page_top

学部長メッセージ「文化構想学部・文学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2016】文・人文・外国語学部系統
  • [2016/4/19]

価値観対価値観の衝突を超えて、新たな視点を生み出す力を2つの学部が育てていく

《私立》早稲田大学 文化構想学部長
源 貴志(みなもと たかし)先生

早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士後期課程ロシア文学専攻を経て、1991年同大学専任講師。現在同大学教授。2014年に文化構想学部長に就任。専門はロシア19世紀文学、日露文化交流史、ロシア出版文化。著書に『基礎徹底マスター ロシア語練習ドリル』(NHK出版)、訳書に『書物の話』(ニコライ・スミルノフ=ソコリスキイ著、図書出版社)などがある。

《私立》早稲田大学 文学部長
越川房子(こしかわ ふさこ)先生

早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士後期課程心理学専攻を経て臨床心理士として精神科クリニックで勤務後、早稲田大学専任講師、助教授、教授。2014年に同大学文学学術院長および文学部長に就任。専門は臨床心理学、パーソナリティ心理学、音楽心理学で、日本マインドフルネス学会理事長も務める。著書に『ココロが軽くなるエクササイズ』(東京書籍)など。
(撮影:shimizuchieko)

人文系の学問が社会に対して持つ力

  近年、社会の価値観が経済的側面に重点を置くような傾向により、人文学はある種の“危機”にあると言われます。しかし、21世紀に入っても世界で続く紛争などの諸問題は科学技術や経済の力では解決できていません。人々の争いの原因は何かと言えば、結局のところは“価値観の違い”ということになりますが、価値観の違う人同士がどうすれば共存できるか、という問題はやはり人文学が背負うべき問題のように思います。

 越川 実は、今年の入学式でお話をしていただく半導体メーカー「インテル」日本法人代表取締役社長の江田麻季子さんは第一文学部(2007年の文化構想学部・文学部の設置に伴い募集停止、両学部の前身)のご出身です。その江田さんが以前「理工学でも経済学でも法学でもなく、人文学をやっていたからこそインテルの社長である自分がある」ということをおっしゃっていました。それはどういうことかというと、他の人と違う価値観に立てるということ、また、理工学や経済、法学などそれぞれの専門的な考え方を俯瞰、すなわち一つ上の視点から見渡すことができる視座を身につけられたということであり、人文学の多様な領域を学び触れることによって得たことが力になっている、ということでした。例えば経済学の専門家同士が経済の問題について討論しあっても、そこに俯瞰の視点は出てきません。理工系の技術者同士でも同じことが言えます。しかし、そこに人文学的な視点が入り込むことで、はじめてそれぞれの考え方をつなぎ俯瞰することができるのです。われわれは社会でもそういう役割を担っていくのだろうと思いますし、昨今の社会情勢が経済的価値観を強調し、いわゆる「実学」や理系の学問を重視すればするほど、それに対して別な角度から全体を見渡す力はどうしても求められてくるはずです。

  いま越川先生がおっしゃったように、理系や経済・法律系の専門家が持つ問題意識を俯瞰できる立場こそ人文学と言えます。先ほど触れた“価値観の違い”は“文化の違い”と表現することもできますが、グローバル化の時代にあって、これらの異なる価値観や文化には必ず衝突が起きます。そうした衝突の中から譲り合える点や新しい価値を生み出すという能力において、人文学は最も強い問題解決力を持っていると考えています。ですから、いわゆる「グローバル・リーダー」と呼ばれる人々の中にこそ、そうした意識を持った人が少しでも増えていかなければならないと思います。

“幅広さ”と“専門性”―2つの学部が同居する意義

  文化構想学部と文学部の違いについてお話しします。文学部は伝統的な人文学の流れをくみ、各国文学や哲学、心理学、歴史学などの専門コース分類で構成されています。これに対して、「幅広く学ぶ」のが文化構想学部の特徴です。

 「専門性」と「幅広い学び」についてもう少し掘り下げてみます。

 私の専門であるロシア文学に例を取ると、ロシア語を学び、さらにロシア語で書物を読むという知識と能力が学部生の4年間だけで「できる」という域に達するかというと、難しいというのが正直なところです。その分野で専門性を身に付けるのであれば、やはり大学院への進学を視野に入れなければなりません。一方で、ロシア文学に関心を持ったからには、学部から社会に出るまでの4年間のうちにロシア文学について語れるようになりたいという学ぶ側のニーズもあるわけです。しかし、ロシア文学について自分なりの論を語るには、実はロシア語とロシアのことだけ知っていればいいというわけではありません。例えばトルストイやドストエフスキーのような19世紀ロシア文学について学ぶならばヨーロッパ史やキリスト教について知っていなければなりませんし、ヨーロッパ各国の文学はては日本文学、さらに登場人物の心情について突き詰めるなら心理学―と、幅広い物事に関心を持ち、総合的に考えることなくしては“自分なりの論”をつくることはできないのです。

 各専門領域への掘り下げ方という点では文学部と比べてやや浅いものの、学問領域の壁を超えた幅広く総合的な学びへの対応についてはすでに90年代から第一文学部・第二文学部において試みられてきましたが、その方向性を学部カリキュラムとしてさらに確立したのが現在の文化構想学部ということになります。

 越川 先ほどお話しした“社会での役割”というテーマにも関連しますが、文学部としてはそれぞれの専門の方法論、文化や人間理解を深く究めて発展させようという方向性がありつつ、一方「社会に対して発言していく」には現代社会の課題に対し、これまでわれわれが継承してきたさまざまな学問の蓄積を適用・応用していく必要がありますが、その部分の役割をまさに文化構想学部が“構想”の名のもとに担っているのです。そしてその“構想”の実現を学問的に裏付けて牽引するところを文学部が担っているとといえます。これら2つの学部が同じキャンパスに存在しているということに非常に重要な意味があるのです。この同じキャンパスで、2つの学部生同士が700を超える共通科目を受講しながら相互交流しているという環境は、世界的に見ても早稲田大学だけではないでしょうか。世界的規模のアカデミックな実験環境とも表現できますが、この環境を両学部の学生には十二分に謳歌してほしいですし、ここで学んだことを社会にぜひ還元してほしいと強く願います。

  共通科目の授業を両学部の学生が同じ教室で受ける場面も日常的にたくさんありますから、そうした機会に、例えば文化構想学部生が文学部生を見て「もっと専門性を高めなければ」と思ったり、逆に文学部生が「もっと幅広い視点に立たなければ」と意識したりというような気づきが生まれることもあります。それもまた、2つの学部が並立することの強みであると感じています。

変わらぬ“たくましさ”と時代が変える学びの形

 越川 文化構想学部・文学部を卒業した学生が社会に出て強さを発揮するのは、価値観の違いを超えるためのトレーニングを学生時代の4年間に否応なく受けるからです。社会に出て多少難しい人にあたってもぜんぜん平気だと言います。「学生のときに慣れちゃったから」と(笑)。たくましいものですよ。

  単なるケンカではない、人と人、価値観と価値観をぶつけ合い共通の視点を手に入れていくという、そういう場にこのキャンパスはなり得ていると思いますし、社会にとって役に立つか立たないかという観点で言うならば、そこで身につけられる力は大いに役立っているのではないでしょうか。

 一方、時代の変化に応じ、私たち教える側にとっても課題となっていることは常に出てきます。例えば今の学生はスマートフォン世代となっていますが、まず驚くのはパソコンが苦手だということ。キーボードが打てないんですね。その代わりにスマホでの文字入力は驚くほど速くて、それでレポートを提出してくる学生もいます。彼らは、1回あたりの文字数は少ないけれど、合計すれば相当な量のテキストを日常的に読み書きしているわけで、考え(テキスト)を世の中に発信する能力という意味ではある種の可能性を持っていると考えています。ただ、本を読む、厚い書物にじっくり取り組むという習慣が身についていないため、知識としてのインプットに対して表面的なアウトプットが過剰な傾向があります。その点に大学教育の中でどう対応していくかということも私たち教員にとって新たな課題です。

迷っている人こそ来てほしい

 越川 最後に受験生のみなさんにお伝えしたいことを。文化構想学部・文学部とも学部それぞれにカラーが異なりますが、何か熱中するものを見つけたい人、すでに熱中するものを持っている人、どちらも大歓迎です。

  文化構想学部は先ほども述べたように幅広いプログラムを用意しています。この情報過多の時代、何かクリエイティブなことをしたいけれど迷ってしまって…という受験生は多いと思いますが、そういう人こそ来てほしいと思います。

 また、2017年には、文学部に中東・イスラーム研究コース、文化構想学部には英語の授業のみで卒業単位を取得できる国際日本文化論プログラムを新設します。現状でも文学・人文学の大半の領域をカバーする両学部ですが、さらに時代に対応した学びを提供することとなります。

この記事は「蛍雪時代(2016年5月号)」より転載いたしました。

この記事で取り上げた大学

蛍雪時代

螢雪時代・7月号

国公立大&難関私立大合格!のために読む雑誌

先輩合格者の「合格体験記」、ベテラン予備校講師の「科目別アドバイス」をはじめ、センター試験関連情報 や大学入試の分析&予想など、お役立ち情報満載の月刊誌。志望校・合格へあなたをサポートします。

「螢雪時代」のご案内は、こちら

【学部リサーチ 2016】文・人文・外国語学部系統 記事一覧

記事一覧に戻る

大学&入試の基礎知識 記事一覧

大学&入試の基礎知識 記事一覧に戻る

“早稲田大学”の関連記事一覧

今月の入試対策

supported by螢雪時代

大学を比べる・決める

My クリップリスト

0大学 0学部 クリップ中