薬学部には4年制と6年制の2つがある。
それぞれに目的が異なるので、どちらに進むか入学前にきちんと考え、後悔のない選択をしよう!
薬剤師を目ざす
6年制の学びを垣間見よう
薬学部には、薬剤師国家試験の受験資格が得られる6年制とおもに創薬に関連するさまざまな研究者を養成する4年制の2つのコースがある。ここでは、それぞれのコースでの学びの内容を見ていこう。
まず6年制での学びは、医師や歯科医師養成課程と同じように、全国の大学で「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」(以下、コア・カリ)が、カリキュラムの大きな柱となっている。コア・カリは、将来、薬の専門家である薬剤師としてさまざまな活動に従事する際、必須となる知識や技能を身につけるための教育カリキュラムだ。
同時に大学ごとに独自のカリキュラムも組まれており、その割合はほぼ7対3となっている。
具体的な教育内容として、まず1年から2年次にかけては、薬学を学ぶうえで基礎となる導入科目、さらには基礎薬学を学ぶ。基礎薬学には、無機・有機化学、物理化学、生化学などがある。同時に、将来、薬剤師としてチーム医療の担い手となる際、必須となる法律や医療倫理についても学んでいく。
そして、2年次からは薬学と人体の関係に関する各教科を学ぶ。具体的には、薬理学や機能形態学、病態生理学などがある。
たとえば、薬理学とは医薬品が人体でどのような作用をするかについて、各薬品の化学構造や薬効などを中心に学ぶ学問だ。
なお、多くの大学で1年次に、将来、医療にかかわる一員としての自覚や覚悟を促すために、病院や薬局などへの見学をメインとした実習を行っている。
3~4年次は薬学の専門科目を次々と学ぶ
3年から4年次にかけては、薬学に関する専門科目が学びの中心となる。
代表的なものとして、各種薬剤が体内でどのように作用するかを学ぶ薬剤学、さまざまな病気とその症状に対し、治療効果のある薬剤について学ぶ薬物治療学などがある。ほかにも、薬物の開発から国による承認を得られるまでのプロセスを学ぶ医薬品開発論などもある。
4年間をかけて薬学の基礎から専門的な各学問をきちんと身につけると5年次から病院や薬局などでの実習を行うことになる。
その前に、実習に際して十分な知識や素養が備わっているかを判断する2つの「薬学共用試験」をクリアする必要がある。
病院や薬局などで合計約5か月の実習が続く
5年次からは、各種病院さらには薬局といった医療現場で必要となるスキルを学ぶための実務実習が、それぞれ11週ずつ、合計22週間(約5か月)にわたって続く。各種病院では、臨床薬剤師がさまざまな症例の患者に対し、もっとも有効な薬剤を処方したり、入院患者へ薬剤指導などを行う実例を学ぶ。また、各種薬局では、医師が作成した処方せんに基づいた調剤や患者への薬剤指導の実際を学ぶ。
実務実習を終えた6年次は、卒業研究を義務づけている大学では、それをまとめる卒業論文の作成を行う。同時に、卒業前後に実施される「薬剤師国家試験」の準備に取りかかることになる。
研究者を養成する
4年制コースの学びとは?
一方、4年制コースは、新しい薬品を将来、生み出す研究者の育成が目的となっているので、まず、創薬の知識や技術の基盤となる化学や生物学分野を中心とした自然科学系の諸学問を学ぶことからはじまる。
その後は医薬品に関するさまざまな専門知識や創薬に不可欠な専門知識を身につけることが義務づけられている。その際、座学と並行して実験や実習も多く取り入れられている。
たとえば創薬科学では、医薬品開発や治験(薬が実際に及ぼす効果)に関する基礎的な知識を学ぶ。また、創薬科学は有機・生物化学、物理化学、薬剤学、薬理学など、さらにはバイオサイエンスの諸学問とも深く関わっているので、それらを順次、学ぶことになる。
同時に、おもに3年次からは各研究室に属し、創薬に関するさまざまなテーマについて、指導教授の下で研究をはじめる。そして、その研究成果は、卒業論文にまとめることになる。
4年制コースに進学した学生は最先端の再生医療や遺伝子医療、遺伝子治療といった学問分野と深く関わる学問を学ぶので、それらの研究が生命倫理とどのようにかかわるかを学ぶことも重視されている。
4年制の学生の約8割が、例年、大学院修士課程への進学を果たしているので、4年制を志望する人は大学院(修士課程)も考えておくべきだ。