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受験の合否も左右する!? 知ってトクする睡眠のはなし

睡眠時間を削って夜遅くまで勉強してない?
「睡眠不足は気合いで乗り切れる」と思ってない?
最近、午前中に眠くなってない?
そんなあなたの睡眠は、危険な状態かもしれない。
そして、志望校合格にも悪影響を及ぼしかねない。
受験にも役立つ、睡眠のはなしをお届けしよう。


監修:福田 一彦先生

5時間睡眠が数日続けば、認知力は酩酊状態並みに

 睡眠とは疲労の結果として起こるものではなく、脳内の生物時計によって引き起こされる自発的なプロセスだ。そこが乱れてしまうと、さまざまな問題が生じる。大人で1日約7.5時間、高校生では約8時間の睡眠が必要だといわれているが、現代人、とくに日本人の多くが、これに満たない生活を送っている。午前中に眠くなるという人は要注意。睡眠不足の証しなので、今すぐ自分の睡眠を見直そう。

 睡眠不足が続くと、思考力や集中力、記憶力の低下が起こる。これらの力は、5時間睡眠が数日間続くと、酩酊状態(お酒に酔ってフラフラした状態)と同レベルにまで落ちる。睡眠時間を削って受験勉強をすることが、いかにハイリスクかがわかるだろう。ちなみに、「睡眠により記憶が強化される」と過信しすぎるのも危険。とくに受験勉強に必要な記憶(宣言記憶)については、明確なことはわかっていない。一方で、寝てしまうことで、起きているよりも記憶の忘却率が緩やかになるので、眠気をガマンして勉強するよりは寝てしまった方がいいのは確かだ。

 また、慢性的な睡眠不足や不規則な睡眠は脳を萎縮させ、うつ病や認知症のリスクを高める。さらに、がんの発症率や生活習慣病、免疫系にも影響があることがわかっている。不登校とも密接に関連しており、生活リズムの乱れは不登校のきっかけや長期化の一因になっている。日本人は夜更かしの傾向があるが、なかでも日本の大学生は他国の学生に比べて睡眠時間が極端に短く(約6時間)、心身の不健康感を感じている割合は高いというデータがある。睡眠不足は引きこもりやうつ症状につながりやすく、中途退学の要因にもなっていると危惧されている。

早寝早起きが大原則。睡眠不足でも仮眠はNG!

 では、心身を健康に保てる質の良い睡眠をとるにはどうすればいいのだろうか。睡眠は、いわゆる「レム睡眠・ノンレム睡眠」の2種類ではなく、ノンレム睡眠はさらに浅いものから深いものまで4つの段階に分けられる。浅くなったり深くなったりをくり返しており、一概に「深いからいい」というわけではない。気持ちよく寝た、という熟眠感は、眠りの深さ・長さよりも寝つき中途覚醒に左右される。すぐに寝つき、途中で目覚めずに朝まで眠れれば、睡眠時間が多少短くても寝覚めに良い感覚が得られる。一方、なかなか寝つけず夜中に何度も目が覚める場合は、長時間寝ても熟眠感が得られにくい。人は体温が下がると眠くなるので、就寝直前に体温を上げること(熱いお風呂に入る、過激な運動をするなど)をしない、夜は白い照明を使わない(詳細は『白色照明は寝つきを悪くする』)などを心がけよう。

 睡眠にまつわるさまざまな研究の結果わかってきたのが、睡眠の大原則は「早寝早起き」に尽きるということ。加えて、「就寝・起床時間を固定する」「昼間に長い仮眠をとらない」ことも重要だ。とくに、仮眠については「仮眠で睡眠不足を補う」と誤解をしている人が多いが、長い仮眠は睡眠のリズムを阻害しかねないので注意が必要だ。休日も含めて毎日同じ時間に寝起きして、昼間は活動し、夜にまとめて8時間眠る。このサイクルで過ごすことで、脳のコンディションもぐんと良くなるはずだ。



睡眠を味方につける!

受験生が知っておきたい6つの知識

睡眠について研究が進められるなかで、睡眠に影響を与える要因が明らかになってきた。 ここに挙げた知識をもとに日常生活に少し気をつければ、睡眠を受験勉強の味方につけられるはずだ。


屋外の自然光が生物時計を調整する

 脳内にある生物時計は、目から入る光で昼夜の判断をしている。光といっても、室内の明るさでは不十分。屋外では、たとえ曇っていても室内とは比にならないほどの光量があり、自然光が目から入ることで脳は「昼」と判断する。そして、この生物時計のリズムは24時間よりも少しだけ長く、放っておくとどんどん後ろにズレてしまう。そのため、部屋にこもりきりで自然光を感じにくい生活をしていると、簡単に昼夜逆転してしまうのだ。週末はもとより、授業のない日が増える12月以降はとくに気をつけよう。


仮眠は睡眠リズムの乱れを助長する

 昨夜、遅くまで勉強して眠いから、夕方に少し寝てから勉強しよう。最近寝不足だから、昼寝をして補おう。そんな人は要注意。長い仮眠をとることで、また夜寝るのが遅くなり、睡眠リズムの乱れを助長してしまう。また、仮眠のとりすぎは、アルツハイマー症候群などの病気のリスクを上げるという研究結果もある。睡眠の鉄則は、夜にしっかり眠ること。睡眠不足を感じたら、仮眠はガマンしてその分早く寝てしまおう。どうしても眠いときは、15分以内なら仮眠をとってもいいが、あくまでも苦肉の策と心得よう。


白色照明は寝つきを悪くする

 住宅照明には白い光とオレンジの光があり、とくに勉強部屋では白い光を使っていることが多いだろう。実は、白い光の中に含まれるブルーライトが、睡眠を阻害する一因になっている。視神経にはブルーライトを検知するセンサーがあり、ブルーライトに反応して脳が覚醒モードになってしまうのだ。白い光の部屋で過ごした人は、1週間で1時間就寝時間が遅くなった、という実証実験もある。一方、オレンジの光の部屋で過ごした人には、その傾向は見られなかった。夜寝る前の時間は、オレンジ色の照明で脳を睡眠モードへと誘導しよう。


夜眠いときの勉強は百害あって一利なし

 眠いときに勉強しても効率が悪い。理屈ではわかっていても、寝ることに罪悪感があり、無理して起きてしまう…。実はこの行動は、記憶の定着率にも悪影響を及ぼしかねない。早寝の効能は早起きだけではない。覚えたことを忘れにくくする、という受験生にとって重要な効能もあるのだ。起きている限り脳には新しい情報がどんどん入ってくるので、覚えておきたいことが記憶から抜け落ちやすくなる。一方、早く寝てしまえば新しい情報は入ってこないので、そのぶん覚えたことを忘れにくくなる。ダラダラ起きていればいるだけ、損をしてしまうのだ。


休日と平日の時差は±1時間以内

 睡眠リズムを乱さないためには、休日も平日と同じ時間帯に寝て、起きて、食事をとることが重要だ。平日との差を1時間以内に収めるようにしよう。ギャップが大きくなると、時差ボケのような状態になってしまう(これを「社会的時差ボケ」という)。平日は早寝早起きの生活をしているが週末はリズムが崩れる子どもは、平日も休日も遅寝遅起きの子どもと同じくらいの健康状態になってしまう、というデータもある。せっかく平日に早寝早起きをしても、休日の過ごし方で一変してしまうなんてもったいない。休日も早起きして、1日をフル活用しよう。


緊張で眠れなくても実は眠っている

 試験本番が近づくと、緊張や不安で眠れなくなることもあるだろう。そんなときには、気にしないのが一番。気にすることで余計に寝付けなくなり、悪循環だ。人は自覚がなくても眠っている時間帯があり、実験室で睡眠を記録すると、「全然眠れなかった」と被験者が感じていても、実際は眠っているケースがほとんどだという。だから、過度な心配は無用なのだ。もう一つNGなのが、夜眠れなかったからと長い仮眠をとること。先述のように、仮眠は睡眠リズムを乱してしまう。よく眠れなかった翌日は早く寝て、乱れをリセットしよう。


「昼食後に眠くなる」はウソ! ?

 昼食後は消化のために胃に血液が集まるから眠くなる…というのは、睡眠研究者の間では否定されている。では、なぜ昼食後の時間帯に眠くなるのか。そのメカニズムはまだ明らかにはされていないが、脳内の生物時計には約24時間のリズムのほかに12時間のリズムがあり、その影響ではないかと考えられている。就寝時刻の約12時間後であるお昼時に眠くなる、というわけだ。この眠気は、時間が経つと収まる。眠いのはわかるけど…今夜の快眠のために、グッとこらえて乗り越えよう。

この記事は「螢雪時代(2017年9月号)」より転載いたしました。

著者プロフィール

福田 一彦先生

江戸川大学人間心理学科教授・同大睡眠研究所所長。早稲田大学大学院文学研究科修了。医学博士。専門は実験心理学。心身のプロセスに関連する睡眠のリズムについて研究し、住宅メーカーと照明の共同研究を行うなど、早寝早起きを実現するプロジェクトに多く携わっている。

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