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学部長メッセージ「医学部の魅力って何?」

  • 【学部リサーチ 2015】 医・歯・薬学部系統
  • [2015/4/1]

ダイバーシティ(多様性)の尊重とグローバルな視点が医師には必要

《国立》広島大学 医学部 学部長
木原康樹(きはら やすき)先生

1955年広島県生まれ。京都大学医学部卒業、同大学院医学研究科修了。ハーバード大学医学部内科部門心臓血管内科研究員、富山医科薬科大学医学部(現・富山大学医学部)助手、京都大学大学院医学研究科循環器内科学助手・講師、神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科部長を経て2008年広島大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学教授に着任。2014年より現職。

医学は開かれた学問。そして“人間”の学問

 医学部に進学して将来医師になることを志しておられる皆さんにまずお伝えしたいのは、「医学というのは開かれた学問である」ということです。医学部は受験科目からみれば理科系の学部ということになるのでしょうが、だからといって理科系の学問の延長線上にあると考えるのは大きな間違いではないかと思います。
 医学は“人間”の学問です。数学や理科に重点を置いた学習は求められますが、数学や理科だけで解決できるものではありません。語学や文学に対する素養も求められます。人間がどうしてそういう行動をするのか、どういう悩みがあるのか、そういうことを理解できる人間力や洞察力、コミュニケーションの力が強く求められる領域なのです。広島大学医学部医学科のアドミッション・ポリシー(求める学生像)でも最初に「人間が好きで、人の痛みに共感できる人」と明記しています。
 そうすると、高校での成績が優秀だからというだけで医学部を目指すというだけでは足りません。成績がいいことは必要条件ですが、それだけではだめで、人間としてのヒューマニティ全般が求められているのです。成績がいいから医学部を受けたというだけでは、医学部に入ってからの厳しい研修や膨大な学習を乗り越えられないかもしれません。医学の進歩は早く、情報量や学習しなければならない項目は年々増え続けています。それを6年間で修得するには、強い意志が必要です。学習や研修を乗り越えられたとしても、実際に医師になったときに人とのコミュニケーションがとれないようでは困ります。今一度、自分自身の気持ちをしっかり確かめたうえで医学部に進んでほしいと思います。
 振り返れば私自身は、父親が医師(産婦人科医)だったこともあり、自分が医業に就くことをあまり疑わずに育ちました。大学進学を考える時期になって、物理学や文学などを学ぶのもおもしろそうに思えたり、医学部以外の道もあるんだなと考えたりして悩んだこともありました。悩んだ結果、医学部進学を決めましたが、自分が医師になって35年たち、その選択に間違いはなかったと思っています。

ダイバーシティとグローバルの視点が医師には必要

 1945(昭和20)年開校の広島県立医学専門学校が広島県立医科大学となり、1953(昭和28)年設置の広島大学医学部に移管されました。1945年は第二次世界大戦が終わった年、すなわち広島が原爆の被害を受けた年です。長崎とともに、世界の他の場所は経験していない深い歴史をもった地における大学として、広島大学は「平和を希求する人が入学する大学」というミッションを掲げています。広島に原爆が落ちて多くの人たちが悲惨な体験をした、それを語り継ぐだけで平和が維持できるのか、平和であるということはどういうことで成し遂げられるのか、これを考えるのは広島大学の大きな課題であり、これから広島大学に入学するすべての人が考えていかなくてはならないことです。
 今の世界で平和を維持していくためには、“多様性=ダイバーシティ”という側面が大きいと思います。たとえば、サラエボという都市(ボスニア・ヘルツェゴビナの首都)は1984年に冬季オリンピックが開催された頃、とても美しい街でした。それが、1992年~1996年のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でまさにオリンピックの会場だったところが墓場になってしまいました。それまでのサラエボは異なる民族・宗教の人たちが融和して暮らす街でしたが、民族同士でこり固まって別の民族を排斥することで分裂が生じ、大きな戦争に発展してサラエボの街は崩壊しました。なぜ戦争になったのか、何があったら平和だったのかを考えたとき、多様性(ダイバーシティ)の喪失、他の人の価値観を認め合うことが失われ、戦争につながったのではないかと思います。今年に入ってから起こったフランス・パリでの襲撃事件などをみても、イスラムと非イスラムの対立やアラブ人とヨーロッパ人の対立という構図に進んでいます。EU(欧州連合)の人たちは民族の多様性についてナチスから深く学んでいて、そういう多様性がないと自分たちの平和や生存が危機に陥るということを深く考えながら暮らしています。
 なぜこのような話をしたかというと、広島大学でこれから学ぶ人も、広島で悲惨なことがあったからそれを覚えておかなくてはならないというだけでなく、人類におけるダイバーシティというものを深く考えながら暮らしていく必要があると思うからです。
 言い換えれば、自分と価値観が異なったり肌の色や人種が異なったりする人たちに対して、いかに対等に、かつ包括的に対処できる人間性が必要かを学んでほしいということです。多様性を大いに尊重し、さまざまな国や地域から来る人たちが広島大学に入ってきて、広島大学の人たちもさまざまなところへ出て行って、ダイバーシティの意味を世界に伝えて、その中で医療というもののあり方を考えていく人たちを広島大学医学部は育てたいと考えています。
 2014年、広島大学は文部科学省のスーパーグローバル大学等事業「スーパーグローバル大学創成支援」(タイプA)に採択されました。平和を希求すること、人の気持ちや痛みがわかるということと、世界に開かれた大学であるということは根底の部分でリンクしています。医学をダイバーシティやグローバルな視点で見ることのできる人を求めますし、世界のさまざまな文化的素養に対する興味も求められます。
 WHO(世界保健機関)に参加して世界で活躍する、統計学を駆使して医療の問題を別の視点から探る、保健行政の立場から立案をするなど、医学部を卒業した人たちが進むべき進路は多岐に渡ります。グローバルという言葉とダイバーシティという言葉をセットで考えてほしいし、毎日起きている世界規模で考えなくてはならない問題に興味のない医師を育てるつもりはありません。
 広島大学の霞キャンパスには医学部・歯学部・薬学部の学生が学んでいます。IPE(インタープロフェッショナル・エデュケーション=専門職連携教育)の一環として、入学してすぐに合同でオリエンテーションキャンプを行っています。キャンパス内にある医学資料館には、国の重要文化財に指定されている「身幹儀」(通称「星野木骨」:日本最初の木製骨格標本)や『解体新書』の初版本などが展示されており、日本の医学史にも深くコミットしています。
 医学部では推薦入試(ふるさと枠)、AO入試を実施しているほか、一般入試の前期日程ではまずA配点(理科重視型)で募集人員の1/2の合格者を決定し、B 配点(一般型)であと1/2 の合格者を決定する方式をとっています。後期日程は面接重視です。このように多様な選抜方法をとっているのも、ダイバーシティの表れです。AO入試入学者には、医学部の4年次から大学院に進んで研究を行い、博士号を取得してから臨床研修に臨むMD-PhDコースがあり、予想よりも多くの意欲的な学生が希望してこのコースに在籍しています。

自分の将来を決めるのはよきメンターとの出会い

 将来、自分の専門(診療科)を決めるときになかなか決まらず迷うかもしれませんが、最後に決めたりプッシュしたりしてくれるのは、メンター(指導者・助言者)の存在が大きいと思います。先輩や先生、自分のあこがれるロールモデルとなるような人との出会いが自分の将来を決定します。ただ、じっとしていても出会いはやってきません。自分から求めて探しに行くのです。恋愛と同じですね。
 私自身が循環器内科を選んだのも、理想とする医師との出会いがあったからですし、大学進学から30年以上海外や関西で過ごしたあとに故郷の広島に職を得たのもめぐり合わせだと思っています。そういえば、私の幼少時に自分や父が病気で続けざまに入院したことがありますが、そのときにお世話になったのが広島大学病院でした。これも何かの縁ですね。

この記事は「蛍雪時代(2015年4月号)」より転載いたしました。

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