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学部長メッセージ「経営学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2015】 経済・経営・商学部系統
  • [2015/11/1]

組織の直面する課題の解決に向け、取り組む実践的な学問が経営学

《国立》神戸大学 経営学部長
國部克彦(こくぶ かつひこ)先生

1962年兵庫県西宮市生まれ。大阪市立大学商学部から同大学院経営学研究科に進む。大阪市立大学商学部助教授等を経て1995年神戸大学助教授に着任。2001年同教授、2014年より現職。専門分野は社会環境会計環境経営、経営分析。著書に『低炭素型サプライチェーン経営』(共編著)、『環境経営・会計』(共著)、『マテリアルフローコスト会計』など。

組織を困難の中で何とか治めていくのが「経営」

  「経営」とは何か、ということについて、言葉の語源、そして経済との違いから考えてみましょう。経営は、「経る・営む」と書きます。経済も「経」の字は共通で、おさめるという意味です。経済は「経世済民」(世の中を治め、民を救う)から生まれた言葉ですが、経営は中国の詩経の中に出てくる「経之営之(これを経しこれを営す)」が語源です。特に「営」の文字に意味がありますが、古い字は「營」、本誌『螢雪時代』の「螢」と同じく上の部分は火が2つです。昔、行軍が夜陣を張るとき、敵や獣が来ないように火を持って歩兵が立っていた(「夜営」という言葉もあります)のがもともとの意味で、営の字は周りを画す、周りから区別するという意味があります。周りから画された人の集まりは組織と呼ばれ、その組織を治めることが経営ということになります。現代の代表的な組織は企業ですから、対象は主に企業経営になります。経済の場合はその枠がなく、広く国や世の中を治めるということです。
 また、経営を英語でいうとマネジメント(management)ですが、これはラテン語のマノ(mano)が語源で、手で何とかする、困難に直面したとき工夫して切り抜ける、といった意味があります。組織(会社など)の管理をすると同時に、さまざまな困難に出合ったときに人の手で何とかうまく進めていく、それがマネジメントということになります。
 経営学部と商学部はほぼ同じ場合もありますが、どちらかといえば、商いの種類を重視して流通、商業、銀行、交通などと分けて産業を中心に科目を体系づけているのが商学部であり、経営の内部のマネジメントの方法を中心に体系づけているのが経営学部です。この2つは、重点の置き方が少し違う場合もあります。神戸大学は経営学部ですが、一橋大学や大阪市立大学などは商学部という呼称を使用しており、一つの大学に経営学部と商学部が併存する場合もあります。

組織の活動を研究することが企業での実務に役立つ

 経済は理論、経営は実践といった言い方をすることがありますが、経営学は組織の活動を研究するので企業が主な対象であり、実践的でないと意味がありません。もともとは経済学も実践的な学問ですが、現在では相当抽象化が進んでいます。経済学は、ある条件の下で人間はどのように行動するのかといったふうに対象を一般化することが大事ですが、経営学では、企業が成長し競争に勝つために、その企業にしかない強みを重視します。それは数字だけを分析して出てくるものではなく、一つひとつの企業をケーススタディとして見ていかないとわからないのです。そういった意味で、より具体の情報を集めて分析することを重視するのが経営学であるといえます。
 また、経済学は、人間は自己の利益を最大化するといった前提条件をたてて、そうしたらどうする、というふうに議論を展開していきますが、そのような前提を受け入れるのが難しいと感じる人もいるでしょう。人間はもっと複雑で多様だと感じるならば、経済学よりも経営学の方が向いているかもしれません。経営学は曖昧な印象を与えるかもしれませんが、より現実に近い学問であるといえるでしょう。
 ただ、それをきちんと理解して使えるようになっていくには長い時間を要します。大学で経営学を学んでも、基本的に学生は企業に勤めたこともないし会社を経営したこともありませんから、大学の段階で身につくのはごく入門的・一般的なことです。将来、企業で実務についたときにどちらの方向に進めばいいのかがわかるためには、大学卒業後も継続して勉強していかなくてはならないのが経営学なのです。
 旧来の日本型経営は、会社は従業員のためという考え方が強かったのですが、それだと会社の経営が非効率になってしまう、株主中心のアメリカ型ガバナンス(統治)に変えなくてはならないというのが20世紀から21世紀の転換期頃の議論でした。しかし、最近は企業の中長期的発展を重視するように変化してきています。企業目的を考えることも重要で、たとえば、企業が自己資本利益率を上げようとすることと、営業利益を上げようとすることは経営戦略が大きく異なります。自己資本利益率を上げるために利益を大きくするのはたいへんですが、資本を少なくすることはすぐにできます。そのため、会社の事業で非効率なところは売ってしまうというケースも出てきます。このように具体の企業行動にまで踏み込んで議論していくことが、経営学には重要です。

神戸で生まれた日本初の経営学部

 神戸大学本館の前庭に、「我が国の経営学ここに生まれる」という石碑があります。この言葉が示すように、神戸大学経営学部は日本の大学で初めての経営学部として新制神戸大学とともに1949(昭和24)年に誕生しました。前身は1902(明治35)年創立の旧制神戸高等商業学校で、1929(昭和4)年に神戸商業大学となっています。この頃には、旧制東京商科大学(現在の一橋大学)、旧制大阪商科大学(現在の大阪市立大学)とともに「天下の三商大」といわれていました。新制神戸大学になるときには、商学部にするか経営学部にするか教授会で投票を行い、1票差で経営学部に決まったというエピソードも残っています。
 創設当初より「自由、真摯、協同」の精神で学理と実務の融合を目指し、日本の経営学の研究教育拠点として人材を輩出してきました。 MBA(社会人向けの経営学修士)プログラムを国立大学で初めて設置するなど、先進的な取り組みも進めています。「オープン・アカデミズム」を基本理念とした研究に基礎を置く教育(Research-based Education)は、最先端の研究をすぐに学生の教育に反映させるもので、今年7月には『人生を変えるMBA 「神戸方式」で学ぶ最先端の経営学』(有斐閣)という本にまとめて出版されています。 
 国際化の新しい取り組みとして、学部にはKIBERプログラムという学部生対象の留学プログラムがあり、1学年30人程度が専門の英語教育を受け、その中の成績優良者15-20名が海外の提携校に1年間留学します。3年前から始めた大学院博士課程前期課程の「SESAMIプログラム」は、海外の著名な大学の先生を神戸大学に短期間お招きして授業をしていただくもので、神戸にいて海外の先生の最先端の講義を聴くことができます。
 2016年からは、優秀な学部学生の能力をさらに伸ばすための新しい教育プログラムも導入する予定です。このように、経営学の先駆けでありながら、常に最先端の経営学を学べるよう絶えず改革を進めています。
 六甲山のふもとに位置する六甲台第1キャンパスは日本一美しいキャンパスともいわれ、その中心の六甲台本館(経営学部・経営学研究科、経済学部・経済学研究科)は国の有形文化財に登録されており、丸みを帯びた造りが特徴です。神戸の地でビジネス教育をつくろうとした先人たちの「ビジネスというのは状況に応じて柔軟に対応しなくてはならない」という想いがこの形に込められており、こういう学舎で研究に励むことができるというのも、この学部の大きなメリットであるといえます。
 神戸高等商業学校初代校長の水島銕也は、「重信義慎利慾」の書を残しています。これは、「信義を重んじ利欲を慎め」という意味で、現代の企業の社会的責任にも通じる重要な教えです。神戸大学は水島校長の人徳にひかれた学生たちから始まり、多くの有為な人材を輩出してきました。経営・経済・法学部の共通の同窓会である凌霜会が、これを束ねています。

経営学の視点を活かしたキャリア形成を

 これから大学で学び、社会に出る皆さんにお伝えしたいのは、同じ「働く」でもレイバー(labor)とビジネス(business)は違うということです。レイバーには時間を売ってお金をもらうという意味が含まれていますが、ビジネスはbusy(忙しい)の名詞形。時間という概念ではなく、自分が事業などやりたいことに対して対価をもらうという考え方です。会社に使われるのではなく、逆に会社を使って自分の人生やキャリア形成を考えていってほしいと思います。会社を使って何かするということは、すぐにできることではありませんが、そういう意識をもって働くのとそうでないのとでは、大きく違います。そのためにも、経営学の視点や考え方をぜひ活かしていってください。

この記事は「蛍雪時代(2015年11月号)」より転載いたしました。

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螢雪時代・7月号

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