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学部長メッセージ「経済学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2015】 経済・経営・商学部系統
  • [2015/11/1]

人間の目では見ることができない豊かさを、目に見えるようにする

《国立》北海道大学 経済学部 学部長
吉見 宏(よしみ ひろし)先生

1961年長崎市生まれ。長崎県立長崎東高等学校、九州大学経済学部、同大学院経済学研究科修士課程修了。同大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。北海道大学経済学部講師、助教授を経て教授。会計専門職大学院教授も兼務。2012年経済学部長に就任。専門は公会計、監査論で『企業不正と監査』『ケースブック監査論』などの著書がある。

経済学とはどのような学問か?

 経済学とは、誤解を恐れないで言えば、“豊かさ” を計算する学問と言えると思います。
 豊かさという言葉は、抽象的でとらえどころがないように見えますが、たとえば、縄文時代の人々と現代の私たちではどちらが豊かだろう? と問われれば、私たちのほとんどは今のほうが豊かだと答えると思います。
 もちろん中には、縄文時代のほうが自然豊かで毎日あくせくすることなく生きられる点で豊かだったなどと答える人がいるかもしれませんが、こういう人は少数のはずです。
 現在、人類は高度で豊かな文明を築いて、個々の国や地域をひとつのグローバル圏としただけでなく、宇宙にまで生活圏を広げようとしています。しかし、考えてみれば、こうした文明社会が出現したのは、最大でもわずか5000年ほど前、日本に限って言えばわずか2000年ほど前のことに過ぎません。現在の私たちの祖先がアフリカに出現してから、その年までの膨大な時間を、人間は猿や熊、鹿などと変わらない生活をしていたのです。
 実際、日本では1000年ほど前まで、縄文時代と同じ原始生活をしていた人たちがいます。樺太(サハリン)起源と考えられるオホーツク人で、その人たちの遺跡(常とこ呂ろ遺跡)が北海道北見市にあるのです。常呂遺跡は東大が「北海文化研究常呂実習施設」を設置して研究を行っているのですが、それによれば、トドやアザラシなどの海洋動物、テンや狐などの陸動物を狩猟し、五角形・六角形の竪穴住居に数家族で住む生活を送っていたようです。狩猟・採集の生活を送っている限り、人間は野生動物と変わらないことがこうした例でもわかります。
 これを激変させたのが、縄文後期、弥生時代に、人間が農耕を始め、それによって得た作物を備蓄できるようになったことです。豊かさ=富の出現であり、それを測り視覚化する貨幣(それ以前は珍しい石など)を発明したからです。
 実際、豊かさや富といったものは数えられるものではありません。たとえばメートルやグラム、リットル、PPM(ピーピーエム)などといった単位は、実際に自然界にあるものを基準に作られています。ところが円やドルなど富を測るものは、実際にあるわけではありません。実際には目で見ることができない富を測れるようにしたことで、交換や売買などができるようになったわけです。これが人間の生活を動物から切り離し、大きく進歩させたといえるのです。
 このように、実際に人間の目では見ることができない豊かさ、富といったものを、目に見えるようにするのが経済学で、それを国や世界といった大きなレベルで行うのが経済学、企業や個人などより限られた範囲で行うのが経営学だと言えます。

「学部別」と「総合」の2つの入試

 北海道大学(以下、北大)経済学部は、1947年(昭和22年)に発足した法文学部経済学科をルーツに、1953年(昭和28年)に誕生しました。1966年(昭和41年)には経営学科を設置し、さらに2005年(平成17年)には、会計専門職大学院(アカウンティング・スクール)を開設しました。また、法学研究科、工学研究院と連携し公共政策大学院も設立しています。
 2000年(平成12年)には大学院重点化を行い、グローバルな研究を行う研究主導型大学院として揺るぎない地位を占めています。大学院には海外からの留学生も多く、2011年(平成23 年)からは英語での授業を増やすことで、専門によっては英語のみでの修士号取得も可能になっています。
 北大の入試は、学部別入試と総合入試の2つで行われています。学部別入試は経済学部志望者のための入試で前期140人、後期20人を募集します。また、入学後1年間の勉強の後、学部を選択する「総合入試」の合格者からは30人程度を受け入れています。これら1学年190人の学生を、約50人の専任教員が指導するという少人数教育が北大経済学部の最大の特色です。

2年間必修のゼミナール

 経済学部に入学した学生は最初の1年間、経済学・経営学を学ぶために欠かせない幅広い教養を身につけるため「全学教育科目」を履修します。専門科目の本格履修は2年生からで、基礎的な内容からより高度な内容に段階的にステップアップできるよう履修科目が指定されています。
 3年生・4年生の2年間、必修で行われるゼミナールは、経済学部の教育の最大の特色です。1学年の人数は4人から7人程度。北大のゼミナールは、3・4年生と大学院生が一堂に会して行うのが特徴ですが、その場合でも20人程度です。ゼミナールは、毎日の時間割の最後に配置されているため、多くのゼミで時間を延長しての白熱した議論が行われています。ゼミで培った、先生、先輩、同期生、後輩との人間関係は一生続く財産となっています。
 ゼミナールでの研究活動の集大成として「卒業論文」を課していることももう一つの大きな特色です。卒論のうち10本程度が特選論文、その中でも優秀なものには経済学部長賞、同窓会長賞が授与され、図書館で長期保存されます。後輩の学生はこれら特選論文を読み参考にすることで、自らの論文制作の励みにしています。

会計学のおもしろさとは?

 私は会計学(公会計)、監査論を専門にしていますが、高校時代は理系で、親の勧めや友人の影響もあって、医学部に進学しようと考えていました。この気持ちが変わったのは、属していた新聞部の友人の影響です。
 彼は非常に優秀で、もちろん数学や理科などもトップクラスなのになぜ文系クラスにいるのか聞いたのです。彼の答えは、文系で学ぶことの意義を、自分の将来のやりたいことを結びつけた大変しっかりしたものでした。それまで自分の進みたい道を真剣に考え、向き合おうとしなかった私には、彼の考えは衝撃的で、それから自分が何になるべきか、どのような学問を学ぶべきか考えるようになったのです。
 会計学という学問があり、その専門家として公認会計士という職業があることを知ったのは、3年の夏休み過ぎでした。おそらく間に合わないと思って受けた九大の経済学部でしたが、幸い、理系に所属し、数学が得意だったおかげで合格することができました。
 以来、私は会計学の研究を行ってきましたが、会計学というとお金の計算ばかりしているというイメージがあるかもしれません。しかし、冒頭でお話しましたように、お金=貨幣は、豊かさ=富をはかる指標として発明され、人間の進歩の原動力となったものです。お金は経済学にとって人体の「血」にあたるものであり、お金の流れを追えば、経済の動きも企業経営の動きも見ることができます。会計学とはお金の動きから経済や経営の動きを見る学問であり、こうした面白い学問にめぐり合えたことは、私の最大の喜びかもしれません。
 大学の経済学は、たとえば経済政策、経済と社会、経済理論、経済史、統計、経営情報、経営学、会計学と多彩で、これらは高校では学べません。また、同じ経済学部でも、大学によって、どの分野に強い教員を集めているか、どのような研究成果をこれまで挙げているかなど、大きく違います。
 私の場合は、受験ぎりぎりで学びたい分野に出会えましたが、みなさんには、できるだけ早い時期に、こうした学問や学部の中身について調べていただければと思います。
 私は会計専門職を養成する会計学研究科(アカウンティングスクール)という専門職大学院の教員も兼務していますが、公認会計士などの会計専門家を目指す学生が多く、合格率が高いのも北大経済学部の大きな特色となっています。2013年は公認会計士試験で現役(4年生)合格者8人を輩出し、いずれも大手監査法人に就職しています。

地域に貢献しグローバルに羽ばたく

 北大は、学部生の過半数が北海道以外から来る全国型大学です。これは経済学部でも例外ではありません。アベノミクスは製造業を強くし、それによって地域・国の経済を活性化させようとしていますが、北海道では、他地域と比べて弱い製造業に代わって、観光業や農業・酪農など第一次産業による景気浮揚をはかっています。
 とくに、観光業は、北海道経済の柱に近い地位を占め、経営力がなくなった高級ホテル・旅館のローコスト経営や、逆に中小ホテル・旅館の高級化などに強みを発揮しています。また、北海道の涼しい気候を生かしての年金世代の移住や長期滞在、外国人観光客のスキーリゾート・温泉への誘致などにも積極的です。
 北大もこうした道経済の浮揚に貢献するため、経済学部に「地域経済経営ネットワーク研究センター」を設置、北海道という地域に根差した学問的貢献・情報発信を目指しています。また、観光学分野でも大学院の「国際広報メディア・観光学院」を設置し、観光学分野の人材育成を図っています。北大で全国から集まる有為な人材と交わり切磋琢磨し、また全国、世界に羽ばたこうとする志の高い皆さんが一人でも多く経済学部の門を叩(たた)いていただけることを心待ちにしています。

この記事は「蛍雪時代(2015年11月号)」より転載いたしました。

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