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学長インタビュー「体育大学の魅力って何?」日本体育大学 谷釡了正先生

  • 【学部リサーチ 2016】 教育・教員養成・体育・健康科学部系統の総合的研究

体育・スポーツを通して心身の健康を獲得し、幸せな人生を送ることができる道筋を提供する

《私立》日本体育大学 学長
谷釡 了正(たにがま りょうしょう)先生

1948年石川県生まれ。日本体育大学体育学部体育学科卒業。東京教育大学(現筑波大学)大学院体育学研究科修士課程修了。日本体育大学助手、助教授を経て1995年教授。学長室長、図書館長、体育学部長を歴任後2014年学長就任。専門はスポーツ史で、『スポーツ史講義』(大修館書店)などの著書がある。実家の仏教寺院の住職でもあり、学長就任後、反体罰・反暴力を学内外で訴え続けている。

生きていることの喜びと
健康を手にできる

 人間は人と人との関係性を生きています。独りで生きようとすると「孤独」に陥り、心を外に開こうという意欲も湧きません。この「孤独」の世界から人を解放することができる一つのツールがスポーツです。スポーツを通して人と人の心を紡ぐことができれば、心が内面に向かわずに、ほぐれて、楽しい一時を過ごすことができます。その結果として生きていることの喜びと健康を手にすることができます。狂ったように夢中になれるものをスポーツの中で見出すことができれば、生きていることの実感を得ることができます。生きる術の一つであるからこそ、人間はスポーツに熱狂できるのかも知れません。

 今年はリオデジャネイロでオリンピックが開かれ、4年後の2020年には、1964年以来、2度目の東京オリンピックが開かれます。オリンピックは、世界中の人々が熱狂するスポーツの華やかなイベントのひとつですが、世界の若人が集う「平和の祭典」であることに特色があります。“参加することにこそ意義がある”というオリンピックのモットーは、選手たちが大会で日頃の練習の成果を発揮しながら世界平和を願い、選手たちの相互交流を通して平和を勝ち取っていくことの大切さを表現しています。

 オリンピックに見られるように、人間に心の安寧と社会の平和をもたらしてくれるのがスポーツです。ですから、自身の競技力を発揮するためだけにスポーツに熱中し、その結果としてドーピングに手を染めたような選手に、国際社会の「平和」を論じることはできません。

オリンピックと深い関係

 日本体育大学(日体大)は、全国の津々浦々に運動施設を開設して青少年に運動の機会を提供し、新時代を担う若者に強壮・強健な身体を作ってもらうことを目的に、1891(明治24)年8月に創立された「体育会」を起源としています。

 この時モデルにしたのが、ドイツの「体育倶楽部」(Turnverein)ですが、これを「体育会」と翻訳したことが、大学名の由来です。翌年に日本を代表する機関であることを願って「日本体育会」と名称を改め、さらにその翌年、日体大の前身となる体育指導者養成施設「日本体育会体操練習所」を開設しました。以来、本学は中・高等教育における体育教員養成の役割を担って今日に至り、2016年に125周年を迎えています。

 いっぽう、本学はオリンピックと日本で最初に折衝を持った大学としても知られています。本学が開設されたのは、国際オリンピック委員会(IOC)が結成された1894年のちょうど1年前。第2回のオリンピック競技大会がパリで開催されたのは1900年のことですが、その年のオリンピック総会(当時、万国体育会議、今のIOC総会)に、日本代表として招待されたのが本学だったのです。以来、本学はオリンピックと深い関係を保ちながら日本のスポーツの振興に貢献し、今に至っています。本学の学生と卒業生がこれまでのオリンピックで獲得したメダルの数は119個ですが、これは日本選手団が獲得した総メダル数の約4分の1に相当します。

学部・学科の特色と
求める人間像

 本学は1949年4月に新制大学として体育学部体育学科をもって再出発しました。この時は保健体育教員養成を柱にしていました。その後、国民の健康を促進するための人材の養成(健康学科)、日本の伝統的運動文化たる武道指導者の養成(武道学科)、レジャー・レクレーション時代の社会のニーズに応える指導者の養成(社会体育学科)を行う学科を加え、4学科の体制を整え今に至っています。なお、体育学部では、2017年4月から保健体育教員の有資格者に特別支援学校教諭の資格が付与されるようになります。

 日本体育大学は、長い間、体育学部の1学部のみでしたが、人々の健康・スポーツへの関心の高まりとそれに貢献できる人材という社会的要請に対して、新学部を開設しています。

 2013年4月に開設されたのが、「児童スポーツ教育学部」で、12歳くらいまでの児童に科学的な運動指導ができる人材の養成が目的です。一般に、人の健康な人生は誕生してから12歳ぐらいまでに決まってしまうといわれていますが、この大切な時期に、科学的な根拠をもって運動指導できる人材があまりいないという状況に対応したものです。児童スポーツ教育学部には「児童スポーツ教育コース」と「幼児教育保育コース」の2つのコースが置かれ、児童スポーツ教育コースでは、小学校教諭と幼稚園教諭、幼児教育保育コースでは、幼稚園教諭・保育士資格が取得できます。

 翌2014年4月には、「保健医療学部」を開設しました。整復医療学科では柔道整復師の養成、救急医療学科では救急救命士の養成を行っています。すでに日本は高齢社会に突入しておりますが、高齢者に日々快適に過ごしてもらうために身体のケアを担える人材(柔道整復師)と、急病に備え安心を提供できる人材(救急救命士)の養成は重要です。こうした人材はその能力を若い世代にも適用できるオールラウンダーでもあり、大きな未来が開けています。

2017年4月、
スポーツ文化学部を新設

 2017年4月には、スポーツによる国際人の養成を目指し「スポーツ文化学部」を新設します。体育学部に設置されていた武道学科を武道教育学科に改め、日本の運動文化を国際社会に伝える人材の育成を行い、もう一つの学科、スポーツ国際学科では、スポーツ指導者の国際社会への派遣などを通して国際人の育成をはかります。

 “スポーツに国境はない”といわれますが、オリンピックやサッカーやラグビーのワールドカップなどにみられますように、スポーツは人々を熱狂させるだけでなく、国と国、人と人との垣根を取り払い、心からの交流を促します。スポーツに秀でた人は競技スポーツの舞台で活躍できるだけでなく、世界の人々を結びつける役割をも担います。

 日本体育大学は、これまでに360人以上のJICA(国際協力機構)ボランティアを輩出しており、学生の短期ボランティアも、毎年多数派遣しています。こうした実績もあって、2014年8月、日本体育大学はJICAと連携協定を締結。カンボジアの国立体育教員養成校における体育教育の改善や、ブラジルの日系社会における地域スポーツ振興などに学生・教員を毎年派遣しています。JICAボランティアへの学生派遣を含め、留学生の派遣受け入れ、交換留学、クラブ間の国際交流を支援する組織として「国際交流センター」も2014年に発足しています。

 2014年に設置された「スーパーコーチャー・アカデミー」も、日本体育大学の国際貢献の大きな柱です。これは2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた文部科学省の「スポーツ・フォー・トゥモロー」プログラムの一環で設けられたもので、日体大は私立大学としてこれに唯一採択されました。アカデミーは、国際コーチングエクセレンス評議会(ICCE)から講師を招くなど連携をとっており、コーチを育成する人材「コーチデベロッパー」の国際資格が得られる世界唯一の機関です。

体育・スポーツを志す諸君に!

 体育・スポーツに関する学問の使命は、体育・スポーツを通して心身の健康を獲得し、もって幸せな人生を送ることができる道筋を提供することだと思います。したがって本学もこれに沿って任務を遂行することになります。

 スポーツに挑戦して人間の可能性の限界に挑み、達成感に浸ることも大切ですが、老いも若きも男性も女性も、障害者も健常者も等しく体育・スポーツを手にして、人生を豊かにしていくことも大切です。

 スポーツは国民の権利であることが「スポーツ基本法」に謳われています。ぜひ、私どものような専門の大学に学んで、自分の人生、他者の人生を豊かにする道を歩んでいただきたいと思います。

この記事は「螢雪時代(2016年10月号)」より転載いたしました。

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