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学科・専攻スタディ!家庭や衣食住など個人の生活をベースにして始まった学問で何を学ぶ?

  • 【学部リサーチ 2016】 家政・生活科学・栄養学部系統の総合的研究

家政・生活科学・栄養学部で何を学ぶ?

家庭や衣食住など個人の生活をベースにして始まった学問は、社会や環境とのかかわりを広げることでその役割を大きく変え、その対象となる領域も大きく広がっている。

「家政学」が意味するものの変化

 「家政学」という言葉は、古代ギリシャのOikonomika(Oikos:家+nomos:規範)に由来している。economics(経済学)の語源にもなったとされる歴史ある学問分野だが、大学教育の場に登場したのは19世紀になってからで、アメリカのアイオワ大学で1872年に行われたのが「家庭科」の最初の授業だった。その内容は料理・裁縫・家事・洗濯などで、以後、多くの大学でこうした内容を持つ家政学が専攻できるようになった。
 家政学は当初、家庭生活に“経済的意識”を持ち込むことで生活水準の向上を図ることが目的だった。そのため、家政学には英語でhome economics(1907年:アメリカ家政学会)という名称が当てられた。
 しかし、その後の女性の権利の伸長や経済の発展などにより、家政学は、人間の健全な成長・能力養成などにより“生活の質の向上”をはかろうとする学問として認知されるようになった。名称もHuman Ecology Sciences(人間環境科学)となり、1994年にはアメリカ家政学会がFamily and Consumer Sciences(家族・消費者科学、生活科学)と名称を変更した。現在では、その呼称が一般的となっている。  

社会の発展、そして家政学から生活科学へ

 一方、「家父長制」や「良妻賢母」の思想が強く、欧米よりさらに女性の社会的地位が低かった日本では、戦前までは裁縫や料理が「家事裁縫」として旧制の高等女学校(戦前の女子中等教育機関)などで教えられており、家政学が学問として浸透するのは第二次大戦後、新学制による大学が誕生してからのことである。
 1948年、初めて女子大学として認可された日本女子大は日本初の家政学部を設置、翌年には日本家政学会が発足した。
 高度成長が続く中、社会の都市化・情報化・国際化が加速度的に進み、家庭機能は低下し環境問題も頻発した。こうした状況の中で家政学も、食物や衣服をつくることから生活者の視点で持続可能な環境調和型社会を築くための総合科学へと大きく転換することになる。
 家政学が人間の生活環境や社会福祉などを対象とするものに変わったことで、学部や学科の名称も、1990年代以降に生活科学や生活環境学、人間環境学などに変えた大学が多い。

テーマは衣・食・住・教育

 生活科学は、社会生活が多様化・複雑化していく中で、生活者の視点から、社会と環境のあり方を見つめ直すことを目的としている。
 学部としての生活科学部は、1975年に大阪市立大に設置されたのが最初だ。その後、追随する大学は長い間なかったが、この分野で東西を代表するお茶の水女子大と奈良女子大が1992年、1993年に、相次いで生活科学部、生活環境学部に学部名称を変更したことで大きく状況が動いた。
 現在では、生活科学部を置く大学が13校、人間生活学部が10校、生活環境学部が3校で、合わせると26大学。これらに対し、日本女子大、共立女子大、大妻女子大など15大学は現在も家政学部の名称を維持している。
 生活科学、生活環境、人間生活、家政と、学部名称や学科・専攻の名称も異なるが、どの学部も、衣・食・住・教育をキーワードに、家庭、健康、環境、教育、福祉などの領域で起こるさまざまな問題に取り組んでいることでは共通している。


学科・専攻の内容と特色

家政学科・生活科学科

生活環境学科 人間生活学科 生活文化学科 等
 家政学部や生活科学部は、食物栄養、被服、住居、児童(子ども)などの学問分野で構成され、それらを学科・専攻として設置しているのが一般的だ。しかし、中にはそれらを細分化せず、人間の生活全体に関わるものとして総合的に学ぶ学科もある。それが家政学科や生活科学科、あるいは生活環境学科といった学科だ。
 こうした学科では、家庭生活を快適にするための衣・食・住に関する知識・技能などについて概略を学び、その上で、人間の日常生活に関わってくる政治、経済、環境、福祉、心理、文学などについて幅広く学んでいる。

栄養学科

管理栄養学科 健康栄養科学科 食物栄養学科 等
 学校や企業、病院、福祉施設などの給食現場で働く管理栄養士と、学校現場で児童・生徒の栄養指導・管理を行う栄養教諭などの養成を行う学科。管理栄養士養成課程のカリキュラムは、国家試験出題基準、日本栄養改善学会によるモデルコアカリキュラム(2009年)などに準拠したものが各大学で実施されているので、その内容を紹介する。
 1・2年次で学ぶのは教養科目と専門基礎分野。専門基礎は、「社会・環境(人間と生活)と健康」「人体の構造と機能、疾病の成り立ち」「食べ物と健康」という3領域からなり、これらのうち「食べ物と健康」では食品の成分、栄養的価値、安全性について、「人体の構造と機能、疾病の成り立ち」では、栄養に関係の深い疾患の成因、病態、診断、治療法などについて理解を深める。
 3・4年次では専門分野を学ぶ。3年次では、「基礎栄養学」「応用栄養学」「臨床栄養学」「公衆栄養学」「栄養教育論」「給食経営管理論」などの科目で栄養専門家としての実践的なマネジメント能力を身につけ、4年次では卒業研究と保健所、病院、学校(栄養教諭)などでの臨地実習が行われる。

食物学科

食品科学科 食環境科学科 食文化学科 等
 人間の身体、食品、生活文化の3分野を総合的に学ぶことで食品についての幅広い知識を得ることを目的とした学科。管理栄養士養成課程と違い、食品や飲料水メーカーなどで製品開発などにあたる「食のジェネラリスト」を養成することを目的としている。
 専門の基礎として、栄養学、生化学、生理学、病理学などを学び、食べた食物が消化・吸収されることで栄養素が体内に取り入れられて、筋肉、臓器、血液、骨格などを形成し、さらに体温保持や身体運動のエネルギーとなることを理解する。また、臨床栄養学、公衆衛生学、食品衛生学、基礎医学などの医学系科目では、食生活で病気を予防したり治したりするための理論を修得する。
 食品学、食品化学、食品分析学、食品加工貯蔵学などの科目では、食品の科学的・物理的特性、食品の改良や加工、新しい食品の開発、食品保存に役立つ知識などについて学ぶ。また、フードサービス、食文化学、食糧経済学などの科目も置かれ、これらでは、人間の文化的・社会的側面と食物との関わりについて学ぶ。料理を実際に作る調理実習も行われる。

被服学科

服飾学科 服飾造形学科 服飾美術学科 等
 「衣・食・住」のうち、「衣」に関わる分野を教育・研究する学科。わが国の多くの家政系大学・学部が裁縫の技術修得が出発点だったことからもわかるように、家政学分野でもっとも古い歴史をもつ学問分野だ。
 被服の材料はかつて絹や木綿、麻などの自然繊維、その後発達した人工繊維などに限られていたが、現在では、生分解性繊維、スーパー繊維、複合繊維、ナノファイバーなどが次々と開発され、材料としての繊維のイメージは大きく変わっている。また、エレクトロニクス技術やCG技術、情報通信技術の発達で、被服の製造技術や情報収集の仕方も大きく様変わりしている。これらについて専門的な学びを行うのが被服学科だ。
 被服学科では、基礎的な専門科目として、被服の歴史、素材、加工、染色、管理、制作、着装、流通などについて学んだ後、自然、人文・社会科学系からなる専門分野について学ぶ。
 自然科学系では、高分子化学、被服材料性能学、被服人間工学、被服機構学、被服機能学、被服衛生学、界面化学、衣環境学、被服設計学、色彩学などを、人文・社会科学系では、被服文化史、服飾デザイン、被服心理学、服飾美学、流行論、ファッション企画論などを学んでいく。

住居学科

住環境学科 住環境デザイン学科 建築デザイン学科 等
 住居学は、家庭生活を支える住居を、どう住み心地のよいものにするか、どう使いやすくするかなどを研究する学問。アパートや団地などの集合住宅の増加・発達に伴って建築学と結びつき、建築士やインテリアデザイナーなどを養成する実践的な学問となっている。単に使いやすいだけの住宅を造るのではなく、必要な機能を備えた住宅を、必要な人に、必要な場所に、適切な価格で供給し、それらにより良好な住環境を形成することが、住居学科の目標となっている。
 この学科では、住居はもちろん道具やインテリアなどの設計製図を1年次から4年次まで継続して学ぶ。現在、設計製図はCAD(建築製図用ソフト)使用が一般化しており、これをマスターすることも必須だ。
 住居学科の専門科目は、設計製図という実習科目のほか、構造力学、構造計画、材料施工などの工法・構造系科目、住環境工学、建築設備論、住居衛生学などの環境工学系科目、住居史、デザイン史などの歴史・デザイン系科目、住生活論、住居管理論、住居計画などの住生活・住居計画系科目からなっている。

児童学科

こども学科 こども発達学科 児童保育学科 等
 児童学は、子どもの心と身体の発達を総合的にとらえ、保育や教育をより良いものにしていくにはどうすればいいかを研究する学問。現在、児童学の領域は、保育士や幼稚園教諭を養成する「保育・幼児教育」の分野だけでなく、「児童心理」、「児童福祉」、「児童文化」などに広がっており、これらについて実習を含めて幅広く実践的に学ぶのがこの学科の特色。これらの学問領域のうち「保育・幼児教育」では、保育士、幼稚園教諭養成のために実習を多用した実践教育を実施、子どもの世界に日々起こるさまざまな問題に対処できる問題解決能力を身につける。
 「児童心理」では、心理学の基礎理論と心理学的な実験・調査方法を学び、子どもの発達段階に応じた心の変化や、日常のいろいろな場面における心理と行動などについて理解を深める。また、「児童福祉」の領域では、社会福祉の基本を学んだ上で、さまざまな問題を抱える児童福祉の現状を、理念・歴史・行政、養護、教育などの面から多面的に学んでいく。


取得可能な主な資格

■食物・栄養学分野

●管理栄養士

 病院やリハビリ施設、社会福祉施設などで患者のための栄養指導を行ったり、学校給食や企業などの食事提供施設で公衆衛生面からの管理を行ったり、健康の増進や病気の予防のための栄養指導を行ったりするのが仕事。
 最近ではとくに病院などで、患者の病気回復、病気予防のための献立づくり、栄養指導などを行うNST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)が組織され、管理栄養士はその中心的役割を果たすようになっている。

●フードスペシャリスト

 安全・安心な食を消費者に提案する食の専門職。食物学科や食品科学科など、食品系学科で取得できる。栄養や衛生に関する基礎知識を身につけたうえで、調理学や食物学、食品の流通やマーケティングなど広範な知識が必要。2016年5月現在、全国で72の大学が養成機関として認定されている。

■住居学分野

●建築士

 住居の建築・設計を行う専門家。建築士資格には、木造、一級、二級の3つの区分がある。木造建築士は、高さ9メートル、二級建築士は、高さ13メートル以下などの建築上の制限があるが、一級建築士は、こうした制限なく建築物を作ることができる。建設業などで働くほか、建築事務所、設計事務所などで活躍している。

●インテリアプランナー

 一般住宅やオフィス、商業施設などで用途やクライアントの嗜好に応じたインテリアのデザイン(空間設計)を行う専門家。インテリア(内装)の企画、設計、工事監理までを総合的にプロデュースするのが仕事。インテリアデザイン事務所のほか、建築設計事務所、ゼネコンなど、活躍する場は多い。

■被服学分野

●衣料管理士(テキスタイルアドバイザー)

 テキスタイルアドバイザー(TA)は、織物や布地(テキスタイル)に関する専門知識を生かして、アパレル製品の企画・設計・販売・品質保証をするほか、消費者が安心して買えるよう商品の説明などを行ったりする。また、機能性や手入れのしやすさ、着心地などに関する消費者側のニーズを製品に反映させるのもTAの大きな役目だ。2016年5月現在、1級・2級と合わせて36校が養成大学に認定されている。

■児童学分野

●保育士

 保育所などで乳幼児の保育をするほか、保護者に対して保育に関する指導を行うのが仕事。保育所が主な働き場所だが、児童養護施設や知的障害児施設、肢体不自由児施設、乳児院などで働くケ―スもある。児童福祉法の改正により、保育士として働くには試験に合格し都道府県の登録簿に登録しなくてはならなくなった。
 都市部を中心とする待機児童の問題や、保育所がないために働けない母親が数多くいることなどから、保育所の増設、保育士の増員は緊急課題となっている。2015年4月から実施されている「子ども・子育て新制度」は、こうした問題の解決に向けて取り組むものだ。

●幼稚園教諭

 公立・私立の幼稚園で幼児(3歳から小学校就学前まで)の教育を行うのが仕事。園児の健康チェック、音楽、絵画、遊戯の指導などが主な仕事内容で、保育時間は通常午前中のみ4時間だが、保護者の仕事に合わせて預かり保育を実施している幼稚園も多い。また、近年では保育園と幼稚園の機能を併せ持った「認定こども園」が増えており、そこで働くには保育士と幼稚園教諭の両方の資格を持っていることが望ましいとされている。

この記事は「螢雪時代(2016年7月号)」より転載いたしました。

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