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研究者インタビュー「医学部系統 この学問の魅力!」九州大学 飛松省三先生

  • 【学部選びガイド 2020年版】医・歯・薬・看護・医療・栄養学部系統 編
  • [2020/8/6]

医学は日々、深化してゆく学問。
人に寄り添いながら、一生学ぶ姿勢が大切

《国立》九州大学 医学部 教授
飛松 省三(とびまつ しょうぞう)先生

1955年佐賀県生まれ。1973年鹿児島ラ・サール高校卒。1979年九州大学医学部卒。1983年九州大学医学部神経内科助手。1985年、シカゴ・ロヨラ大学医学部神経内科客員研究員。1987年帰学後、助手、講師を経て1999年より教授。脳の神経ネットワークの仕組みを解明し、病気の診断や治療、予防に役立てるために、脳研究を進めている。

飛松先生のご専門・研究内容を教えていただけますか。

 私の専門は、脳科学・神経科学・臨床神経生理学です。脳の病気は、アルツハイマー病やパーキンソン病など難病が多く、その原因や治療法すらまだ確立されていない病気がたくさんあります。臨床神経生理学とは、脳から脊髄、末梢神経、筋に至る広い範囲の機能とその病態を生理学的に研究する学問分野です。患者さんに心身の負担を与えない方法で、ヒトの脳の働きを「頭を開けずに、脳を見る、測る、探る」ことを目的として研究を進めています。

 認知症の代表的な病気であるアルツハイマー病は、海馬という記憶に大事な場所が障害を受けて、記憶力が低下します。また、自動車の運転が下手になったり、外出先で迷子になったりすることがよくあります。よく聞く高齢者の車の運転ミスも、アルツハイマー病の前段階や早期で認知機能が衰えるためです。これらは、記憶障害だけではなく空間認識に重要な脳の頭頂葉という場所が障害を受けることによって起こります。この頭頂葉の働きを詳しく調べて、認知症の早期診断が可能になる技術を開発しました。

 もともと、生きている人の脳の機能とその病気に興味があったため、脳神経内科の専門医と医学博士を取得後、アメリカに留学しました。帰国後は、その経験を生かして、臨床神経学の1分野である臨床神経生理学教室に移籍し、脳の研究を継続しました。臨床神経生理学の目的は、脳の機能を適切な方法で評価し、神経病の診断・治療に役立てることです。


脳の研究を病気の診断や予防にどのように活かされるのでしょうか。

 たとえば、てんかん(けいれんや意識障害を起こす病気)の診断に脳波は必須ですが、てんかんと見誤る波形がたくさんあります。てんかんと診断されると、少なくとも2年間は毎日薬を服用しなければなりませんし、自動車も運転できません。てんかんという病態を理解するには、脳波だけでなく、先端的脳機能計測法を駆使した研究が必要です。このように、種々の方法でヒトの脳機能を正確に評価し診断することが、病気の治療に役立つと考えています。

 脳研究を医療に活かすために生まれた「ニューロリハビリテーション」という分野は、中枢神経の働きを種々のデバイスを用いた上で、脳のもつ可塑性を利用して脳の機能を改善することです。私たちの研究では経頭蓋脳刺激法があり、磁気や微量な電流を脳に流して、脳の興奮性を一時的に変える(高める、または抑制させる)ことができます。これを繰り返すことにより、障害を受けた脳の機能を回復させることを目的とするのが、ニューロリハビリテーションです。


医学部で学ぶために求められる姿勢や資質はどのようなものでしょうか。

 現代医学には多数の診療領域があり、1つの診療領域も細分化されています(例:脳神経内科専門医で頭痛専門医やてんかん専門医)。したがって、入学前にその専門分野を決めることは不可能です。また、入学してすぐに専攻分野の奥深さを知ることは難しく、ある程度大まかに「この分野に興味がある」と考えたうえで、実際に臨床研修を経て決める人が多いと思います。

 医療は「人に寄り添う」ことが基本で、まずは「悩める患者さんを救いたい」という動機付けが必要です。また、一人の医師が解決できることは減ってきており、メディカルスタッフと協調してワンチームで治療に当たることができる幅広い視野を持つことが重要です。医学部に入学するには、かなりの学力が要求されますが、独りよがりで他人と協調できない人は向いていません。一方では、臨床医ではなく研究医という選択肢もあります。

 学力が優れているから医学部に入るという人は、私の本音では、入学してほしくありません。医学部の教育課程は、教養教育(九州大では基幹教育)、専攻教育(基礎医学・臨床医学)、臨床実習に大別されます。学力というのはあくまでも高校卒業時の水準であり、積み重ねてゆく医学教育とはほとんど関係ありません。ちなみに九州大では、入学時の成績と医学部卒業時の成績は比例しないということがわかっています。高校時代に「能動的に学習する」という態度を身につけておくことが、医学部では特に要求されます。

 医学は日々、深化してゆく学問です。10年前には常識だったことが非常識ということもたくさんあります。新しい病気の概念や治療法も日進月歩です。「一生学ぶ学問」というところがおもしろくもあり、難しくもあります。「学ぶ」には主体性をもって継続しなければなりません。いわば、頂上の見えない山を一歩一歩登って行く学問です。また、ある問題を解決したら、次の新しい問題が見つかるという魅力的な分野でもあります。


医学部を目指す受験生へのメッセージをお願いします。

 私が47年前に九州大に入学した頃とは比較にならないほど、テクノロジーの進歩により医学は発展しました。例えば、脳の CT や MRI 検査が臨床に導入され、脳神経の病気の診断は飛躍的に進歩しました。それでも、病気の本態が解明されたわけではありません。

 今の AI(人工知能)は第3次ブームです。AI は静止画像の解析には強いですが、「教師データ」を人間が何千例とそろえて学習させないと役に立ちません。脳の機能は、2次元の平面画像や3次元の立体画像では解明できません。脳は、時間を加えた4次元のダイナミックな機能をもつ臓器であり、それを今世紀中に AI で解明できるかどうかは疑問です。つまり、私の専門分野の脳ですら、解決すべき問題が数多くあります。今パンデミックになっているコロナウイルス感染症も、AI では予測できないものです。

 新規のテクノロジーやブレークスルーの発見をいかに活用するかが、未来の医療の課題です。医師もそれを使いこなせる知識・技能・態度を要求されます。

 変化が絶え間なく起こり、その波及効果が加速度化するのが未来医療です。2045年には AI が人間を凌駕するという予測がありますが、機械だけで診断や治療はできません。人間がものを考えることが大事なのは変わらないのです。

 21世紀の医学は、遺伝子治療や再生医学・医療など重要で魅力あふれる分野が数多くあります。私の研究する脳の分野もますます発展していきます。人の生命現象に興味をもち、積極性と活力をもって医学に取り組むことができる学生さんが、医学部に進学することを期待しています。


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