原発事故の被災地となった福島県南相馬市を学生とともに訪問し、医療施設や医師の不足などといった状況に対する地域住民の生の声を伺ってきました。また、東北6県の病院を結んだ「地域医療ネットワーク」を構築し、特定の地域に学生を繰り返し派遣することを通じて、臨床実習だけでなく、その病院が地域で果たしている役割や地域の文化までも学べる体制をとっています。

 もう一つ、これは大切なことですが、先にお話しした「東北地方への医師定着」が使命とは言っても、それが医師を一つの地域に縛り付けることを意味するようではいけません。卒業後のキャリアアップにつながるしくみについて、最初の卒業生が出る2022年に向けて構築中です。


医師をめざす学生に必要な
素養とは何ですか?

 本学のアドミッションポリシーに、次のような文言があります。

 「高度で専門的な知識と技能を兼ね備えながら、病める人とその家族の思いに共感できる強い意志と柔らかな心を持った医師を志す学生を求めています。」

 これは77年の歴史を持つ東北薬科大学時代からの教育理念でもありますが、医師の素養とは、まさにここに集約されていると思います。私も、患者さんの思いを受け止めることが医師としての第一歩だと常々教えています。

 そうした姿勢と、東北地方の医療を支えたいという情熱を持った人の入学を、お待ちしています。

この記事は「螢雪時代(2017年4月号)」より転載いたしました。

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