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学部長メッセージ「理学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2015】 理学部・工学部系統
  • [2015/8/1]

知的好奇心とピュアな気持ちを大切に自分自身のフロンティアに挑戦しよう

《国立》北海道大学 理学部長
石森浩一郎(いしもり こういちろう)先生

1961年京都府生まれ。京都大学工学部石油化学科から同大学院工学研究科分子工学専攻に進む。工学博士。京都大学大学院工学研究科助教授を経て、2005年北海道大学大学院理学研究科教授に着任。研究分野は構造生物化学、生物物理学、機能生物化学、蛋白質工学、生物無機化学。日本生化学会評議員、日本生物物理学会欧文誌編集委員なども務める。

理学部・工学部で迷ったらこんなふうに考えてみよう

 理系を選んだ高校生の皆さんは、学部選択で悩むことがあると思います。そこでまず、私の経験もまじえてアドバイスします。私が大学進学を考えたとき、理系には決めていましたが、最初は数学を勉強したいと考えていました。しかし、ある先生から「数学が好きなら化学がいいだろう」とアドバイスを受けたのです。同じように、1981年にノーベル化学賞を受賞した福井謙一先生も、数学が好きなら化学がいいというアドバイスを受けて、京都大学(以下「京大」)工学部工業化学科に進学していました。化学は一見、数学と関係ないように思えるかもしれませんが、モノをつくるには数理的な概念が必要であり、化学には数学のセンスが欠かせないという話は、当時の私には衝撃的でした。そこで、京大工学部石油化学科(当時)に進学したのです。京大工学部の化学系は理学的な色合いが強かったので、北海道大学(以下「北大」)理学部に教員として移っても、そんなに違和感はありませんでした。
 理学部では「知的好奇心」を重要視します。ここでいう知的好奇心とは、たとえば、雪の結晶や建築物の形を見て美しいと感じることもそうですし、人間は宇宙の歴史の中でどのように作られてきたのだろうと考えることもそうです。数理や自然界の神秘や不思議の「理(ことわり)」を見出し、新たな「知」を創造することが理学教育の大きな目的です。いっぽう工学部は、理学によって発見されたものを使って応用することがメインであり、カリキュラムも細かく決められているのが一般的です。企業で製品を作るなどダイレクトに社会の役に立ちたいと考える人は工学部、内容によっては薬学部、農学部などが向いているかもしれません。理学部はサイエンスを楽しみたい、自然界の理屈や自分の興味のある分野について知りたいという“遊び心”のある人が向いているのではないでしょうか。
 私が京大時代に言われて印象に残っていることですが、工学部は「3割バッター」を量産できるような、とりあえずいい球が来たらバットを振って着実にヒットを打つことが求められます。ところが、理学部は「大振り」をする、つまり、三振もするけど特大ホームランも打てるかもしれない。もちろん、世の中にはどちらも必要なのですが、自分はどちらが向くタイプなのか、理学部か工学部かで迷ったら、そのように考えてみるのもいいかもしれません。

受験科目以外も学んでおくと大学で生きてくる

 理学の研究では三振もたくさんするかもしれませんが、三振を重ねていれば、この球はダメだというようなこともわかってきます。化学専攻でも数学や物理を組み合わせたり、何度も失敗したりしているうちに、いい方法がわかってくるものです。そういう失敗を許す自由度が理学部にはあるとも言えます。会社や組織は3割バッターのほうがほしいと言うかもしれませんが、かつての日本の高度成長期のようにもはや追いつき追い越せの時代ではなく、これからの日本は、何もないところでトップを走らなくてはなりません。そういう意味では、技術的な研究者だけでなく自由な発想ができる研究者がこれから日本を支えていくのではないでしょうか。
 高校では教科・科目が分かれていて、数学が好きな生徒は数学、物理が得意な生徒は物理、というようになっていますが、理学の世界は融合領域であり、学際的な部分も大きいのです。私の研究も生物に近いタンパク質ですが、高校では数学や化学などまったく違う科目として教わるものがサイエンスとして実は一つのものだと実感できるのが理学部なのです。化学は化学だけ、ではなく、物理や生物や数学の知識を加えることで問題が解決できるということは多くあります。そういう意味では、受験科目だから勉強する、それ以外はやらないというのではなく、隣接する科目も学んでおくと、後で役立つことがきっとあります。

入学後に多様な科目を学び、進路を決める総合入試

 北大の理学部は、数学科・化学科・生物科学科(生物学・高分子機能学)・地球惑星科学科の5学科がありますが、学科にとらわれずに理学を広く学んでほしいというスタンスをとっています。それを象徴するのが、2011年度から導入した「総合入試」です。これは、一般入試前期日程を「総合文系」「総合理系」で募集し、総合理系で入学した学生は1年次に理系・文系から幅広い分野を学び、2年次進級時に進路(学部・学科)を選ぶものです。たとえば、大学で化学を学びたいと考えた場合、ストレートに該当するのは理学部化学科ですが、工学部の応用理工系学科でも学べますし、分野や内容によっては薬学部薬科学科(4年制)や獣医学部、水産学部でも可能です。前期日程は総合入試のほか、理系では医学部・歯学部・獣医学部・水産学部は学部別入試もあります。また、後期日程はすべて学部別入試になります(医学部医学科と同保健学科看護学専攻・理学療法学専攻は後期募集なし)。AO入試は、理学部では物理学科と地球惑星科学科で募集します。
 いずれの入試・日程で入学しても、1年次は全員が「総合教育部」に所属し、約800もの科目から一定の基準に基づいて自分の学びたい科目を選び、自分で時間割を作ります。
 高校時代は、「化学が好きなら化学科に行きなさい」というようになりがちですが、北大では、いろいろな科目を学んだり見聞きしたりして、自分の知的好奇心を見極めて進路を決めてほしいと考えています。これは、北大のような総合大学で恵まれた環境にあるからこそできると言えます。興味があれば1年生のときから研究室を見学することもできますし、何か知りたいことがあれば水産学部(函館キャンパス)以外の先生はみんなここ(札幌キャンパス)にいます。この環境やシステムをフルに活用して、自分が本当に学びたいものを見つけてください。

女性研究者支援、グローバル化推進でさらに優れた研究者養成を目指す

 少し前に「理科離れ」と言われた時期もありましたが、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)や高大連携などの取り組みもあり、理工系に興味のある高校生が多くなっていると感じます。特に女子学生の理系に対する意識が強くなってきているようです。北大でも「女性研究者支援室」を設置するなどの体制を整え、北大全研究者の中の女性研究者比率を2020年までに20%にするよう目指しています。
 グローバル化対応も進んでいます。理学では、論文は基本的に英語ですし、研究成果は国際学会で発表するのが当たり前です。英語は“道具”として使えなくてはいけませんが、最近はさらに積極的に留学するよう勧めています。北大では「新渡戸(にとべ)カレッジ」を開設し、特別教育プログラムによって学部教育と並行して豊かな人間性・国際性を育む教育を行っています。理学部の学生も40人ほどが履修しており、これから本当の意味で学生が実感できるグローバル化が進んでいくと思います。なお、新渡戸カレッジの名は、北大の前身である札幌農学校の卒業生で国際連盟事務次長を務めた新渡戸稲造(にとべいなぞう)に由来しています。
 北大理学部は、これまで多くの優れた研究者を輩出してきました。最近では、2010年に「クロスカップリング反応」でノーベル化学賞を受賞された鈴木章博士も北大理学部化学科、大学院理学研究科で学んでいます。日本人最初のNASAの宇宙飛行士・毛利衛博士も北大理学部で学びました。北大で教鞭をとった中谷宇吉郎博士は、学内の低温実験室で人工雪の製作に世界で初めて成功しました。北大のモットーのひとつであり、北海道を象徴する「フロンティア精神」も大きく影響しているものと思われます。北海道という土地や自然環境へのあこがれがあって北大を受験する人も多くいますが、そのフロンティア精神を肌で感じて自分自身のフロンティアに挑戦してほしいと思います。

大学では知的好奇心の赴くままに学ぼう

 理学を志す人は、不思議だと思うものや現象に対して、それを解き明かそうというピュアな気持ちを持っています。それがすぐに何かの役に立つということではないかもしれませんが、目の前にあって心がかきたてられる、自然界の中の真理を明らかにしたいというピュアな好奇心を大事にしてほしいと思います。そして、大学にいる間は時間を大切にしながらも知的好奇心のおもむくままにいろいろなことに取り組んで、そのあとは得たものを社会にどう還元するかを考えていってください。
 知的好奇心とピュアな気持ち、それが理学を学ぶ人に最も必要なことなのです。

この記事は「蛍雪時代(2015年08月号)」より転載いたしました。

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螢雪時代・7月号

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