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学類長メッセージ「看護学類の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2016】 看護・医療・保健学部系統の総合的研究
  • [2016/5/20]

患者さんに寄り添い、生を全うできるよう身体的・精神的・社会的な支援を行う

《国立》筑波大学 看護学類長 
森 千鶴(もり ちづる)先生

国立病院医療センター附属看護専門学校卒業、日本大学法学部法律学科卒業、筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻リハビリテーションコース修了。博士(心身障害学)。山梨医科大学医学部看護学科講師、助教授、教授から筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。2016年から看護学類長。専門は精神看護学で、「これからの精神看護学」(ピラールプレス社)など多数の著書がある。

出会いを通して、生きることの意味を考えられるすばらしい仕事

 看護とは、日本看護協会の定義によると、あらゆる年代の個人、家族、集団、地域社会を対象とし、対象者が本来もつ自然治癒力を発揮しやすい環境を整え、健康の保持増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、生涯を通して、その人らしく生を全うすることができるよう身体的・精神的・社会的に支援することとされます。

 看護とは、その人らしく生きることを支援し、対象者それぞれが自己実現できるように援助することであり、看護師は、看護の対象者の人格を尊重し、対象者が持っている希望や価値観を知り、その人が持てる力を最大限に発揮できるように支援する職業です。

 また、看護師には、看護の対象者が環境に適応するために、自ら考え、感じ、行動する存在であることを理解するとともに、看護の対象者が自己決定できるように健康生活について学習の機会を設けたり、日常生活を支えたりすることが求められます。対象者と協働しながらそのペースを乱さないようにすることが大切です。

 世間では看護や介護の仕事は3K(汚い・きつい・危険)と言われていますが、これは看護が患者さんなどに対して与えるだけの仕事と考えられがちなことから起こる誤解です。実際は、看護の実践を通して患者さんから与えられるものが大きく、その出会いを通して、人が生きることの意味を考え、また自分自身の人生を考えることができるすばらしい仕事です。

看護とは、患者さんの生に正面から向き合うこと

 患者さんとの出会いを通して、人間的に大きく成長できた私自身の例を紹介したいと思います。

 まだ看護学生だったころ受け持たせていただいた80代の男性で、人工肛門をつける手術を受けた患者さんがいました。ある日家族の申し出で自宅に一晩滞在できることになりました。「楽しんでいらっしゃい」と送り出したのもつかの間、病院に戻られたときは悲しそうな顔でした。話をうかがうと、遺産相続を迫られたとのこと。最後にぽつりと言われた「外泊などしなければ良かった。あなたにあげればよかった」という言葉が胸に突き刺さるようでした。

 看護師と患者さんとの出会いは、患者さんの長い人生からすれば、ほんの少しの時間だけです。それでも患者さんの気持ちに寄り添うことができれば、患者さんの気持ちを救うことができるということを知りました。

 社会復帰施設で20代後半の統合失調症の患者さんを受け持ったこともあります。

 その患者さんは、学校に通うことができなかったばかりか、洗濯物を干したり、ご飯を炊いたりしたこともありません。社会復帰するためにはそれらができなければなりません。患者さんと話し合って目標を定め、一つずつクリアしていきました。他の人より時間はかかりましたが、アルバイトをしながら単身生活ができるまでになり、退所することができました。

 患者さんが単身生活をし始め、その最初のお正月に年賀状をいただいたとき、その方の可能性を信じてお互いに努力したことが報われたと感じました。

求められる国際性、専門性コミュニケーション能力

 今、看護に求められていることは大きく3つあると思います。そのひとつは、国際性です。筑波大学では世界で活躍できる人材となるために、国際感覚を身につけること、異文化を理解すること、その中で自分の意見を伝えられる発信力を養うことを重視しています。

 また、入院期間が短くなり、在宅で療養される患者さんが増えています。患者さんが地域生活をしていくには訪問看護師、保健師、地域の医師や作業療法士、地域での関連機関などとの連携が必要です。連携をするには、コミュニケーション力と判断力が欠かせません。自分の考えていることを自分のことばで伝えること、正しい判断をするために確実な知識とエビデンスのある技術が必要です。

 看護師には、どの診療科でも対応できるようなジェネラリストになることが期待されていますが、本来は医師と同様に専門性を持つことが必要です。専門性を身につけるためには探究心が何より欠かせません。

看護学類の教育目標 専門科目の学び

 看護学は、実践の科学であり、応用の学問です。看護は、その人らしく生きることを支援すること、対象者それぞれが自己実現できるように健康の側面から援助することです。人が生まれてから死を迎えるまでの人生や生活の全般、他者や家族との関係、人間の身体の仕組みや病気について幅広く理解することが必要です。その上で、目の前にいる個々の対象者に合わせて考えることが必要です。

 筑波大学の看護学類は、以下の6つを教育の目標としています。
①科学性と共感性を基盤とした看護学の専門能力を身につける。
②多職種チームの一員であることを知る。
③人々の健康生活の向上や改善を行う。「看護学の探究」発表会の様子
④広く人類のウエルビーイングに貢献できる。
⑤それぞれの専門分野で指導的役割を担う。
⑥世界で活躍できる人材の育成を目指す。

 1・2年次の基礎科目では、全学の共通科目である「総合科目」、語学などで、専門職業人になるため、あるいは、人間としての成長に必要な教養を学修します。2・3年次の専門基礎科目は、「心と行動の科学」「人間と生命科学」「生活支援学」という3つの科目群からなり、そのうち「心と行動の科学」では、人が相互交流の中で生じる心の動きを理解し、人間関係に関わる知識・技術、自己表現の方法など対人関係能力の向上を目指します。「人間と生命科学」では、人間の構造と機能、免疫や病態などを科学的に理解し、看護を行う基礎的な知識を獲得します。また、「生活支援学」では、人間を取り巻く環境、保健、医療制度など広く社会を理解し、生活する人間を見つめます。4 年次には、看護の専門科目の集大成として、また、病院などでの看護実習に臨むために、OSCE(Objective StructuredClinical Examination:客観的臨床能力評価)を実施します。

米国セミナー、チーム医療体験少人数による「看護学の探究」ゼミ

 先に、看護には国際性、コミュニケーション能力、専門性が求められていると述べましたが、それらを実現するために筑波大学看護学類では次のような取り組みを行っています。

 国際性を身につけるために行っているのが 米国イリノイ大学での夏季研修セミナーです。4年次の希望者が対象で、病院でのシャドーイング実習を含む8週間の研修です。また、交流協定を結んでいる米国南インディアナ大学には2 年間の長期留学が可能です。さらに、JapanExpert Programによって、海外から日本のヘルスケアシステムを学習するために筑波大学に留学する学生と交流し、異文化を理解しグローバルな視点で看護を探求するプログラムも平成28 年度から導入する予定です。

 コミュニケーション力の育成では、筑波大学の医学類、医療科学類の学生に加え、東京理科大学の薬学部の学生と一緒に小グループをつくり、患者・家族のケアに多職種が関わるケースシナリオをもとに、ケースの問題点、解決策について討論しながら進める「専門職種間のPBLチュートリアルも実施しています。

 専門性については、4年次に設置されている「看護学の探究」をあげることができます。これは、「国際看護」、「看護実践・ケアシステム開発」、「精神の健康・障害支援」など7つの専門分野のうちひとつを選択、1~2名の学生がひとりの教員から専門指導を受ける授業です。4年終了時には、ポスターを作成、発表会を行います。

新しい保健医療福祉を支える人材を迎えたい

 筑波大学は、関東の名山、筑波山のふもとにある広大な敷地をもつ緑豊かな大学です。東京・秋葉原から45分と首都圏へのアクセスも抜群です。医学部(医学類)は東京教育大学から筑波大学になり、現在の地に設置された時に新設されましたが、看護学類は、本年3月に卒業した学生が第10期生という筑波大学でもっとも新しい学類です。

 筑波大学は総合大学のため、他学類の学生と一緒に受ける「総合科目」などの授業もあり、学類を超えた横のつながりもあります。研究大学でもあるため、図書館の充実もすばらしく、毎年、多くの卒業生が専門看護師、教育・研究者を目ざして大学院看護科学専攻に入学しています。

 豊かな自然環境の中に身を置いて、国際性、コミュニケーション能力、高度な専門性を身につけ、新しい保健医療福祉を支えたいという意欲あふれる学生を私たちは待っています。

この記事は「蛍雪時代(2015年6月号)」より転載いたしました。

この記事で取り上げた大学

蛍雪時代

螢雪時代・7月号

国公立大&難関私立大合格!のために読む雑誌

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