
出口 治明さん
立命館アジア太平洋大学(APU) 学長
(でぐち はるあき)
1948年三重県生まれ。京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部で経営企画を担当後、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画株式会社(現・ライフネット生命保険株式会社)を設立し、2013年に同社社長に就任。2018年1月、公募により立命館アジア太平洋大学学長に就任。読書家としても知られ、『人生を面白くする本物の教養』(幻冬舎新書)、『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』(新潮社)、『0から学ぶ「日本史」講義』(文藝春秋)など多数の著書がある。
新学期スタートから間もなく2ヵ月…
自分は大学に入って何を学びたいのか、将来どうなりたいのか。
なかなかはっきりせず、焦っている受験生も多いことだろう。
そんな悩みに「そんなもの、持っていなくて当たり前」と語るのは、保険会社経営者から大学学長への転身を果たした出口治明さん。
読書量1万冊超えの教養人であり、ビジネスの現場を知るリアリストでもある出口さんから見た“大学生が学ぶべきこと”を聞いた。
志望校なんて“仮決め”でかまわない。 大切なのはそこで何を学ぶかということ。
真の“教養”とは知識×考える力
みなさんは、おいしいごはんとまずいごはんのどちらを食べたいですか?もちろんおいしいごはんですね。では、おいしいごはんをA×Bのカタチに因数分解したらどうなるでしょうか。まずAの部分には「いろいろな食材」が入り、Bの部分には「上手に調理すること」が入ります。このふたつを掛けることで、おいしいごはんができます。
次に、みなさんは、おいしい人生とまずい人生のどちらを選びたいですか?これも当然おいしい生活ですね。おいしい生活を同じように因数分解すると、「いろいろな知識を身につける」×「自分の頭で考える(考える力)」となると僕は考えています。
「教養」というタイトルの本を書いてはいますが、実は僕は「教養」という言葉があまり好きではありません。どちらかというと「リテラシー」(literacy:言葉などを的確に理解・分析し、必要な情報を引き出し、活用できる能力)と呼んだほうがいいかもしれません。「知識」×「考える力」が、リテラシーとなります。人間はたんに知っている(知識がある)というだけではダメなのです。
こんな話があります。みなさんは、「にんじん」「ムール貝」はもちろん知っていますよね。でも、それらを掛け合わせて新しい味のラーメンを作ることを思いつくでしょうか。