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学部長メッセージ「歯学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2016】 医・歯・薬学部系統
  • [2016/4/12]

“Dentistry is a Work of Love”の考えのもと、国際性・独創性あふれる歯科医師・研究者を養成

《国立》北海道大学 歯学部 学部長
横山敦郎(よこやま あつろう)先生

1958年神奈川県生まれ。神奈川県立平塚江南高校、北海道大学歯学部、同大学院歯学研究科博士課程修了。歯学博士。北海道大学歯学部助手、講師、教授を経て2014年4月歯学部長・歯学研究科長。専門は歯科補綴学で、『パーシャルデンチャーテクニック』(医歯薬出版)『ナノ材料のリスク評価と安全対策-生体・環境への影響、安全対策・国内外動向-』(フロンティア出版)など著書多数。

歯科医学の現在と未来

 現在わが国の歯科医療の分野では、子どものう蝕(虫歯)の減少、う蝕治療や歯周病治療の進歩による抜歯の減少など、大きな変化が起きています。これは、1989年に厚生労働省(当時厚生省)と日本歯科医師会が始めた80歳になっても20本以上自分の歯を保とうという「8020(ハチマルニイマル)」という運動が大きく寄与しています。歯が20本残っていれば食生活はほぼ満足でき、食生活が良ければ健康寿命が延びるからです。

 こうした運動の成果もあって、80歳で20本以上自分の歯を残している人は、昭和63年の7%から平成23年の37%へと飛躍的に増加し、50%に達するのも時間の問題とされています。こうした疾病構造の変化が起こっている状況で言えるのは、削ったり、抜いたりするだけの歯科医療は大きく減少していくであろうということです。

 しかし、これを補って余りある領域が大きく広がっています。それは高齢者や有病者、障がい者などに対する歯科治療であり、がんの治療や臓器移植を受けた患者さんに対する歯科医療です。健康な歯を持つ人々に対する予防のための口腔ケアもますます重要になるはずです。口腔ケアも含め、歯科医師の活躍する領域が今後大きく広がることは間違いありません。

 現在、歯科医療では、高齢者であふれている一般病院と異なって、75歳以上の高齢者の受診率は低いままです。これは歯科診療所に通院できない高齢の施設入所者や在宅療養者が多いためと考えられます。これからの歯科医療は、こうした高齢者に対する施設・在宅診療と、多くの歯を残している高齢者の歯の定期健診・メンテナンス処置が重要な分野となるはずです。

 また、有病者や障がい者など、これまで十分な歯科医療を受けることができなかった人々への歯科治療も、歯科材料や治療技術の発達で日々進歩しています。がんの治療や臓器の移植を受け、全身的な免疫力が低下し、口内炎や口腔粘膜炎など様々な口腔症状が出るため、食べ物を噛んだり、飲み込んだりすることが辛くなっている患者さんには、歯科医師による口腔ケア(口腔内の清掃指導や疼痛とうつう軽減処置)が有効であることが明らかとなっています。北大病院が平成28年4月に開設する「口腔ケア連携センター」はその中心となる施設です。

 歯科医学を志す皆さんには、現在歯科医学には大きなフロンティアが広がっているということをぜひ知っておいてほしいと思います。

歯学とは何を学ぶ学問か

 歯学(歯科医学)は、歯そのものだけでなく歯肉などの歯の周囲の組織、舌・口唇・顎骨がっこつ・粘膜・筋肉などの口腔・顎・顔面に関する形態や機能などについて学んだうえで、それらに生ずる疾患や障害について診断・治療・予防を学ぶ学問です。また、治療に使う歯科材料や技術について学び、さらに全身と口腔顎顔面領域との関係についても学んでいきます。

 医学・医学部が、ヒトの生死(命)を対象とし、生命を守ることと維持することを目的としているのに対し、歯学・歯学部は、ヒトの健康に寄与することによりQOL(Quality of Life:生活の質)の維持、向上をはかることを目的とするのが両者の大きな違いです。

 北大の前身である札幌農学校の2期生であり、哲学者、宗教家として日本の近代思想史に大きな影響を与えた内村鑑三は“Dentistry is aWork of Love”と言っていますが、歯学の特徴をよく言い表している言葉です。

 歯科医学は、自然治癒しない歯が治療対象の一部であり、体の中で最も硬い組織である歯を修復するための特殊な材料や技術を必要とするため、生物学的な基盤だけでなく、材料・技術を含めた工学的基盤が必要です。

 生物学的な面としては、再生医療や遺伝子治療などがあり、工学的な面としては歯科材料をはじめとする生体材料(バイオマテリアル)、切削技術、失われた組織に対してそれを人工的に補う代替物をつくる技術(テクノロジー)、バイオメカニクス(力学的解析)などがあります。

 歯科医学には、これまで述べたように医学とは違う様々な特色がありますが、私が一番すばらしいと感じているのは、患者さんの痛みや苦しみをその場で取り除くことができる点です。

 先に“Dentistry is a Work of Love“という内村鑑三のことばを紹介しましたが、これは、内村鑑三が旅行の途中で歯痛に苦しんだ際に歯科医の治療を受け苦痛から解放された喜びを言葉にしたものです。痛みを取り除くことができたことで、治療後の患者さんからお礼を言われる、これが歯科医師の最大の喜びかも知れません。

1年次に全学教育科目 新渡戸カレッジも開講

 北大歯学部は、北海道で唯一の国立大学歯学部として、新たな分野を切り拓くことのできるフロンティア精神、患者中心の思考ができる豊かな人間性と高いコミュニケーション能力と国際性を養うことで、世界レベルの研究を遂行できる独創的な研究者、高度な専門知識と技術を備えた歯科医師の養成を目指しています。

 有病者・障がい者に対する治療、口唇口蓋裂の治療など、一般病院では困難な治療への取り組みや臓器移植等の周術期しゅうじゅつきにおける口腔管理(口腔ケア)をはじめとした医科と歯科の連携強化等の取り組みを通じて、広大な北海道における高度歯科医療の中核的役割を担うとともに、現職歯科医師の生涯学習の拠点、地域に密着した知的基盤としての役割をも果たしています。

 北大歯学部は、他大学の歯学部同様、1年次に一般教育科目、2・3年次に専門基礎科目、3・4年次に専門臨床科目、4年次修了時点で共用試験(CBT、OSCE)を受験した上で5・6年次の臨床実習を受けるというカリキュラムを導入するほか、特色あるカリキュラムをいくつか取り入れています。

 北大歯学部に入学した1年生は、他学部の学生との混合クラスで1年間、外国語科目や主題別科目などで構成される教養科目、数学・理科・実験系科目などで構成される基礎科目を「全学教育科目」として学びます。

 また、グローバル社会で活躍できる人材を養成する特別プログラム「新渡戸カレッジ」にも応募(TOEFL-iBT 61以上)でき、合格すると、英語で学ぶ授業や留学支援英語、海外留学などのカリキュラムを、国際的に活躍している同窓生のフェローのサポートのもと履修し、多文化状況の下での課題解決力、チームワーク・リーダーシップ力を身につけることができます。

 12学部をもつ総合大学の資源を生かし、他学部学生といっしょに学ぶことのできる全学教育科目、新渡戸カレッジは、歯学部学生のみならず北大の学生にとってももっとも魅力あるプログラムと言えます。

ECE、LCE、全人教育演習

 専門教育は2年次に開始しますが、その冒頭で行われるのが、ECE(Early Clinical Exposure)と呼ばれる「早期臨床体験実習」です。専門分野を学ぶにあたって開業歯科医院、あるいは総合病院歯科で行われる見学実習ですが、これらを通して、歯科医学を学ぶ方向性を明確にし動機付けを鮮明にします。

 3年次・4年次では臨床系専門科目の本格履修が行われますが、この2年間を通して行われるのが、「全人教育演習」という演習科目です。教授を含めた教員1名と4?5名の学生によるディスカッション形式の授業で、自由な雰囲気の中で歯科医学のみならず人間的成長を目指した様々なテーマ・学問が取り上げられます。

 5・6年次では本格的な臨床実習が行われますが、その開始前に取り組むのがLCE(LateClinical Exposure)と呼ばれる「後期臨床体験実習」です。LCEは、開業歯科または病院歯科における見学実習で、実際に歯科治療に参画するための指針となる実習です。

 また、5・6年次では、学内での臨床実習・学外での実習に加え、研究マインドを持った歯科医、さらに歯科研究者を目指した「研究実習」を全国の歯科大学の中で先駆的に取り入れています。歯科医学についてテーマを持った研究を進め論文にまとめる作業は、創造性・独創性ある歯科医学者・歯科医師の養成に効果をあげています。

迎え入れたい学生とは?

 現在、北大はスーパーグローバル大学創成支援事業に採択され、ラーニングサテライト事業として歯学部はスウェーデンのウメオ大学に学部学生を派遣するほか、バングラデシュ、韓国、中国、タイなどから留学生を受け入れています。

 こうした交流をさらに活発化させるために、歯学部では27年度入学者が2年生になった時点で4学期制を一部導入(28年度入学者が2年生になる時点で本格導入)、海外留学や海外における臨床実習などを選択できる体制を整えようとしています。

 高い専門知識と技術を身につけ歯科医療を通して国際貢献を考えている学生、新たな分野を開拓し独創的な世界レベルの研究を志す学生、歯科医療を通して人の生活の質を向上させることに奉仕したいと考えている学生、歯科医療に関する専門的な知識や技術を習得するだけでなく、医療人としての倫理観や高い人間性を獲得したいと考えている学生、同時に多数の教科を学ぶことのできる柔軟な学習能力を持った学生の皆さんを北大歯学部は迎え入れたいと考えています。

 フロンティア精神、チャレンジ精神に溢れる皆さん、北の大地で一緒に歯科医学を学びましょう。Be ambitious!

この記事は「螢雪時代(2016年4月号)」より転載いたしました。

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螢雪時代・7月号

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