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研究者インタビュー「理学部系統 この学問の魅力!」東京工業大学 脇田建先生

  • 【学部選びガイド 2020年版】理・工・農学部系統 編
  • [2020/5/7]

情報科学は数学と同様に“概念”を扱う学問。
さまざまな分野に関心を持って、回り道をしながら取り組もう

《国立》東京工業大学 情報理工学院 准教授
脇田 建(わきた けん)先生

1965年東京都生まれ。東京大学理科一類から理学部情報科学科へ進む。同大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程を経て1993年より東京工業大学へ。助手、講師などを経て、2007年より現職。専門分野は計算機科学。趣味は料理、カヤック、プログラミング。

“理工系”における情報科学の位置づけは?

 いわゆる理工系の学問で、物理学や機械工学など数学以外の分野において「数学」というのは道具として使われています。その中で情報科学は、概念を研究しているという点で数学と親和性が高いといえます。理学部では、地球や生き物や気体など実際そこにあって私たちがいる世界を研究する分野が多い中で、情報科学は数学に近い存在といえるでしょう。東京工業大学(以下、「東工大」)においても、当初は理学部情報科学科として設置されていましたが、現在は情報理工学院という理学院や工学院とは別の組織として設置されています(注:東工大では「学部」ではなく「学院」制をとっている)。


脇田先生はどのように情報科学の分野へ?

 私は、高校生の頃は数学が大好きでしたが、大学生になって数学が苦手になってしまいました。大学で「本当の数学」に出合って、これはもうダメだ、僕の知っている数学はこれじゃない、となってしまったんですね。

 そもそも、大学では林学をやろうと思っていたんです。自分はアマゾンの熱帯雨林を助けるんだ、と。それが、大学に入って読んだ科学雑誌で、植生の推移がコンピュータでシミュレーションできるという話があって、これはおもしろい、と思いました。それと、コンピュータの世界が魅力的に思えたのは、ゼロと1の世界であるということ。理論記号も積分記号もない。あのわけのわからない世界からようやく抜け出せる、ここに僕のパラダイスがあるとさえ思えました。それで、必死にアルバイトをしてコンピュータを買ったんです。こうしてコンピュータでシミュレーションなどを始めて、情報科学の道に進みました。

 でも、だんだんと研究をしていくうちに数学が必要になってくるんですね。気がついたら「あれ? 積分やっちゃった」とか、統計的なテクニックとかモンテカルロ法とか、学部生のときにやっていた数学や OR(オペレーションズリサーチ=数学的・統計的モデル、アルゴリズムなどを利用した科学的技法)のテクニックが重要になってきました。あんなに数学が苦手になってしまったと思っていたのに、必要に迫られるとやるようになる。何でもどこかでつながるもんだな、と思いましたね。


「情報可視化」とはどのようなものですか?

 私の専門は「情報可視化」です。たとえば、この画面(『螢雪時代』4月号付録26ページの写真)の世界地図でどこかの地域をクリックしていくと、その地域の中で衛生環境や治安のいい悪いが右から順に表示されたり、その説明の英文が表示されたりします。これは、誰かが文章を入力したわけではなく、裏にはエクセルの表しかありません。近隣の地域の中で比較指標を統計的に分析して、結果を文章に自動的に変換しているんです。データの分布とかとびぬけた話題を見つけると、それを文章にしようと自動合成するんですね。こうやってカチカチとクリックしていくと止まらなくなりますよ。

 日本ではまだ情報可視化というのは重要度が低いのですが、海外では、大型の研究費を取りたいときは必ず可視化センターに相談をして、グッと気を引くような可視化をして提案しなさいという学内規則のようなものがあります。日本には情報可視化を専門にやっている研究者が少なく、情報可視化というと「円グラフですか?」と言われたりします。その意味でも、これから大きく伸びていく分野だといえます。

 ただ、この研究はプログラミングだけができてもダメで、情報可視化はコミュニケーションに関する技術なので、コミュニケーションに関心のない人はうまくいかないと思います。また、分析する分野についての関心がないと主体的に取り組むこともできません。数式しか興味がありません、というような人はこういう研究もおもしろいと感じないと思います。この研究をした学生も理系ですが歴史が好きですし、コンピュータサイエンスの国際学会でも歴史家や人類学者、心理学者、社会学者などが同じ学会で発表します。

 日本では高校で文系・理系に分かれますが、海外ではそのようなことはありません。自分と違う分野の話は聞かない、というのではもったいない。おもしろい研究をするためには、いろいろなことに興味を持つことが大事です。情報科学の分野でも、認知心理学や社会学・人類学とも関連するので、文科系の学生と混じった環境で研究していくことが必要だと思っています。


受験生へのメッセージをお願いします。

 私は高校時代、数学も好きでしたが、理科では生物が好きでした。定期試験前10日間のうち1週間は生物ばかりやっているような生徒でしたが、受験では生物は選択していません。

 受験のために有利とか不利とか、点数が取れるからということではなく、回り道をしてもいいからいろいろなことをやってみてほしいですね。

 今はすぐに目に見える成果を求められるところがありますが、無駄なような知識もどこかでつながり、それが支えとなっていろいろな人と話ができるし人生を豊かにしてくれます。

 最近学生と話していたのですが、アニメ「サザエさん」で最後にじゃんけんをしますよね。サザエさんがグー、チョキ、パーの何を出したか1200回分のデータベースがあって、それを使ってディープラーニングさせると、適当にやったら5割しか勝てないのが、あいこを除いて6割5分勝てることがわかりました。このようなことをおもしろがってやるうちに、どうしても越えなくてはならない壁も出てきます。そういうことなら、人はがんばれます。

 好奇心を持って、これをやることで社会を変えられるんじゃないかと考えながら取り組む。そこから思わぬ発見や研究が生まれてくると思います。


この記事で取り上げた大学

蛍雪時代

螢雪時代・3月号

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