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学部長メッセージ「歯学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2015】 医・歯・薬学部系統
  • [2015/4/1]

インターフェイス口腔健康科学の拠点で、世界の基幹校から集う優れた若者と共に学ぶ

《国立》東北大学 歯学部 学部長
佐々木啓一(ささき けいいち)先生

1956年宮城県生まれ。宮城県仙台第一高校、東北大学歯学部卒業。同大学院歯学研究科博士課程修了。歯学博士。東北大学歯学部助手、助教授、教授を経て2009年東北大学病院歯科医療センター長、2010年4月歯学部長・歯学研究科長。日本口腔顔面痛学会会長、日本補綴歯科学会理事長などを歴任。専門は口腔システム補綴学で義歯、インプラントの日本を代表する研究者として知られる。

歯学と医学はどう違うか?

 歯学、あるいは歯学部のお話をさせていただくにあたって、受験生の皆さんが関心を抱いているであろうことを3つほど順に取り上げさせていただこうと思います。
 1つ目は、医学部と歯学部はどこが違うかということ。2つ目は、歯学とはどういう学問かということ。3つ目は、国際交流とその中における東北大学歯学部のミッションについてです。
 まず、医学・医学部との違いですが、一番の違いは、歴史の違いです。医学の歴史は、パスツールやコッホが、病気の原因が細菌など微生物にあることを発見した19世紀以降のことです。それまでは、血を抜いたり呪術に頼ったりということが普通でした。
 これに対して、歯学には、4千年以上に及ぶ長い歴史があります。エジプトでは歯にたまった膿を取り除いたり、抜歯したりする医療が行われ、歯を抜いた後にブリッジをするような技術もありました。紀元前2~3世紀の古代ローマ時代には、インプラントの原型とも言えるものが発見されています。
 日本でも抜歯などの治療法は早くから発達し、世界最古の総入れ歯(木床義歯)は16世紀に日本で作られています。義歯を作るには、あごの動き(運動)がどうなっているかがわからなければなりません。そういう知識も蓄えながら現代につながる長い歴史を持っているのが歯学なのです。
 歯学がそういう独自の歴史を持っているのは、身体の他の器官や臓器と違い、自然治癒が期待できないこと、痛みが耐えられないものであったからです。近代歯学は、アメリカのボルチモア歯科医学校(1840年創立、現メリーランド大ボルチモア校)に始まるとされますが、それらが明治維新と同時に日本に入り、その後欧米と競うようなかたちで発展していったのです。
 もう一つの違いは、学問の基盤の違いです。歯学部で学ぶ生理学や解剖学など、生命科学の基礎的部分は医学と一緒で、これらについては、むしろ統合して授業を行ってもいいくらいです。違うのは、テクノロジー(工学技術)やマテリアル(材料)が重視されていることで、これは、歯や義歯を削ったり、磨いたりすること、それらにどんな材料を使ったらいいのかを考えることが歯学では重要だからです。
 これは2番目の、歯学とはどういう学問かという問いへの回答でもありますが、歯学は、こういう点で、再生医学・再建医学などの医学分野、分子生物学・メカノバイオロジーなどのバイオサイエンス分野、加工学(切削・研削)・ナノ工学・バイオメカニクスなどの工学分野、バイオマテリアルなどのマテリアルサイエンスを基盤とした応用科学(Applied Science)と言えると思います。
 悪くなった部分を削ったり、なくなってしまったものを再建したりするには、道具が必要であり、加工しやすく丈夫で長持ちする歯を作るには、優れた特性を持つ材料の開発が必要です。こうした知識が必要なのが歯学という学問の特色と言っていいと思います。

医学・工学との融合・連携教育

 東北大学歯学部は、こうした医学や工学と連携を行うには最高の環境です。材料研究では、世界トップクラスの金属材料研究所(金研)があり、医学研究では、難病や先進医療に取り組む東北地区最大の東北大学病院があります。歯学部、歯学部教員は、これらの学部や研究所・病院と連携して、様々な研究を行っています。
 現在、医学と歯学の連携は喫緊の課題となっています。東北大学病院では、高齢化が進んで口や身体が弱っている人にちゃんと食べさせることや、歯周病など口腔を管理することで全身の健康につなげることなどを、医師と歯科医師が協力して行っています。また、放射線の治療や呼吸器や消化管などの外科手術をする前には、歯科的な処置を行い、手術後も口腔内の管理を行います。これをすることで術後の合併症や感染症を未然に防ぐことができます。ある資料では、こうした口腔内の処置を行うことで、入院期間が半分に減ることも証明されています。
 医科と歯科を統合して、ひとつの大学病院にしたのは、東北大学が日本で最初(2003年)です。医学・歯学が専門に細分化される中で、私たちは、患者さんの治療のために、医学と歯学、あるいは薬学・看護学が、お互いの強みを出し合って協力・連携し合う関係を早くから築いてきました。こうした教育・研究が行えるのが東北大学歯学部の強みです。

「インターフェイス口腔健康科学」を提唱

 歯学とはどういう学問かという問いに対して、私たちは「インターフェイス口腔健康科学」という新しい考えを打ち出しています。
 私たちの口の中(口腔)は、歯や粘膜、骨、筋などの口腔組織と、歯周病菌など口腔内に寄生する微生物(パラサイト)、生体材料(バイオマテリアル)の3つのシステムからなっています。この3つのシステムに咬合力に代表される生体応力(メカニカルストレス)が加わっているのが私たちの口腔の特徴です。
 う蝕(虫歯)や歯周病、顎関節症などの口腔疾患は、これらの接点(インターフェイス)が破綻することで起こるというのが、インターフェイス口腔健康科学の考え方です。加えて、口腔そのものが、体内と外界のインターフェイスであり、誤嚥性肺炎や消化管感染症などの口腔関連疾患も、これらのシステムのインターフェイスが破綻したことが原因と考えることができるのです。
 インターフェイス口腔健康科学の概念は、現在、次世代の歯学・口腔科学として、国内はもとより世界でも広く認められるに至っています。2005年に、仙台で「第一回インターフェイス口腔健康科学国際シンポジウム」を開催して以来、国際シンポジウムは5 回を数え、成果を英文書籍(Interface Oral health Science2014)で発信するほか、ハーバード大学や北京大学、シドニー大学との間ではサテライトシンポジウムを毎年開催しています。また、これら3大学以外でシンポジウムに参加したキングスカレッジ・ロンドン、ブリティッシュ・コロンビア大、ソウル大など各国のトップ歯学研究機関とは連携を強化し、研究者・学生の交換などを活発に行っています。

東北大学歯学部・歯学研究科のミッション

 独立した大学院研究科を持つ4つの大学(他に北大、九大、阪大)の一つであることも東北大学の特色です。これら研究型大学の中で、東北大学歯学部・歯学研究科は「世界をリードする研究者養成、バイオマテリアル・歯学再生医療等の異分野融合研究、災害口腔科学、歯科法医情報学、大規模災害対応及び創造的復興の先導的役割」という明白なミッション(文部科学省「ミッションの再定義」)を持っています。
 研究者養成や異分野との融合研究の現状についてはこれまで説明してきましたが、災害口腔学と歯科法医情報学についても触れておきたいと思います。先の東日本大震災では、私たちの学部棟も大きな被害を受けましたが、その中にあって、災害医療の拠点となった石巻赤十字病院からの要請を受けて多くの歯科医を派遣し、先に述べたような医師との連携による治療を展開しました。その結果が良かったことから石巻赤十字病院をはじめ多くの病院が、歯科との連携による治療を導入するに至っています。
 歯科法医情報学の分野では、東日本大震災時に、歯型や歯科治療時のカルテなどから身元を確認するなどの活動を行いましたが、現在も、福島県で、抜けた子どもの乳歯を集めて、それにどれくらい放射能が蓄積しているかなど継続した研究を行っています。

アジア、そして世界を目指そう

 これらの実績が認められ、2013年、東北大学大学院歯学研究科は、文部科学省の「国費外国人留学生の優先配置を行う特別プログラム」に選定されました。異分野融合型・国際連携型の世界トップレベルの研究を背景に、アジアの歯学・歯科医療の発展に寄与するプログラムを展開しています。
 アジア民族に共通の倫理観、死生観、解剖学的要件を反映し、アジアに根差した歯学・歯科医療の確立と普及をめざすこのプラグラムでは、中国、韓国に加え、タイ、インドネシア、インド、モンゴルの基幹校から国費留学生を受け入れ、私費留学生・日本人大学院生と共修のかたちで、アジアの歯学・歯科医療をリードするグローバルリーダーの養成を行っています。
 アジア、そして世界を見据えた教育は、時代に適応した臨床実習教育プログラムの開発など、学部でも活発に行われています。東北大学には、アジア、そして世界から新しい歯学を目指す若者が集っています。皆さんもぜひこの仲間になりませんか。

この記事は「蛍雪時代(2015年4月号)」より転載いたしました。

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