加速度的に進歩を遂げ、社会状況に応じて大きく変化する医療の世界。
臨床・研究の場で医師に求められる責務はますます重くなる!
医師となるための6年間
全カリキュラムの3分の2は全国共通
医師を養成する医学部医学科での6年間の学びは、大きく2つのカリキュラムから成り立っている。
まず、将来、医師として活動する際に必須となる知識や技能などを身につけるためのガイドラインである「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(以下、コア・カリ)がある。これは全国の大学で共通の学びだ。コア・カリの大きな目的は、超高齢社会を迎えた日本で、医療の現場はさまざまに変化しているが、それに対応できる医師の養成が第一にあげられる。
そして、並行して各大学独自のカリキュラムも組み込まれている。学生たちが学ぶ全カリキュラムのうち、約3分の2をコア・カリが占め、残りは各大学が独自に定めたカリキュラムという構成になっている。
医学科の6年間は他学部に比べ履修しなければならない単位はとても多く、常時、勉強漬けとなることは覚悟しておきたい。
1年から4年までは座学を中心に医学の各科目を学ぶ
医学科の6年間は、どこの大学でも、ほぼ2年単位で学ぶべき内容が系統立てて、組み立てられていると考えてよいだろう。
まず、最初の2年間では医学を学ぶ上で導入科目となる生物学や化学、物理学などの基礎科学を学ぶ。その後、医学の基礎となる基礎医学の各科目を学ぶ。さまざまな科目があるが代表的なものとして、解剖学、生理学、薬理学、組織学、免疫学などがある。なかでも、解剖学は実習がメインとなり、献体された解剖体を数名が1チームなり実際に人体にメスを入れていく。多くの学生は、この実習を通じて、医師となる強い自覚や責任を感じるという。
3年から4年次にかけては、臨床医学を学ぶ。臨床医学とは、各臓器や各部位に起きる病気などについて、その原因や実際の治療方法を学ぶ学問だ。具体的には、病院に実際にある診療科――外科、内科、産科、小児科などの診療科ごとの病気の原因とその治療法を学ぶ。
なお、講義を行うのは、附属の大学病院で実際に患者の診療にあたっている医師たちが行うのが一般的だ。
一方、大学によって時期は異なるが、1年次にさまざまな医療・福祉施設での早期体験実習が行われ、看護師をはじめとするさまざまな医療のプロたちの仕事を見学・体験する。ほかにも、社会医学や予防医学に関する知識を身につける衛生学や公衆衛生学、法医学なども学ぶ。
4年次の後半には、5年次からの大学病院での臨床実習に参加する前に、これまで学んできた医学の知識や技能があるか、患者への診察能力などを問う2つの共用試験をクリアしなければならない。
5年から6年にかけては長期間かけての病院実習を行う
共用試験を経て、5年次からおもにベッドサイド・ラーニング(BSL)と呼ばれる付属の大学病院での実習が実施される。この実習では、数名の学生が1チームとなり、ほぼ1年かけて大学病院にある各診療科を1~2週間ずつかけて回る。外来患者の診察に立ち会ったり、手術の見学、さらには入院患者の診察などに同行する。なお、ひとつの診療科での実習が終わると、その仕上げとして口頭試問などが行われるのが一般的だ。
そして、6年次は春から夏前にかけて、自分で研修先を選択して実習を行うクリニカル・クラークシップ(CC)に参加する。この実習ではスチューデント・ドクターとして、国が定めた基準に従って、診察や検査、治療行為の一部を実際に体験することになる。
CC と並行して、6年次は、多くの学生が卒業後の臨床研修先をどこで行うかを決める「マッチング・システム」に参加登録を行う必要がある。臨床研修先を各種市中病院にする場合、各病院が主催する説明会にも参加するのが一般的だ。
卒業直前に最後の関門である国家試験にチャレンジ
6年次は卒業の前に実施される「卒業試験」と卒業直後に実施される「医師国家試験」(国試)のための猛勉強が強いられる。
国試に合格するために、各大学では、学生たちが一丸となって、試験対策を行う。たとえば、国試専門の予備校主催の模試を受けたり、対策講座に参加する学生も多く互いに情報を交換し合格を目ざす。
国試は2月の上旬、2日間かけて全国13カ所の試験会場で行われる。試験時間は2日合わせて13時間40分にもなる。合格率は例年9割程度となっている。