地球規模で進行する食糧・資源問題などを前に、農学と関連するさまざまな学問分野から持続可能なより良い解決方法を探ってみる!
全人類を飢餓から救うために
不可欠な学問
農学・畜産学・水産学
国連によると、現在、地球上には約77億もの人が生きているが、そのうちの約10%の人たちが飢餓に苦しんでいるという。地球上の総人口は今後も増え続け、2050年には約97億に達するという予測もされている。
地球全体での食糧問題や人口問題、さらにはエネルギー資源問題の解決法の探求にダイレクトに結びついているのが、農学や畜産学、水産学分野の各学問だ。
そのなかでもっとも歴史が古いのが農学系の学問だ。ひと口に農学といっても、その専門分野は多岐にわたる。
まず、農学では、長年、人間の食糧となるさまざまな農作物の生産性を向上させるための研究・改良が行われてきた。
農芸化学では、野菜や穀類などを分子・細胞レベルでとらえ、その生命現象や生物機能を追究することで、より生産性の高い作物を産み出している。最近では、応用生物(生命)科学、バイオサイエンスといった学科名を冠する大学も多い。
この分野では、文字通りバイオテクノロジーを駆使してさまざまな研究が行われており、対象は農作物に限らず、医薬品や化粧品などとても広い。また、各種発酵食品の製造に特化した醸造学も、この分野の学問分野のひとつだ。
ほかにも、農業活動のすべてを経営学的視点でとらえ、低コストで高利益を上げる方法を探る農業経済学、農業の生産性を上げる農機具の開発を行う農業工学がある。
さらには、地球環境保全に大きく関わる森林の保護や再生、木材などの森林資源の有効活用を研究する森林科学もある。
畜産学分野でも
バイオテクノロジーとの関りがとても深い
畜産学では、牛やブタ、鶏などの家畜動物を対象に、バイオテクノロジーを駆使して、安全で生産性の高い家畜や病気などに強い家畜を産み出すための研究が盛んだ。
さらには家畜から生み出される食肉やハム、牛乳・チーズ、卵などの食品が高品質に加工される技術や、安定的に供給される流通システム等についても研究が進められている。
この学問分野に含まれるものに動物学がある。動物学が対象とするのは、実験動物やペット、介護動物、さらには動物園で飼育されている各種動物、野生動物などで、これらの動物たちの生態や生理、分類などの研究が行われている。なお、この学問は生物学と共通する学問領域も多い。
獣医師になるには
6年間かけて獣医学を学ぶ
獣医学では文字通り獣医師を養成する。現在、全国には国公立合わせて17の学部がある。獣医学は6年制で卒業と同時に獣医師国家試験に合格する必要がある。1~4年次までは、大学での講義を中心に、さまざまな獣医学を学ぶ。そして、5年次からは各種動物病院や家畜保健衛生所、畜産試験場、動物園等で臨床実習が行われる。
最近では国公立の大学間で、共同で獣医学教育を行っている。岩手大学と東京農工大学、鹿児島大学と山口大学などだ。東京大学は宮崎大学と大阪府立大学と連件して獣医学教育を行う。
この場合、まず、どちらかの大学の獣医学部に入学し、その大学に籍を置き、在学中、連携する他の大学の授業を受けられる。各大学の教員や学生が双方の大学を訪れることもあれば、インターネット等を利用した遠隔講義なども行われている。
食糧資源としての水産物や
海流や海底にある資源の有効活用も研究対象
水産学は水産業という食糧生産産業を背景に、おもに海洋に生息する動植物を対象に、さまざまな視点から科学する学問だ。
具体的には、海洋や河川に生息するさまざまな生物の生命・生理機能などのメカニズムを探求することで、それらを生物資源として長い年月にわたり有効利用できるための技術開発を行う。
たとえば、世界規模での乱獲から絶滅が危惧される魚類の完全養殖法などの確立を目ざす技術開発が進められている。また、海洋が含む化学物質や動植物プランクトンなどを、有効活用できる方法を探る研究もある。
一方、食品としてのさまざまな水産資源を、生産から流通、消費にいたるまで、安全かつ安定的に供給するためのシステムづくりなども研究対象となっている。
さらには、海流や海底といった海洋環境の保全・利用法も探っている。具体的には、海流や洋上に流れる風をエネルギー資源と捉え、それらを効率よく実用化するための技術開発も行われている。