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学部長インタビュー「海洋科学部の魅力って何?」東京海洋大学 佐藤秀一先生

  • 【学部リサーチ 2016】 農・獣医畜産・水産学部系統の総合的研究
  • [2016/12/28]

世界とつながる海と人間とのつながりをあらゆる視点で見つめる学問

《国立》東京海洋大学 海洋科学部 学部長
(2017年より海洋生命科学部・海洋資源環境学部に改組)
佐藤 秀一 (さとう しゅういち)先生
1957年新潟県生まれ。1981年東京水産大学水産学部増殖学科卒業。同大学大学院水産学研究科修士課程中退。同大学助手、講師、助教授、教授を経て、現在東京海洋大学海洋科学部学術研究院海洋生物資源学部門教授。「水族栄養学」を主な研究テーマとし、環境負荷の少ない養殖魚飼料の開発などを研究。植物性飼料のみで養殖する「ベジタリアンマグロ」の育成を目標としている。共著に『養殖の水と餌-陰の主役たち』(恒星社厚生閣)など。

マグロを農作物で育てる?
水族栄養学とは

 私が専門としている研究分野は「水族栄養学」といいます。これはどんな研究かというと、魚をはじめとした水の中に住んでいる動物が生育するのにどんな栄養素を必要としているのか(栄養要求性)を調べ、その知見をもとにして、主に養殖用の飼料の開発につなげるというものです。

 いま、世界では水産養殖業が急速に発展していて、養殖魚の生産量は世界の肉牛の生産をすでに超えています。これに伴い、その養殖魚を育てるために使う餌の生産の需要が当然高まっていきます。これまで、魚の飼料といえば魚粉(魚を乾燥・粉砕し粉状にしたもの)が用いられてきましたが、魚粉の原料となる魚の資源量は一定ですから、需要が増えたからといってその通りに魚粉用の魚を獲っていたら、いつか獲り尽くすことになってしまいます。そうならないために、これまでとは違い魚粉の配合量が少ない餌、あるいは魚粉をまったく使わない餌の開発が必要になってきます。

 そこで、最初にお話ししたように魚の種類ごとにどんな栄養素が必要かを調べて、新しいタイプの飼料開発を試みているのです。特に、私たちの研究室では植物を原料にした飼料によって魚を育てる研究を行っています。魚にも人間と同様に“好き嫌い”のようなものがあって、特に魚食性の魚(例えばマグロなど、他の魚を主食とする魚)に植物原料の飼料を与えると、いったん食べるもののすぐに吐き出してしまったりと、なかなか難しいところもありますが研究は一歩一歩着実に進んでいます。例えばその成果として、かつては50%を超えていた日本の養殖用飼料における魚粉の配合量は今では平均で40%、魚種によっては30%くらいまで下がっています。最近の例では、マダイを魚粉配合量わずか5%の飼料で育てている生産者さんもいらっしゃるそうです。

 こうした取り組みは魚粉の原料となる魚の資源量保護につながるだけではありません。魚粉にはリンが多く含まれているのですが、リンや窒素が水中に多量に排出されると水質が悪化し、赤潮などの原因となります。養殖魚飼料における魚粉の使用量を減らして植物由来の原料を増やすことで、こうした環境への負担を軽減することもできるのです。

海洋と人間のかかわりを
探求する海洋科学

 本学部で取り扱っている「海洋科学」は、学術分類では農学の一分野として定義されています。農学というとかつては農業に関する学問というイメージが強かったのですが、現在の農学は「生命・環境と人間社会の関わりについて研究する学問」と定義されています。それと同様に、海洋という場で、そこに住む生命、そこから生産される食品など生産物、そしてその環境について人間との関わりという観点で研究を行うのが海洋科学であると言えます。

 本学ではこれまで海洋科学部(海洋環境学科・海洋生物資源学科・食品生産科学科・海洋政策文化学科)と海洋工学部(海事システム工学科・海洋電子機械工学科・流通情報工学科)の2学部7学科を設置していましたが、来年(2017年)4月より海洋科学部は海洋生命科学部に再編・改称、さらに新学部として海洋資源環境学部が設置され、3学部8学科構成として新たなスタートを切ります。ここでは新しい学部構成のうち海洋生命科学部と海洋資源環境学部の各学科に沿って、海洋科学で学ぶことの内容をご説明したいと思います。

 海洋生命科学部海洋生物資源学科では、海をはじめ水中に住む生物を資源ととらえ、その利用法あるいは保全の方法について研究を行います。最初にお話しした私たちの研究分野「水族栄養学」もこの海洋生物資源学科に属します。

 そして、水産資源の1次的な生産について研究する海洋生物資源学科に対し、それらの資源を食品としてどのように加工・利用するかを研究するのが食品生産科学科です。この分野では化学・工学・微生物学などさまざまな側面からの知見をもとにして水産食品の加工技術等を研究しています。

 海洋政策文化学科は、「海と人間のかかわり」を軸として、主に経済活動や政策といった視点から海洋利用について考える分野です。前述の海洋生命科学科・食品生産科学科と関連するところでは水産資源の利用を維持・発展するための管理制度や政策などを研究する一方、海洋や水辺での自然体験活動やスポーツ、あるいは最近日本を含む世界各国で議論となっている領海問題ともかかわりがある海洋国際法に関する研究テーマもあります。

 次に、新学部・海洋資源環境学部での学問についてです。この学部は今年まで旧・海洋科学部の海洋環境学科が軸となって設置されました。旧・海洋環境学科では魚類・プランクトン・クジラなどさまざまな海洋生物と海洋環境との関係を中心に研究を行ってきました。この学科での研究内容は新学科である海洋環境科学科に引き継がれます。また、もう1つの新学科である海洋資源エネルギー学科では、これまで本学ではあまり扱ってこなかった“生物以外の海洋資源”、例えばメタンハイドレートや鉱物資源、エネルギーなども含めて、海洋全体の資源の開発や利用について研究することになります。こうした資源を海外からの輸入に大きく頼っている日本にとって、国の経済に大きな影響を与えうる重要な研究分野になると考えています。

世界につながる海を
見渡す視点を

 いまお話ししたように、海洋科学とひとことで言ってもそこには非常に幅広い分野の学問があります。生物学や化学、物理学、地学といった自然科学だけでなく、法学や経済学などの視点も必要です。

 そして何よりも、海洋科学を志すみなさんに身につけてほしいのはグローバルにものを考える視点です。本学部の卒業生は従来から水産系を中心とする各業界で活躍していますが、日本国内の水産業の規模は現状維持または減少という状態を続けており、これからは水産資源なり技術なりを世界から手に入れる、あるいは世界に売りに行く、あるいは自分たちが海外で育てるという状況になっていきます。そうした世界で生きていくバイタリティと世界的な視点を身に着けてほしいと思いますし、私たちもそうした人材を育てていきたいと考えています。そのための施策として、本学ではグローバル人材育成プログラムを文部科学省から採択いただき、実施しています。4年生進級の条件としてのTOEICスコア600点以上獲得といった語学教育のほか、「海外探検隊」と銘打って香港・台湾・シンガポール・マレーシア・タイ・ノルウェーの6か国に学生を派遣する海外派遣キャリア演習を行っています。各国では日系・外資系も含めた現地企業でのインターン研修のほか、現地大学での研究活動参加なども行います。こうした研修活動を通じて、卒業後、世界で活躍するためのコミュニケーション能力などといった素地を作ってもらえればと考えています。そうした背景もあって、昨年度入試からは出願要件に英検等のスコア提出を課す英語外部検定利用入試を導入しています。また、語学だけではなく、“海は世界とつながっている”という視点を忘れないでいてほしいものです。

 最後になりますが、海や河川、あるいはそこに住む生物に興味をお持ちの受験生の方は、ぜひ東京海洋大学に来てください。生き物や食品など意外に身近なものを取り扱う学問ですし、実験や実習も多いのできっと楽しい経験ができるのではないかと思います。

この記事は「螢雪時代(2017年1月号)」より転載いたしました。

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