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学長インタビュー「教育大学の魅力って何?」愛知教育大学 後藤ひとみ先生

  • 【学部リサーチ 2016】 教育・教員養成・体育・健康科学部系統の総合的研究

時代が変える教育の形と
変わらない教職の魅力を知ってほしい

《国立》愛知教育大学 学長
後藤 ひとみ(ごとう ひとみ)先生

1956年北海道生まれ。北海道教育大学教育学部を卒業後、愛知教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。同朋大学講師、北海道教育大学助教授を経て2005年に愛知教育大学教授。2014年に学長に就任。専攻は養護教育学で、共著に『四訂養護概説』(ぎょうせい)、『保健室経営マニュアル』(同)などがある。

養護教諭の役割とは

 私は、当時4年制の養護教諭養成課程として全国で茨城大・愛知教育大に続く2期目の開設となった北海道教育大学で養護教育学を学びました。養護教諭というと「保健室にいる先生」というイメージが強いかもしれません。実際に養護教諭は、傷病者への対応やメンタルに関する対応、 先生方の相談に乗る、といった業務を保健室の中で行っていますが、ひと昔前とは違い、ずっと保健室に張り付いているというような仕事ではありません。ですから、私は「保健“室”の先生」という言い方ではなく、正しくは「養護教諭」、せめて「保健の先生」という呼び方はしてほしいなと思っています。「保健室にいる」のではなく、業務として子どもたちの健康管理と教育を担当している人という意味です。保健室というとどうしても健康管理のイメージが強いのですが、子どもたちの学年によってはメンタルケアや保健指導といった形で、あくまで教師として関わっていきます。ですから、そこにはある種の教育観も必要ですし、学校の教育目標や教育計画を理解してその一翼を担うということを求められるわけです。養護教諭は子どもたちの心身の健康を守り育て、発育・発達を支えるという目的を、健康の管理と指導という両輪のもとで実現していく職種であり、何よりも、一般の教員に比べて子どもたちの命により近いという立場からも、大きな責任の生じる仕事です。

 最近では世の中の価値観や文化水準の変化に伴い、子どもたちが抱える状況もより複雑化し、メンタルの問題も深刻になっています。例えば、経済的に豊かであっても子どもが孤独な食事をしているような家庭と、貧しく食事の内容が乏しくても、家族が揃って食卓を囲み、おかずの取り合いや会話をしながら毎日を過ごす家庭と、どちらが子どもの心を安定させるかといえば後者でしょう。しかし、近年の子どもたちの状況は前者に偏りがちで、そのことが彼らの心を深刻な状態にしているように思われます。そうした子どもたちの心を受け止めるのもまた、養護教諭の役割のひとつです。全国の学校で配置が進んでいるスクールカウンセラーとの違いは少しわかりにくいかもしれませんが、養護教諭は常に学校にいるという点、またやはり「教師」であるという点で、教育を意識して関わっていくという点が大きいと言えます。もちろん、メンタルの問題がより深刻である場合はスクールカウンセラーに委ねるという対応も必要ですが、養護教諭はそうなる前の段階の日常的なレベルで対応することができます。スクールカウンセラーをうまく機能させるためにも、学校や家族ほか関係者同士の連携を結んでいくことも重要な役目です。

社会からの要請と
教育に求められる力の変化

 続いて、教員養成系学部全体の学びについてお話しします。この学部では一般教養に加え、「教師」や「学校の教育」を理解するための専門科目を学びます。これらの専門科目は、教職免許を取る際に欠かせないものでもあります。これ以外には、教える教科に応じた専門科目の修得が必要となります。最近、教員免許を取得させるための教育課程において特に強く推進されているのは「アクティブ・ラーニング」「プログラミング教育」「ICTの導入」です。

 これは、2020年に予定されている学習指導要領改定を受けての動きですが、特にアクティブ・ラーニングについては、子どもたち自身が主体的に問題を発見したり、協働して学んだりといったことのできる人になってほしいという願いを込めて進めています。大学での教育においても、従来の「講義」スタイルの授業や演習をアクティブ・ラーニング型に切り替えていく方向での議論が行われています。指導要領の改定によって子どもたちの学習の形が変わる以上、将来教員として子どもたちを教える側となる学生も、そのスタイルに慣れておかねばならないということです。本学でもこの春、構内の一部を改修して学生たちが授業とは別に、自主的に学べるスペースを設けました。 同時に、われわれ大学の教員自身もまた、アクティブ・ラーニングに対応できるよう変わっていかねばならないと考えています。

 プログラミング教育については、当学では情報教育の担当教員が中心となって学生たちに伝えていくことになろうかと思います。私自身も情報系の学会で実際に子どもたちがプログラミングの授業をする様子を見て、これを教えるとなると教師の側にどんな力が必要になるだろうかと考えました。機械の操作だけでなく、プログラムを組むというプロセスを通じてどんなことを学ばせたいのか、という点がしっかりできていないと、結局「プログラムを組む」ということが目的になってしまいますが、それは本来の目的ではないはずです。プログラムを組むことをゴールに設定しつつ、アイデアを出し合うことや協力して課題に取り組むことなど、教育の本質的な部分を子どもたちにきちんと伝えられることが、教師として大事な力になってきている気がします。

 また、キャリア教育や危機管理などもまた、教員養成課程の中で重要なテーマです。「キャリア教育」には2つの意味があって、ひとつは学生本人のキャリアを考えさせること。また、教員養成系学部である以上は子どもたちのキャリアについて教えられる先生でないといけませんから、その点について学べる授業を取り入れています。

ゼロ免課程を見直し、
教育行政を支える専門職を育成

 愛知教育大学では平成29年より養成課程の改組を行います。ご存知のように、教員免許取得を目的としない課程(ゼロ免課程)は国の方針で廃止もしくは改組という流れが全国的に進んでいますが、当学では平成28年度まで設置してきた「現代学芸課程」を抜本的に見直し「教育支援専門職養成課程」(予定)といたしました。教育支援専門職養成課程は3つのコースからなり、スクールカウンセラーを養成する「心理コース」とスクールソーシャルワーカーを養成する「福祉コース」に加え、「教育ガバナンスコース」の設置が大きな特色となっています。教育ガバナンスコースは国立大学としては設置が初めてとなるコースで、学校の運営には欠かせない事務職員や教育委員会・文科省といった国家・地方公務員など、教育行政の理解に基盤を置いた事務系職員の養成を目的としています。

 いま、学校の事務職ひとつを取っても、その業務内容は高度化しています。学校が抱える問題がより複雑になり、学校のハード環境がICT化している影響などもあり、学校の中にはいろいろな能力を持った人材が求められるようになってきています。あくまで教育行政への理解を高めることを基盤に置きつつも、グローバルに対応できる語学力や情報機器に関する知識など、「プラスアルファ」の力を持った事務系職員を育てていきたいと考えています。

苦労に見合う喜びがある
教師という仕事の魅力を伝えたい

 本学は2012年より、北海道教育大学・東京学芸大学・大阪教育大学と共同で、わが国の教員養成教育の諸課題への対応を目的とした「HATOプロジェクト」に取り組んでいます。その中で本学が中心となって進めている「教員の魅力プロジェクト」についてお話ししたいと思います。このプロジェクトではまず子どもたちに「教員のイメージ」について調査を行い、さらに教員に対してのアンケート調査と聞き取り調査を行いました。その結果、教員側には職業意識や使命感の高さがみられる一方で、多忙感がありました。子どもたちの回答からもまた、教員という仕事が大切であるということ、先生方はいつも忙しそうだという認識が得られました。こちらが積極的にアピールしなくても教員という仕事の大切さは子どもたちなりに理解していると言えます。そこで、先生たちは仕事の多忙さや保護者からのクレームといった苦労に耐えてなぜこの仕事を続けるのかという疑問への答えとして、実際に教師をしている人でないとわからないその魅力を、言葉で出来る限り細やかに、若い人たちに伝えていく機会をつくりたいと思っています。

 教員養成系大学は教員や教員をサポートする専門職を育てる課程を置いています。子どもの育ちに関心があり、そうした職業に就きたいという目的が明確な人にぜひ入学していただきたいと思います。また、授業を受けるだけではなく、いろいろな体験に対して前向きに取り組んでほしいと思います。それは部活動でも、海外での研修でもかまいません。そして、そうした経験を通して様々なことを感じ取る力を、私たちも育ててあげたいと思っています。

この記事は「瑩雪時代(2016年10月号)」より転載いたしました。

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