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学部長インタビュー「農学部の魅力とは?」岩手大学 倉島栄一先生

  • 【学部リサーチ 2019年版】農・獣医畜産・水産学部系統の総合的研究
  • [2020/1/9]

食料供給や自然環境の保全など
世界的な課題の解決に貢献する

《国立》岩手大学 農学部 学部長
倉島 栄一(くらしま えいいち)先生

1956年新潟県生まれ。岩手大学農学部修士課程を修了後、新潟県庁入り。農地部で池から水田への配水計画作りなどに携わった後、1985年から岩手大学農学部助手。岩手大学農学部で助教授を経て2004年から教授。2019年に農学部長就任。農業を巡る水の循環についての調査研究が主なテーマ。水文・水理学などの指導を担当する。

農学とはどのような学問か教えてください

 とても広い領域をカバーする学問ですが、その中でも大きな柱は、安全な食料供給に関する分野だと言えるでしょう。2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、飢餓を終わらせることや持続可能な農業を促進することが目標として定められています。飢餓の問題を解決するための安心安全な食料の供給は、まさに農学が研究する分野です。SDGsにはそのほかにも、水不足対策に関する目標や気候変動対策の目標、森林などの自然環境保全に関する目標もあります。つまり、農学に関わることが多い。SDGsのような目標、課題を意識することがとても大切です。世界が直面する諸課題の解決に貢献していくことが、農学の現代的な使命です。

 こうしたグローバルな視点から、身近な地域を見直すことも必要です。たとえば世界では水不足に苦しんでいる地域がある一方、岩手やその周辺には豊富な水があります。水不足や水あまりという問題について、地域目線と地球的な目線と両方持つことが大切です。地域の課題を研究するうちに世界的な課題につながっていくというのは、農学の面白さの一つだと思います。森林の中の水の循環を例に挙げましょう。岩手で森林の中の水の循環について研究していたとしても、雨が降りそれが流れて蒸発するという現象は岩手や日本に固有のものではありません。世界中のどこでも変わらないわけです。農学の原理原則をしっかり学べば、応用できる範囲は広いと思います。

 動物や植物を対象にする分野では、さまざまな手法を使いながら生命現象を解き明かしていく面白さがあります。そしてそこから得られた成果から、人類に有用なものを探索していく。このプロセスは生命を研究対象にしている農学部ならではの魅力だと思います。


倉島先生のご専門の分野はどんなことを扱うのですか

 農業を巡る水の循環について調査研究することを専門にしています。具体的には、降雨に対して川がどのように反応するか、その性質を調べたりします。どれくらいの量の雨がどのくらいの時間降れば、川から水があふれるのか。また水のあふれやすさや流れも川によって異なります。これを調べることで、洪水や渇水が発生しうる確率の予測や対策などにもつながります。ほかには、田んぼの1日の水の消費量を調べることもあります。ある構造物を介して、川から田んぼまで水を引っ張るとする。そのためにはその田んぼが1日にどれくらいの量の水を消費しているのか調べる必要があり、その調査などもやっています。


岩手大学農学部では農学の多様な分野を学べるそうですね

 岩手大学農学部は2016年度に組織改編があり、6学科3コースの体制となりました。6学科の内訳は、植物生命科学科、応用生物化学科、森林科学科、食料生産環境学科、動物科学科、共同獣医学科。食料生産環境学科に水産システム学コースが新設され、創立以来初めてとなる水産学分野への進出を果たしました。農学に分類される幅広い学問分野を学ぶことができるという意味では、国内でも有数の環境かもしれません。

 附属施設も充実しています。農学部がある盛岡市近郊には広大な農場や演習林などがあり、盛岡から少し離れた雫石町には中山間地のフィールドとして牧場と演習林があります。学生たちは農業や牧畜、酪農、森林などについて、岩手県の広大な自然の中で実地に学ぶことができます。ほかには共同獣医学科の臨床教育を実践する動物病院や、健康な動物の生産と食の安全・安心を研究・発信する「動物医学食品安全教育研究センター」などがあります。

 卒業生の進路としては、公務員就職に強い傾向があります。岩手県庁をはじめとする地方自治体で技師として働くケースが多いですが、国家公務員の総合職として採用される人もいます。大学で学んだ専門分野を生かして、それぞれの現場で活躍しています。

 岩手大学農学部の前身は、日本最初の高等農林学校として1902年に設立された盛岡高等農林学校です。当時の東北地方は、たび重なる冷害と凶作に見舞われ、農村は苦しみ疲れ切っていました。こうした事情を背景として、盛岡高等農林学校は冷害の克服と食料の安定供給を目指して発足したのです。1918年には岩手県出身の童話作家である宮沢賢治も卒業しています。「グスコーブドリの伝記」といった作品や「雨ニモマケズ」の詩などを読むと、冷害の克服を目指した学校設立当初の精神は賢治も共有していたと思います。もちろんそのような精神は、現在に至るまで岩手大学農学部に綿々と受け継がれています。


東日本大震災の被災地の復興に岩手大学農学部はどう関わっていますか

 岩手大学農学部が2016年度に水産学分野へ進出したことは既にお話ししましたが、これは2011年の東日本大震災がきっかけになっています。岩手県沿岸部が被災したあの震災以来、岩手大学全体として被災地の復興に取り組んできました。地震の発生当初から、 継続的に大学の人間が現地に入り支援等を続けています。農学部に水産システム学コースが設けられたことは、岩手県の水産振興を担う人材を育成する面で、岩手大学が続けてきた被災地支援の取り組みの具体的・持続的な成果と言えます。

 被災した釡石市には釡石キャンパスも開設されており、海のそばで実地に学ぶことができる環境も整っています。地元からの期待の大きさも感じています。東日本大震災が発生しなければ、水産分野を扱うコースが岩手大学農学部に設立されることはなかったかもしれません。


受験生へのメッセージをお願いします

 大学で学ぶ農学は、身近な生命や自然環境に触れることで、好奇心が触発される学問です。受験生の皆さんの中には、理数系科目が苦手だから農学部には進学できないと考えている人がいるかもしれません。しかし高校の理数系科目が苦手だからという理由で、農学部の受験を諦めないでほしい。もちろん理数系の勉強は得意な方がよいですが、大学入学当初は苦手でも、農学の勉強を通じてどんどん得意になっていった学生もいます。

 岩手大学農学部には、岩手の大地から世界に向けて飛び立てる環境があります。意欲ある高校生の皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。


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