モチベーション維持や成績の伸び悩み、志望校選び…。
2学期を控えて悩みを抱える受験生も少なくない。
そこで先輩たちに受験生の悩みに対するアドバイスを聞いた。不安を解消して、受験勉強の後半戦へ!
▼座談会・出席者/先輩プロフィール▼
東京大学 理科二類1年 S・Tさん (北海道札幌東高校卒)
≪ 2学期の勉強の秘訣は? ≫
学校の授業を受験勉強に活用。定期テストもおろそかにしない。
地方高校出身で、志望校が同じ友だちが少ないなか、見事現役合格。「自分は模試には弱いけど、本番には強い」と語るように、模試結果をじっくりと分析し、あらゆる事態を想定した入念な戦略を立てて本番に臨む努力家。現在は、慣れない家事と、希望する学部に進むべく勉強に励んでいる。
東京海洋大学 海洋科学部2年 S・Aさん(千葉県立匝瑳高校卒)
≪ モチベーションを維持するには? ≫
夏休みの終わりや模試など、区切りごとにごほうびを設けて、やる気を奮い立たせる。
小さい頃から大好きだった水族館への就職を夢見て、東京海洋大学に進学。高3の6月までバレーボール部の活動と受験勉強を両立させ、引退後も部活動で培った集中力を武器に受験を乗り切った。現在は大学に加えて、シンポジウムで知り合った研究者からも刺激を受け、意欲的に勉強に取り組んでいる。
一橋大学 法学部1年 M・Tさん(宮城県仙台第一高校卒)
≪ 本番で力を発揮するには? ≫
本番でいつもの60%の力しか出せないなら、常に120%の力で練習しておく。
高3の10月まで陸上部の活動を継続し、毎日15キロ程度走る練習を続けながら、受験勉強では密度の濃い学習を意識。適度の休息を挟みながら、ムリなくコツコツと勉強を続けた。以前から興味のあった法学部に合格。現在は国際法にも興味を持つようになり、2月に短期海外留学も予定している。
早稲田大学 文化構想学部1年 T・Yさん (東京都立青山高校卒)
≪ 集中力をアップするには? ≫
学習前に必ずやるルーティンワークを決め、スムーズにオンオフを切り替える。
高1の冬から10か月間をオーストラリアで過ごした国際派。悩みながらも自由参加の高3秋の文化祭に参加し、夏休みをその準備に費やした結果、ミュージカルで大賞を受賞。やりたいことをやり切ったことで秋以降は悔いなく受験勉強に没頭。現在、幅広い知識を学び、さまざまな分野に興味を抱いている。
受験の悩みについて
[Q] どうすれば、秋からの勉強がうまくいく?
M・Tさん
2学期、学校が始まると、夏休みより自習に割ける時間が減るのに加えて授業の予復習も必要なため、勉強のペースが崩れがちです。そのうえ私は高3の10月まで部活動をやっていた分、余計に勉強に割ける時間が少なく、秋の学習は苦戦しました。そこで私が考えたのが、本当に必要な勉強を見極めて取り組み、短時間で最大の効果を得ることです。そのためには、優先順位が低いと判断した学習を切り捨てる勇気も必要だと思いました。
S・Tさん
私も、自分の課題を明確にすることが大切だと思います。私の秋以降の課題は、それまで十分な時間を割けなかった理科をきちんと勉強することでした。夏休みが終わると「燃え尽き感」におそわれてモチベーションを保てなくなることも多いようですが、私自身は「やらなくては」という切迫感に追われていたので、「燃え尽き」を感じるヒマもなかったというのが正直な感想です。秋の模試で成績アップを目指すという、目先の目標を立てたのも、モチベーションアップに役立ちました。
S・Aさん
「燃え尽きを感じるヒマもなかった」というのは、私も同じです。夏休みに基礎を充実させるという目標もあまり達成できず、夏休みの模試の結果もよくなかったことから、焦っていました。科目ごとの時間配分や勉強方法を見直して、秋以降の学習に取り組みました。
T・Yさん
夏休みの多くを9月の文化祭の準備に費やし、ほとんど勉強できなかったことから、私も秋は焦っていました。思い切りやりたいことをやったことで、文化祭後は、スパッと受験勉強に切り替えられました。
[Q] ついスマホを見てしまう…先輩の対処法は?
S・Tさん
動画やSNSなど、スマホを手にするといつの間にか時間が経って…ということ、ありますよね。私の塾は勉強中、スマホを預けるスタイルでした。帰宅まで集中して勉強に取り組み、自宅では勉強しないようにしました。
T・Yさん
私は高3になった時からSNSを使わないようにしました。
S・Aさん
私は単語や学習時間の記録などの学習アプリを利用していて、完全にスマホを断つわけにはいきませんでした。スマホを操作しているとつい動画などを見たくなってしまい、必至でこらえていましたが、誘惑に負けてしまうこともありました(笑)。そんな時に役立ったのが、あらかじめ決めた時間がくると画面が自動的にフリーズするように設定できるアプリです。それ以来、「休憩10分」など決めたらそれ以上をスマホに費やすことなく、ムダに時間を過ごすことがなくなりました。
[Q] 成績の伸び悩みはどう受け止めた?
M・Tさん
ある本に「刀は熱して、たたいて、それで初めて切れるようになる」という言葉がありました。受験も刀と同じだと思います。夏休みまでの基礎固めで知識を増やすのが、刀を熱すること、2学期以降はその知識を磨くことが刀をたたくことではないかと思うのです。ただ知識が増えただけでは通用しない、身につけた知識の精度をあげてこそ「切れる刀」の状態、つまり使える知識となって成績が伸びるんじゃないかと…。こう考えるようになってから、私は模試などで結果が出なくても「今はまだ伸びる時期ではない」と思えるようになりました。
S・Tさん
成績が伸びないのは、単にアウトプットする練習をしていないからです。毎日インプットし続けていれば、知識は必ず増えているので、今は成績を伸ばすための土台作りの時期ととらえて、焦る必要はないと思います。10月頃から、過去問演習で知識のアウトプットに取り組みましょう。
T・Yさん
私も焦る必要はないと思います。模試は良くも悪くも模試であり、本番の入試とは別物です。出題者も、模試は予備校などその模試の会社の人で、本番のように大学の先生ではないのです。過去問でしっかり得点できるよう、学校の授業や試験をおろそかにしないことがまずは大切です。
S・Aさん
私も、模試の結果をさほど深刻に受け止める必要はないと思います。夏までの学習を糧に、これまで通りのペースでコツコツと努力し続けることが大切です。
[Q] 受験勉強って、将来、役立つの?
M・Tさん
私は文系なので、正直、受験勉強で学んだ理科の知識を具体的に使う予定はありません。しかし例えば、身のまわりで起こっていることを、自分が知っている理科の知識で説明できることがわかると、グッと興味がわいたりしませんか? 受験勉強で学ぶことは、知識を広げ、深めることだと思います。それらの知識は、大学に入ってから学びのきっかけになります。私は文系ですが、文系理系関係なく、幅広い教養が必要だと感じています。
S・Tさん
直接的には、理系の人は、受験勉強の内容が大学で学ぶ専門分野の基礎知識として役立ちます。それ以上に私は、受験勉強そのものが自分の能力を高めるチャンスだと思うのです。合格という目標に向かって学力や時間を逆算する、計画を立てる、実行する、計画を修正するという体験はなかなかできないのではないでしょうか。試験に合格する、すなわち勝つために、練習して本番で最大限の力を発揮する勝負ととらえると、受験は、社会に出て勝ち続けるための前哨戦だと思います。
T・Yさん
自分に足らないものを分析して、計画を立てるという受験勉強の経験は、これから確実に役立つと私も思います。受験は、たしかに運が味方する部分もありますが、運を引き寄せる努力をするか、しないかで、合否はもちろん、大学に入ってから悩んだ時にとる行動も変わってくるのではないでしょうか。
S・Aさん
私は受験勉強を通じて、家族や周囲の協力を実感しました。模試や大学入試のお金を出してくれるのは両親です。また私の実家は当番制で家事をやることになっていたのですが、高3の時は当番を免除してもらったりもしました。それまでは何でもひとりでできると思っていましたが、勉強させてもらえるありがたさに気づいたのです。そのうえで、自分を律してスケジュールを管理・実行するなど、受験勉強をあれだけ頑張れたことも、入学後、心の支えになっています。
大学入学後の悩みについて
[Q] 新しい友だち、どうやってつくった?
M・Tさん
入学当初は心細かったですが、クラスや部活動の友だちができました。正直、入学直後の新歓時期にムリしてつくった友だちとの付き合いは、その後長続きしませんでしたね(笑)。少人数の授業などで自然とできる友だちがよいみたいです。
T・Yさん
1年生の必修授業で週に何回か、定期的に顔を合わせる人が友だちになりやすいです。選択授業の中には学年問わず履修できるものもあるため、隣に座った人が3年生ということも…。知らない人に話しかけるのもちょっとためらわれます(笑)。
S・Tさん
サークルやバイトなど、何かに参加して、いろいろな人と交流してみるのが手っ取り早いと思います。
S・Aさん
サークルは、他学部・他学年の人と知り合えるのがよいですね。私は2年生なので、この春、所属するサークルに入ってきた後輩たちと、食事会などを通して交流しています。私たち2年生は、体験することがすべて初めてという1年生の大変さがわかっています。それだけに1年前に自分が戸惑った授業の履修方法など、サークル以外のこともいろいろ教えてあげたいという気持ちがあるので、先輩に話しかけられたら遠慮せずに元気に対応したり、興味を持って話を聞いたりすると、打ち解けやすいのではないでしょうか。
T・Yさん
私は大学に入ってからサルサダンスを始めました。サークルには留学生や社会人の方も多く、上下関係もさほど厳しくありません。驚いたのは、高校時代まで先輩のことを「○○先輩」と呼ぶのが当たり前と思っていたのですが、大学では○○先輩ではなく、名字に“さん”付けが一般的だと聞いた時です(笑)。
M・Tさん
私は大学に入って、新しいことにも気軽に挑戦できるようになったと感じています。高校時代は自分が置かれた環境のなかで生活していたという感じで、今思えば自分から能動的に動くという意識が低かったです。部活動やバイト先でも、以前より気軽に初対面の人に話しかけるなど、自分が変わったと思います。
S・Tさん
私も高校時代は自分から動くタイプではなかったのですが、大学生になってからは人に会いに行くなど積極的になりました。
[Q] 初めてのひとり暮らしが不安…
S・Aさん
私は学生寮でひとり暮らしをしています。隣にどんな人が住んでいるかわからないアパートは不安という人、特に女子は寮も検討してみてはどうでしょうか。大学の敷地内にあるので、授業の前、ギリギリまで寝ていられるというメリットもあります(笑)。
S・Tさん
私もひとり暮らしを始めて、掃除と洗濯を頑張っています。自炊はせず、学食など価格の安い店を利用して、お金のやりくりをしています。
M・Tさん
私は大学の授業の前、早朝のコンビニバイトをしています。高校時代から陸上部の朝練のため早起きの習慣があったので、ムリに特別なことをしているわけではありません。
S・Aさん
私は寮に入った時に母から渡された家計簿でお金の管理をしています。昨年の12月から3月頃、忙しくてつけられなかった時期は、お金の出納がわかりにくかったため、それ以降はきちんとつけることを心がけています。実家では食べ終わった後の食器や洗濯物も、いつの間にか洗って片づけてくれていて…。実は私は掃除があまり好きではないこともあり、ひとり暮らしをすると、家事をすべて親がやってくれる実家のありがたみがよくわかります。
S・Tさん
ひとり暮らしを始めて、自然と電気をつけっ放しにしなくなりました。実家では、「電気をつけっ放しにしないで」と両親によく注意されていたのですが、電気を切ることなど、あまり気にしていなかったんですね(笑)。
T・Yさん
私は実家で暮らしています。ひとり暮らしをした人としなかった人とでは、大学卒業時の顔つきが違うと聞いたことがあります。生活すべてを自分で管理しなくてはならない状況は、それほど得るものが大きいのだと思います。関西の大学の授業を履修できる制度があるので、それを利用してひとり暮らしをしたいです。
[Q] 大学の勉強って高校と何が違う?
M・Tさん
高校と違って、授業では発表やプレゼンの機会が多いので、最初は緊張しました。プレゼンなどは自分の意見を言いっ放しではなく質疑応答も受け付けます。質問されて頭が真っ白になってしまわないよう、あらゆる質問を想定して、自信が持てるくらい準備して臨むことが必要です。
S・Tさん
私も準備は大切だと思います。プレゼンでは原稿をつくるだけではなく、時間を計ったり、声の大きさや目線の位置を意識して発表の練習もしておくとよいでしょう。試験でも、よく「本番に力を発揮できない」という人がいますが、本番に向けてしっかりと準備するという意味では、入試も大学のプレゼンも同じではないでしょうか。私は受験生時代、緊張や不安から自信のあった模試で失敗した経験から、入念な戦略を立てて本番に臨んだことも、合格につながったと思っています。
T・Yさん
私はまだ、大学の授業が高校とまったく違うという実感はさほどないですが、大学ならではの課題としてレポートの提出があります。まだ回数が少なく、一般的にレポートはどのように書くものなのかということもわからないため、論文の書き方のハウツー本を読んだり、先輩に聞いたり、先生が授業中に触れた新聞記事などを読み漁ったり…。手あたり次第、できることから取り組んでいます。
S・Tさん
「大学で学ぶ問題に答えはない」とよく言われます。まだ出合ったことはありませんが、こういう「答えのない問題」は、どんな解答をしても間違いではないと思うのです。自分の考えをしっかりとまとめることが、今後大切だと感じています。
S・Aさん
私が通う東京海洋大学では、航海実習など、高校時代に経験しないような実習があり、初対面の人と交流する機会も多いです。また、科学館のスタッフとして子ども向けの企画を催した時には、多くの子どもに接するうちに子どもが興味を持つ話し方や応対などがわかってきました。以前は知らない人と接するのが苦手だったのですが、授業で身につけられるこうしたスキルは、単なる知識以上に今後、役に立つものだと思います。
大学って、こんなに楽しい!
T・Yさん
大学に入ってからサルサダンスとスペイン語を始めました。サルサダンスのサークルでは、社会人や留学生も多く、さまざまな人と接することができるのも楽しいです。
S・Aさん
大学で使っている教科書は、鯨やシャチなど海の動物に関するものも多いです。学べば学ぶほど、今まではただ好きなだけで勉強していなかったことに気づかされます。
S・Tさん
英語のスピーキングの授業では、自分が話した英文を録音して文章にし、文法をチェック。手直しして再録音したものを提出するものもあります。
M・Tさん
大学の教科書は、法律に関する洋書も多いです。言葉で人や社会を秩序立てられるという意味で、以前から興味を持っていた法律を学んでいます。
この記事は「螢雪時代(2017年9月号)」より転載いたしました。
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