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研究者インタビュー「この学問の魅力! 法学部系統」東京都立大学 天野晋介 先生

  • 【学部選びガイド 2020年版】法・政治・経済・経営・商・社会・社会福祉・国際関係学部系統 編
  • [2020/11/6]

「社会あるところ法あり」よりよい社会づくりへの貢献が法学の魅力であり、大きなやりがい

《公立》東京都立大学 法学部 准教授
天野 晋介(あまの しんすけ)先生

1979年生、兵庫県出身。同志社大学大学院法学研究科博士課程(後期課程)単位取得退学。2008年より現職。専門分野は労働法。最近は、企業における労働法コンプライアンスの徹底を図るための研究を行っている。主な論文は、「会社法429条と取締役の労働法遵守体制構築義務」(季刊労働法253号165-176 頁)等。

先生のご専門について教えてください。

 私は、労働法を専門としています。労働法が対象とする労働契約とは、労働者が使用者(企業)に対して「労務提供(働く)」をし、一方、使用者が労働者に「報酬(賃金)の支払い」を約束する契約です。本来、契約は対等な関係の間で締結されるものであり、その内容(賃金・労働時間等)は両当事者が自由に決めてよいものです。しかし、労働契約においては、次の理由から労働者の方が弱い立場にあります。①使用従属性(会社の命令に従って働いている)、②経済的従属性(生活するための糧である賃金を使用者から得ている)、③交渉力・情報力格差(労働者個人と企業組織との間のパワーバランスの違い)。そこで、労働契約において関係的弱者である労働者を保護するために労働法があるわけです。

 労働法というと、労働者のための法律というイメージですが、一方で企業にとっても重要な法なのです。


“ブラック企業”とは日本特有のものでしょうか。

 海外にも労働法を遵守しない企業はあるでしょうが、ブラック企業・過労死という問題は、わが国の雇用慣行、特に終身雇用制度が大いに影響していると思います。2019年に経団連会長の「終身雇用の見直し」発言がありましたが、終身雇用の考えは未だ根強く日本の雇用社会に残っています。終身雇用は、①新卒一括採用、②転職の困難さという点にも影響を与えています。そのような社会において労働者は、転職の困難さゆえ今の企業との関係を維持し続けなければならず、会社の無茶な命令にも従わざるを得ない、それがブラック企業・過労死という問題をもたらしているのではないでしょうか。

 自己防衛の手段としては、2つ考えられます。1つは、自らの専門性を高めることによって転職市場での競争に勝ち抜くだけのスキルを身につけること。2つ目は、労働法の知識を身につけることです。ゲームをするにもスポーツをするにも、それぞれに独自のルールが存在します。一方、働いているにも関わらず、働く上でのルールである労働法について理解していない人が多いと思います。確かに、ゲーム、スポーツのルールと違い、法はとっつきにくい、難しいかもしれませんが、ルールを知らないと損をするのは労働者です。そのため、自らの身を守るためにも、働くためのルールを是非とも理解していただきたいのです。大学生や高校生もアルバイトをする機会がありますが、アルバイトも労働者であり労働法を知っておく必要があります。


テレワークは今後どうなるでしょうか。

 新型コロナウイルス感染拡大防止として急速にテレワークがクローズアップされましたが、私は今後もテレワークの普及・拡大は続けるべきであると考えます。通勤時間がない(満員電車の苦痛がない)というほか、少子高齢化社会の観点でもメリットがあります。

 現在、わが国は少子高齢化社会を迎えています。少子化の要因の一つが、共働き世帯の増加です。保育所の不足もあり、共働き夫婦が子どもを育てるには厳しい環境といえます。そのような労働者にとって、テレワークは仕事と育児を両立させる望ましいツールとなります。また、超高齢社会を迎え、親の介護を行う必要がある労働者が今後も増加していきます。そういう労働者にとっても、仕事と介護を両立させることができる働き方といえます。

 さらに、近い将来において日本の労働力不足は深刻な社会問題になると考えられています。労働力不足の解決策としては、AIの導入や外国人労働者の受け入れ等が議論されていましたが、外国人労働者の受け入れはコロナの状況下では厳しいため、労働力不足の方法としてあるのが、高齢労働者の活用です。このような社会において、テレワークは高齢労働者の活躍を促すものになると考えます。


東京都立大学法学部の特徴を教えてください。

 2020年4月から「東京都立大学」と名称が変更されましたが、旧都立大時代、首都大学東京の15年間、また今後も本学の特徴は一貫しています。それが、充実した少人数教育の実践です。少人数教育の魅力が最も発揮されるのが、演習、いわゆるゼミという講義です。本学法学部のゼミでは、各教員が10人前後の学生を相手に各教員の専門分野についての研究成果を踏まえた教育をしていきます。ゼミでは、教員や学生同士の議論を通じて、自らの知識・研究の幅を広げることができます。

 法学部卒業後は、多くの法学部卒業生が民間企業に就職、また、公務員試験に合格し公務についています。法学部から毎年コンスタントに50人程度の学生が国家公務員・地方公務員の道に進んでいます。

 法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)を目指す学生には今年度から、法学部と法科大学院の連携強化という意味も込めた法曹コースが設置されます。これは、成績優秀な学生は法学部を3年 間で修了することを認めて、法科大学院への進学を可能とする制度です。この制度によって、より早く、法曹三者になる道が広がることになります。

 研究者として法学の道を究めたい、マスコミ業界・シンクタンク・民間企業へと高度な知識を身に着けたうえで就職したいと考えている学生は、大学院への進学という道もあります。

 なお、学生募集は法学科一括で実施され、2年次から法律学コースと政治学コースに分かれます。


受験生へのメッセージをお願いします。

 高校時代から将来の自分の姿をイメージして、この大学、この学部と決めるのは難しいと思いますが、どのような分野に進むにしても、「社会あるところ法あり」と言われるように、法学を勉強することは間違いなく皆さんの糧になるでしょう。ここまで述べてきたように労働法は社会の情勢と密接に関連していますが、たとえば刑法も飲酒運転による事故や“あおり運転”の増加により改正されるなど、法学は社会と強く結びついた学問です。

 今年は、センター試験に代わり、新たに大学入学共通テストが始まる年です。また、人類が初めて直面するウイルスとの闘いもあり、皆さん不安でいっぱいでしょう。ただ、このような状況だからこそ、悲観せず、物事を前向きに捉えていただきたいと思います。常にポジティブに将来を見据える。新しいことに怯えず、チャレンジしていく。こういう前向きな姿勢を大事にしてほしいと願っています。


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