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学部長メッセージ「教育学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2015】 教育・教員養成・体育・健康科学部系統
  • [2015/10/1]

人づくりは国づくり。しなやかで強靭な「幅」のある教師に

《国立》広島大学 教育学部
宮谷 真人(みやたに まこと)先生

1958年鳥取県生まれ。広島大学教育学部から同大学院教育学研究科博士課程に進む。博士(心理学)。琉球大学助手を経て1989年広島大学に着任。2013年より現職。専門研究分野は認知心理学。著書に『視覚探索を支える脳内過程に関する研究』、『心理学基礎実習マニュアル』(共著)、『認知・学習心理学』(共著)など。

人に与える影響が大きいのが教師という職業

 人間は、生まれた直後から一生を通じて学び続ける存在です。そして、その学びを支えるのが「教育」という営みです。世の中には数多くの職業がありますが、教師は人に与える影響が特に大きいといえます。決して大げさではなく、その人の人生に対して責任を負っているといえるでしょう。さらにいえば、人づくりは国づくりです。その人の将来だけでなく日本の将来、さらには地球規模で人類の将来にも影響を与えます。教師を志す人にはそういう使命感、責任感が最も大切ですし、そのくらいの気概を求めたいと思います。確かに、楽な仕事ではありません。昔に比べると教師に要求されることも多くなっていますし、レベルも高くなっています。気概や意欲だけではやっていけないという部分もありますが、それでもたいへんやりがいのある仕事、それが教師です。

「幅」=「人間力」が教師には必要

 教師は“幅”が勝負だと私は考えています。国語や理科など専門の教科を教えられるのは大前提として、自分の人間としての横幅をどれだけ広げていけるかが大事です。コミュニケーションをとりながら相手に影響を与えていくうえで大切な“幅”はどうやって広げられるかというと、それはやはり“体験”です。いろいろな体験ができる大学生の期間に、できるだけ多くの体験をすることが、教師になったときに生きてきます。学部卒で教員になると考えた場合、4年間で勉強したり体験したりできることは限りがありますが、大学生のうちに素地をつくっておくと、現場に出たあとも学び続けることができます。“幅”は“人間力”ともいえますが、それを大学時代につけておくことで、現場に出てからの子どもや保護者とのコミュニケーションにも違いが出てきます。
 しかしながら、現代の日本の教師は、保護者の対応や事務作業などに多大な労力を要し、本来向けるべきところにエネルギーを注ぐことができなくなっています。多くの教師は、忙しいこと自体を厭うことはありません。子どもたちと接して忙しいのは大歓迎ですが、そうではない部分に時間と労力を割かれているのが現状です。
 確かに、理想とする教師像と現実のギャップに悩むこともあるでしょう。予想外のことに直面しながらも、それを乗り越えていくと教師として成長できますし、そのようにしなやかで強靭な教師を私たちは育てたいと考えています。

教員養成機能と研究機能を併せ持つユニークな学部

 広島大学教育学部は、全国でも類をみないユニークな学部です。前身である広島高等師範学校・広島文理科大学・広島師範学校・広島青年師範学校・広島女子高等師範学校の5校を包括して誕生しました。広島高等師範学校は中等学校教員養成の中核校、広島文理科大学は教育学・心理学研究の拠点校、広島師範学校は初等教員養成の伝統校といった、それぞれの特色を受け継いで、現在の広島大学教育学部も教員養成と教育研究機能を併せ持つ、教育に関する総合学部となっています。
 教育学部は5つの類・15のコースで構成されています。第一類(学校教育系)は初等教育教員養成コースと特別支援教育教員養成コースで、全員が小学校教員免許を取得します。第二類(科学文化教育系)は自然系、数理系、技術・情報系、社会系の4コース。中学・高校の数学・理科・社会(地歴・公民)・技術(情報・工業)の教員免許のほか、コースにより学校図書館司書教諭や社会調査士などの資格も取得できます。第三類(言語文化教育系)は国語文化系、英語文化系、日本語教育系の3コース。国語・英語の教員を目指す人が多く、日本語教育系コースは一般企業など教職以外の進路を選ぶ人も多くなっています。第四類(生涯活動教育系)は健康スポーツ系、人間生活系、音楽文化系、造形芸術系の4コース。学校教員だけでなく広く社会で指導力や実技力を生かせる人材育成を行います。第五類(人間形成基礎系)は教育学系コースと心理学系コースで、東大・京大など旧帝大の教育学部に相当し、研究を中心に行っています。心理学は総合科学部にも専門の教員がおり、教育学部の教員・学生と一緒に研究するなどしています。
 私の専門は認知心理学です。認知というのは外の世界を知るはたらきのことです。ものを見たり聞いたりする知覚や、思考・判断・記憶・注意など人間の基本的な認識のはたらきを、主に実験を通して明らかにしていこうとするのが認知心理学です。人を知る、「知」の仕組みを探究していくというものなので、教育や学習と密接に関わっています。ただ、認知心理学だけが教育に関係が深いということではなく、発達心理学や教育心理学、学習心理学など心理学の各分野は重なる部分が多く、教育に広くアプローチする手法として心理学は有効です。近年は教育や学習の問題も、ブレイン・サイエンスの視点からアプローチされるようになり、認知心理学もブレイン・サイエンスと非常に近いところにあります。専門教科の教員を目指しつつ、認知心理学に興味をもって卒論で取り上げる学生もおり、自分の専門以外に心理学の知識を身につけることによって、教育に対する視野が広がることにもなります。

環境の変化に対応するプログラムやカリキュラム

 入試は一般入試(第三類は前期日程のみ)とAO入試(総合評価方式Ⅰ型・Ⅱ型:類・コースにより異なる)のほか、中高年の方の学びなおしとしての「フェニックス入試」も2001年から一部のコースで実施しています。フェニックス入試で入ってこられた方は意欲が高くいろいろな経験をされているので、一緒に学ぶ20歳前後の学生にもいい刺激になっています。
 大学のある東広島市との連携事業である「フレンドシップ事業」は、地元の協力を得て初等教育教員養成コースの学生が市内の小学生と畑で野菜をつくったりお祭りを企画・運営したりしており、地域にも小学生にも大学生にもメリットがあります。個別学習支援の「にこにこルーム」は、学習面での困難や心の問題を抱えた子どもに対応するもので、学生も知識だけでなく教えるスキルが養われていきます。また、カンボジアやドミニカでの教育支援活動も行っており、学生の学びや活動の場は海外にも広がっています。
 国内においても、外国籍の子どもが増えていたり、一貫校やIB(国際バカロレア)認定校、スーパーグローバルハイスクール、インターナショナルスクール、フリースクールなど学校の形態も多様になっていたりします。そうした多様性に対応できるよう、2016年には大学院の改組を予定しています。専門職学位課程(教職大学院)の新設やグローバル教員養成プログラムなどで、卒業・修了した人の活躍の場がより広がることが期待されます。
 このように広島大学教育学部では、教育を取り巻く環境の変化に対応し、カリキュラムの充実や見直しを図っています。こうした環境を活用して、人づくり、ひいては世界の平和に貢献する人材を育てたいと考えています。

オープンマインドな姿勢で大学時代に多くのことを吸収しよう

 最近の学生をみていると、まじめなところは昔から変わっていませんが、少し内向きな傾向があるのと、卒業後の進路に悩むことが多いような気がします。これから大学、とくに教育学部で学ぼうとする皆さんには、オープンマインドな姿勢でいろいろなことに広く目を向けていってほしいと思います。そういった姿勢が、先ほど申し上げたような教師としての“幅”を広げることにつながります。
 私は、「教員が日本の将来を決める」といってもいいと考えています。人づくりは国づくりです。日本の将来を担う子どもたちを育てる人材を育成するという教育学部の使命も、これからよりいっそう大きくなっていくでしょう。

この記事は「蛍雪時代(2015年10月号)」より転載いたしました。

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蛍雪時代

螢雪時代・7月号

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