page_top

現在、アクセス集中により大学検索が繋がりにくい場合がありますのでご了承ください。

「生活科学部の魅力って何?」お茶の水女子大学 香西みどり先生

  • 【学部リサーチ 2016】 家政・生活科学・栄養学部系統の総合的研究

社会や環境とつながる人間生活の課題を
多面的に研究し、解決の道を探る

《国立》お茶の水女子大学 生活科学部 学部長
香西 みどり(かさい みどり)先生

福島県生まれ。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業。同大学院家政学研究科食物学専攻修了後、同大学生活科学部助手を経て2006年同大学教授。2016年より生活科学部長。調理科学を専門とする。著書に『調理がわかる物理・化学の基礎知識』(光生館)、監修に『マギーキッチンサイエンス―食材から食卓まで―』(共立出版)、『すがたをかえる食べもの』シリーズ(学研)など。

「理系の学問」としての食物学

 最初に、私が食物学の道に進んだきっかけについてお話ししたいと思います。私はもともと、受験生の頃から理系の学部学科を志望していたのですが、進路について色々調べるうちに“理系の学問”として食物学というものに出会いました。理系の学問でありながら生活に密着していて、自分にとっては身近に感じられたことがきっかけになってその方向に進学することになりました。当時、進学先を選ぶための情報としてはオープンキャンパスもなく、それこそ螢雪時代の記事くらいしかなかったわけですから、具体的な学びの内容は高校生の時にはわかりませんでしたが、実際に入学してみると実験や実習が多く、やはり理系の学科だなと実感したことを覚えています。この学科は理学部系の学部学科ではほとんど扱わない「食物」を取り上げること、また高校生まで習っていた「家庭科」に似ているようでいてより学問的であることを実感として知ったのもまた、入学してからです。
 私の場合は、高校生の頃にも料理をした経験がほとんどなく、家庭科でやった「調理実習」を含む形で調理科学という学問分野になっていることは大学に入ってから知りましたが、「料理が好き」という動機で食物栄養学科に入ってくる学生もいます。最近の受験生は主にオープンキャンパスや本学ホームページから全学あるいは学部学科の情報を見たり、あるいは螢雪時代のような雑誌や予備校等からも情報を得たりしていると思うのですが、やはり面接などをしていると情報をたくさん持っているな、ということを感じます。

変遷する「生活」の意味と
生活科学

 生活科学部の前身は家政学部であり、「家政学」は、かつては衣食住など家庭を運営するための学問と位置づけられていましたが、社会の移り変わりによってその役割も大きく変わってきました。そのことについて、まずはお茶の水女子大学開学の歴史を振り返りながらお話ししましょう。
 本学の前身である東京女子師範学校は1875年(明治8年)に御茶ノ水で開校した当初から、家政学に相当する科目を設置していました。当時の便覧に「住居」「飲食」「出納」「養生」「育児」といった科目名を見ることができます。その後何度かの改組や名称変更が行われ、1899年の「女子高等師範学校」時代には文科・理科に加えて「技芸科」を設置した3分科制をとるようになり、技芸科では家政学に関する科目がさらに充実します。1923年には関東大震災により校舎が焼失し、9年後の1932年、現在本学が所在する文京区大塚に再び開校しました。1939年には学内に「東京特設中等教員養成所」を設置。この養成所は戦没軍人の妻のうち中等学校教員を志す者のために開設されたもので、女性の自立を支援する機関としての側面も見せていました。そして第二次世界大戦後の1949年、新制大学としてお茶の水女子大学が設置されました。新制大学設置当初は文学部と理家政学部の2学部のみでしたが、理家政学部は1950年に理学部と家政学部に分離し、家政学部家政学科には児童学・食物学・被服学の3専攻が設置されました。家政学部が生活科学部に改組されたのはそれから実に42年後の1992年のことですが、この改組の背景には時代と社会の変化が大きく影響しています。開校から戦後までの歴史を振り返ってもわかるように、「家政学」は当時、衣食住といった個人の生活基盤が家庭に置かれていたため、もっぱら家庭生活を対象とするイメージの強い学問でした。しかし、現代社会の急激な変化により、個人の家庭生活は家庭に基盤を置くだけでなく、世界的規模の社会情勢や地球的規模の環境と大きく関わる方向に拡大しています。このように変化した生活に対しより多面的にアプローチする学問が生活科学であり、本学の家政学部が生活科学部へと改組した背景でもあるのです。

生活の質を上げるための
文理融合型アプローチ

 生活科学部で学ぶ学問は、人々の生活を取り巻く様々な課題・問題に取り組み解決をめざす、いわば「課題解決型」の学問と言うことができます。それは「生活者の視点」という立ち位置で生活の質の向上をはかるということでもあります。「生活を取り巻く課題・問題」のごく一例を挙げると、食の安全、省エネルギー、高齢者介護、障害者支援、子育て支援などがあります。従来の「家政学」という範疇では衣食住に関わるテーマが中心でしたが、その研究範囲は大きく広がっています。そうした諸課題を見出すには、「生活の質の再検討」ということが必要になります。いまの生活に満足してしまうのではなく、これらを敢えて見直すことで課題を発見し、生活の質の向上につなげていくということです。そして、そういった課題を解決するにあたって社会科学・人文科学・自然科学の3つの科学を応用するのが生活科学であり、この学問に対する期待は非常に大きいといえます。
 また、生活科学のもう一つの大きな特徴に「文理融合」ということがあります。本学の教員組織である「基幹研究院」は自然科学系・人間科学系・人文科学系の3つの系で構成されており、本学全学部の教員は、必ずこのどれかに属しています。例えば理学部の教員は自然科学系に属します。生活科学部の教員の所属はこれら3系のすべてにわたることからも、文理融合的な学問分野であることがわかると思います。本学生活科学部には3つの学科がありますが、そのうち食物栄養学科と人間・環境科学科は理系、人間生活学科は文系の学科と言えます。冒頭でお話しした私の進学に関するエピソードと同様に、受験生のアプローチもまた、文系・理系とさまざまです。
 続いて、生活科学部各学科の具体的な学びの学部長インタビュー生活科学部の魅力って何内容についてご説明します。
 まず食物栄養学科ですが、ひとことで表現すれば「食物とヒトを見つめるサイエンス」と言えます。この学科では化学・臨床医学・生活環境学等の基礎科目に始まり、食品に関する化学・製造・調理科学や栄養学を学びます。理系色の強い学科ですが、社会学的な内容も学ぶのが特徴です。管理栄養士養成課程を設置しており、卒業時には栄養士の資格とともに国家試験受験資格が得られます。
 人間・環境学科では、衣服、飲料水、建築・住環境や医療福祉など、私たちの生活を取り巻く幅広い課題について理工学的なアプローチで解決方法を探求する学科です。科目の内容も統計・物理・化学などの基礎科目から人間・環境に関する生理学・工学・物理学など多種多様です。卒業時には一級建築士国家試験受験資格を得られるカリキュラムが設置されています。また、平成28年度から大学院に設置される「生活工学共同専攻」は奈良女子大学との共同実施制度による専攻となります。
 人間生活学科は3学科の中で最も学生数が多く、発達臨床心理学・生活社会科学・生活文化学の3講座で構成されています。人間生活学科の教育と研究は、「人の心とその発達」「人と人との関係」「それらを取り巻く文化や社会」とそれらの相互関係を学ぶことに主眼を置いています。さらに、家庭科教員免許、学芸員、社会調査士、消費生活アドバイザーなど様々な資格が得られます。
 以上のような学問の修得を通じ、生活科学部では多くの資格を得ることができます。中でも、中学・高校の家庭科教員は、東京女子師範学校以来の歴史を持つ本学ならではの進路であり、私個人としても本学の卒業生がこの職業を通じて社会に貢献することを望ましく思っています。中学・高校の家庭科は衣・食・住生活から家族、消費、経済、環境など「生きる力」を育てるための幅広いテーマを含んだ総合科目です。受験との兼ね合いなどもあり、学校の授業ではその重要性が認識されにくいことも残念ながらあるようですが、この科目の大切さを知り、生きる力を子どもたちにきちんと伝えられる教師になってほしいと思います。本学では家庭科教員をめざす学生の数をもっと増やすために、キャリア支援プログラムも実施しています。

いろいろな物事を
結びつけて考える力を

 最後に、生活科学を学ぶことを考えている受験生の皆さんにお伝えしたいことがあります。どの学部・学科にも向き不向きはあるかと思いますが、生活科学部で学ぶ学生として、いろいろな物事を自分の考えの中で連結させることに積極的かつ意欲的な人は、特にこの学部では学びを豊かにすることができるような気がします。先ほどもご説明したように幅広い科目を学ぶ学部ですから、自分は数学だけ、化学だけというように一つの科目だけを追究するのではなく、いろいろな科目を履修する中で、それぞれを頭の中で結びつけることを通じて新たな課題を見出すこともできるからです。もちろん、生活科学部の中でも自分の所属する専門の学科や講座というものはありますが、そうした自分の立ち位置を明確にしたうえで、他の専門への興味・関心を忘れず、自分の専門とそれ以外の興味・関心事を連結させることは様々な課題を自分に身近なテーマとして捉えることでもあり、「生活者の視点」でものを考える際に大いに役立つはずです。本学生活科学部での学びを通じて、そうした力をつけてほしいと思っています。

この記事は「螢雪時代(2016年7月号)」より転載いたしました。

この記事で取り上げた大学

螢雪時代

螢雪時代・2月号

国公立大&難関私立大合格!のために読む雑誌

先輩合格者の「合格体験記」、ベテラン予備校講師の「科目別アドバイス」をはじめ、センター試験関連情報 や大学入試の分析&予想など、お役立ち情報満載の月刊誌。志望校・合格へあなたをサポートします。

「螢雪時代」のご案内は、こちら

【学部リサーチ 2016】 家政・生活科学・栄養学部系統の総合的研究 記事一覧

大学トレンド 記事一覧

“お茶の水女子大学”の関連記事一覧