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学科・専攻スタディ! 社会・社会福祉学部系統で何を学ぶ?

  • 【学部リサーチ 2016】 社会・社会福祉学部系統の総合的研究
  • [2016/8/15]

社会・社会福祉学部系統で何を学ぶ?

人文科学を軸にして広範なテーマを取り扱う社会学・社会福祉学系統の学問は、混迷する世界情勢から地域問題、文化、メディア、高齢化社会など、現代社会が直面する最新の課題を直接取り扱うことのできる領域として、その存在価値はますます重要視されている。

社会学は「人のつながり」を科学する学問

 社会学という学問がどのようなことを対象にするかは、高校生にはややイメージしづらいかもしれない。小・中学校の社会科や高校の地歴・公民と名前は似ていても、大学の社会学部が対象とする分野・領域は、その研究テーマのキーワードだけを取り上げても、アイドル、イクメン、いじめ、炎上、音楽配信、格差社会、キラキラネーム、女子会、臓器移植、地域商店街、動画サイト、バリアフリー、ブラック企業、草食系男子、SNSなど、同じ学問分野とは思えないほど幅広い。一見、研究者各々が自分の好きなテーマを思いのままに研究しているかのようだが、そうではない。ここで取り上げられるすべてのテーマは「社会」という「人と人とのつながり」の中で生じる事象であり、これらの本質や問題点、可能性を科学的・実証的な手法で明らかにしようと試みるのが、人文科学の一分野としての社会学なのだ。
 その研究手法は「社会調査」といい、アンケートなどで大量のデータを取り、それを分析することで調査対象を把握しようとする統計的社会調査と、インタビューやフィールドワークなどで少人数を対象に分析を行う事例的社会調査があり、大学の社会学部ではこれらの手法を理論と実践で学んでいる。

社会学の学際的側面

 社会学を学べる大学・学部を探す場合、「社会学部」として独立しているところはわかりやすいが、人文科学の一分野として成立した経緯もあり、他の学部に学科や専攻として含まれている場合も多い。東京大は文学部行動文化学科に心理学、社会心理学、社会学の3専修課程を設置している。埼玉大の場合は、教養学部教養学科の現代社会専修課程に社会学専攻とフィールド科学専攻として設置されている。私立大でも、駒澤大-文、専修大-人間科学、日本大-文理などに社会学科が設置されている。
 また、社会学部を設置している大学でも、学科や専攻などの内容はさまざまだ。社会学部が日本の大学で最初(1951年)に設置された一橋大は、社会学部の研究分野を社会動態、社会文化、人間行動、人間・社会形成、総合政策、歴史社会、地球社会の7つに分けている。
 一橋大の翌年に設置され私学最古の歴史を持つ法政大-社会には、社会学科、社会政策科学科、メディア社会学科の3学科が設置され、専門科目を7コース(環境政策、企業と社会、コミュニティ・デザイン、人間・社会、メディア社会、メディア文化、国際社会)・8プログラムにグループ化している。関西大-社会(1967年設置)も、4専攻(社会学、メディア、心理学、社会システムデザイン)・13プログラムを設置し、プログラムの中には専攻横断型のものや専攻以外の学生が受講できるものもある。また、2013年にマス・コミュニケーション学専攻からリニューアルしたメディア専攻は、社会学部設置以前の1949年から文学部新聞学科として続いてきた歴史をもつ。新聞学科は現在、上智大-文と日本大-法にあり、メディア、ジャーナリズムを専門に学ぶ点で共通している。心理学の学科(専攻)は、情報処理や統計学の授業が必修とされていることが多く、文系学部とはいえ数学的な素養も求められる。
 社会学のこうした学際的側面は、宗教、民族、国際経済、メディアのあり方などにからむ難題が続出する世界情勢の中で重要性を増している。研究者や学生にとっては、問題点の多様な切り口の中から新しい研究テーマを見出し、さまざまな問題への解決に取り組む好機とも言えよう。

2020年に向けて高まる観光産業の熱気

 2015年の訪日外国人旅行者数は約1,974万人(前年比47.1%増)となり、対前年の伸び率も過去最高となった。また、2016年3月の訪日外国人旅行者数は約201万人で、初めて200万人を超えた。
 世界経済フォーラム(WEF)による観光競争力ランキングでも、近年の日本は22位(2011年)→14位(2013年)→9位(2015年)と順位を上げている。中でも「客の待遇」の項目ではトップとなり、「おもてなし」の精神が高い評価を得た。2015年のランキングは141の国・地域での順位で、総合トップはスペイン。以下、フランス、ドイツ、アメリカ、イギリス、スイスと続く。
 中国、韓国や東南アジア諸国の経済発展により大幅に増加した観光客が、文化遺産や自然環境、安全でおいしい食品、接客技術など日本のさまざまな“観光資源”を求めて渡航し、日本の観光産業の大きな支えとなっている。日本政府としても、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を視野に入れ、外国人観光客の受け入れ態勢や施策を強化しているところである。

社会的事象として観光を研究する

 余暇を使って自分の楽しみのために出かける旅行を意味する「観光(ツーリズム)」もまた、社会学系統の学問が対象とする「人と人とのつながり」が生み出す事象の一つの形。現代社会における観光の役割、観光地での体験を通じた地域文化との触れ合い、企業活動におけるホスピタリティーの重要性など、観光に関わる社会現象について、社会学、経済学、経営学、歴史学、地理学、統計学、心理学などの諸科学を総動員して研究するのが観光系学部だ。
 観光学部は、4年制大学としては立教大が1998年に設置したのが初めて(社会学部観光学科から独立)。国立大学では2007年に和歌山大、琉球大が設置した観光学科が翌年観光学部(和歌山大)・観光産業科学部(琉球大)となったのが初めて。また、2006年には北海道大が観光学高等研究センター、大学院観光創造専攻を開設している。観光コミュニティ学部、ホスピタリティ・ツーリズム学部などの名称を含め、この系統の学部・学科は近年増加傾向にある。

地域社会を研究する地域学

 地域学、地域科学とは、人文科学、社会科学、自然科学の諸科学にフィールドワークを加えて地域社会を研究する学問のこと。人文科学からは考古学、歴史学、文化人類学、民俗学、民族学、言語学などが、社会科学からは環境学、地政学、地理学などが、自然科学からは生態学、地学、地質学などが動員され、地域学ではこれらを基礎に、ある地域、あるいは地域システムについて政治学的、社会学的、文化学的、心理学的な研究が行われる。
 地域学からは、地方分権や過疎化など地方自治体や企業・NPOなどの政策に焦点を絞った地域政策学や、さまざまな国・地域の歴史、文化、思想、社会、政治、経済などを研究する地域文化学などが生まれている。

学際的要素の強い地域学部

 地域学、地域科学について教育研究を行う学部で、地域を環境、文化、歴史といった視点から研究して、地域における様々な問題を解決するのが目的。同時に、地域の再生や発展に貢献できる人材の養成も行っている。
 地域学部、地域科学部では、哲学、文学、法学、経済学、社会学、地理学などに加え、心理学、生物学、情報工学などによる学際的研究がフィールドワークと合わせて行われている。

すべての人々の幸福を追求する社会福祉学

 社会福祉とは、広い意味では、子どもや高齢者、障害のある人を含め、すべての人々に自立した生活の実現と「幸福な状態(well-being)」を保障するための公的制度や社会的サービスのことをいう。社会保障に関するあらゆる制度に加え、保健医療、労働、教育、住宅、防災、環境なども含まれる。狭い意味では、身体障害者や高齢者、経済的困窮者などに自立のための援助を行うことを指す。一般に大学の社会福祉学部(学科)では、狭義の社会福祉について、政策に関わる分野、対人援助に関わる分野の2領域に分けて教育・研究が行われている。
 政策に関わる分野の研究対象としては、地域福祉の理論と方法、福祉行財政と福祉計画、福祉サービスの組織と経営などがあり、対人援助に関わる分野の研究対象としては、高齢者に対する支援と介護保険制度、障害者に対する支援と障害者自立支援制度、児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度、低所得者に対する支援と生活保護制度などがある。

社会福祉学の領域の広がり

 社会福祉学部は、社会福祉について専門的に学ぶ学部で、社会福祉学部という名称のほか、保健福祉学部、医療福祉学部、看護福祉学部、人間福祉学部、教育福祉学部などさまざまな学部名称がある。学科やコースで社会福祉学が学べる大学も数多くあり、東洋大や同志社大などでは、社会学部の中に社会学科などとともに社会福祉学科が設置されている。龍谷大-社会では、これまでの地域福祉学科と臨床福祉学科を統合し、2016年に現代福祉学科を設置する。
 これらの学部・学科では、社会福祉士のほか、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士、養護教諭などの養成が行われている。年々進む高齢化と要介護人口の増大で、この分野、特に介護福祉士の需給は逼迫しているが、労働環境や報酬など解決しなければならない問題も数多い。社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験受験資格を得るには、こうした学部・学科で、老人・障害者・児童の各福祉論、社会保障論、公的扶助論、地域福祉論、介護概論などを学ぶとともに、社会福祉援助技術についての現場実習を行うことになる。
 また、現代の社会福祉において主流となっている「ノーマライゼーション」(障害者や高齢者が健常者と同じ「普通」の生活を送れるようにすること)の思想から、近年では障害者・高齢者だけでなく児童、困窮する若者への支援や自殺防止といった領域にも広がりを見せている。

学科の内容

社会学科

社会科学科 社会システム学科 社会文化学科 等

 社会学科は、社会学的な思考(理論)と方法(調査)を身につけるための専門教育を行う学科。人間と人間が作る社会・文化に焦点を当てたカリキュラムが設置されている。
 1年次に社会学概論や社会学史などで社会学の基礎を学び、その上で、都市社会学、家族社会学、環境社会学などの「社会系」科目、社会心理学、人間関係論、ジェンダー・セクシュアリティ論などの「人間系」科目、比較社会論や情報社会論などの「文化系」科目を学ぶ。
 教育の特色は、社会調査というフィールドワークをカリキュラムの核にすえていること。たとえば龍谷大の社会学科(社会学部)では、「社会調査実習」として3泊4日程度の現地実習を含むフィールドワークを実施。また、キャンパスのある滋賀県大津市では市民とともに地域再生を目指す取り組みを長年にわたって続けている。  

メディア学科

社新聞学科 マスコミュニケーション学科 メディア情報学科 等

 メディア(新聞・雑誌やテレビ・ラジオなどの情報媒体)について学ぶ学科。従来は主に新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどのマスメディアを研究対象としていたが、現在では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログといったインターネット媒体も重要な研究分野となっている。
 その学問分野は、メディアが大きな役割を占めている現代社会を社会学的手法で解き明かすのが目的。そのために、メディアそのものの研究とともに、ジャーナリストやエディターなどの養成も行われている。
 同志社大のメディア学科(社会学部)は、比較メディア論や映像情報学、メディア心理学などの多様な専門科目を設置、マスコミ出身教員などを配置して、メディア学基礎演習、メディア学実習、メディア学演習などを開講している。
 東洋大のメディアコミュニケーション学科(社会学部)では、メディア業界、IT業界などで活躍できる人材の養成を目指し、メディアコミュニケーションについての知識と技能を初級から上級まで順に身につけるカリキュラムを実施。「マスコミ文章論および実習」「メディア制作および実習」「情報システム構築論および実習」など実習科目も充実している。

観光学科

観光文化学科 観光ビジネス学科 観光経営学科 等

 現代の産業社会にとってますます重要性を増している観光について、その役割や可能性、あるべき姿などを研究する学科。
 1967年に日本の4年制大学で初めて社会学部に観光学科を設置(1998年に観光学部として独立)した立教大では、観光学科、交流文化学科の2学科を開設し、1年次に早期体験プログラムとして「スタディツアー」を国内外で実施するほか、ホテル・航空産業などのトップを講師に招いた実践的な授業を展開している。
 国立大で初めて観光学部を開設した和歌山大では、観光経営学科と地域再生学科を設置。地域・海外でのインターンシップを取り入れて、マネジメント能力を持つ人材、地域の再生に貢献できる人材の養成を行っている。

地域科学科

地域政策学科 地域文化学科 地域再生学科 等

 地域について、人文科学、社会科学、自然科学の知見を動員して研究を行う学科。地域という言葉は、外国語学部・国際文化学部などでは、ヨーロッパ、アジア、アフリカなどを指し「アジア地域研究」などと使われるのが一般的だが、地域学では、地方都市や農村地域など、一定の生活圏を指す場合が多い。
 鳥取大の地域学部は、地域政策、地域教育、地域文化、地域環境の4学科を設置。フィールドワーク、インターンシップを駆使して、地域の政治、文化、教育、環境に貢献できる人材の養成を行っている。

社会福祉学科

人間福祉学科 健康福祉学科 保健福祉学科 等

 社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、保育士、幼稚園教諭などの養成を行う学科。保育士など幼児・児童福祉の専門家養成を目的に、教育福祉学科、子ども福祉学科、児童福祉学科などの専門学科を設置している大学も多い。
 社会福祉学科では、1・2年次で、医学、心理学、社会学、栄養学、介護学、社会保障論、公衆衛生論などを幅広く学んだ上で、社会福祉発達史、社会福祉法制度、生活保護論などの理論科目、児童福祉、老人福祉、障害者福祉、地域福祉などの福祉学基幹科目を学ぶ。援助技術は、学内施設で実習を行った上で、老人保健施設などの学外施設で現場実習が行われる。

この記事は「螢雪時代(2016年9号)」より転載いたしました。

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