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学部長インタビュー「法学部の魅力とは?」九州大学 村上裕章先生

  • 【学部リサーチ 2019年版】法・政治・国際関係学部系統の総合的研究
  • [2019/12/5]

社会や世界の問題に目を向ける学問。
ルールに従って適切な解決を考える

《国立》九州大学 法学部 学部長
村上 裕章(むらかみ ひろあき)先生

2017年4月より現職。専門は行政法。主著として『行政訴訟の解釈理論』(弘文堂)など。1982年九州大学法学部卒。1988年同大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、同法学部助手。1994年北海道大学法学部助教授、2002年同大学院法学研究科教授。2008年4月より九州大学大学院法学研究院教授。

法学とは、どのような学問でしょうか

 なぜか法学部には、誤ったイメージがあるようです。法律の条文をひたすら覚える、といった誤解です。条文を丸暗記する必要はありません。それは調べれば、すぐわかりますから。条文の数は膨大なので、法律の専門家も条文の一言一句を覚えてはいません。

 法律には、刑法・民法・商法・刑事訴訟法などさまざまありますが、大事なのは、ある問題に対して、その状況を解決するのに適した法律を見つけ出し、適切な解決を考える力です。社会で起きるさまざまな問題は複雑多様で、日々状況が変化します。条文を丸暗記しても、そうした状況に即して法律を適用することはできません。

 法学部では、各法律が対象とする分野や、各条文が想定する状況など、法律や条文の背後にある考え方を学ぶことが中心になります。法学が対象とするのは、個人の生活に関わることから、政治や経済、ビジネス、環境、テクノロジーなど、社会や世界のあらゆる分野に及びます。そのため、今起きている社会問題・国際問題の背景や各分野の最前線について考察することも、法学部の学びとして重要です。法学は、社会や世界を学ぶ学問とも言えます。

 世の中で起こるさまざまな問題の原因を見極めて、ルールにもとづき、正義にかなった解決を見いだす力。それを「リーガルマインド」と呼びますが、その力を養うことこそ法学部の使命。法律は、問題解決のためのツールでしかなく、世の中の情勢やそこで起こる問題と併せて学ぶものなのです。


法曹や公務員などのイメージがありますが進路の特徴は?

 それも少し偏ったイメージですね。九州大学法学部の場合、例年、卒業生のおよそ4~5割が民間企業へ就職しています。公務員は30%弱、法科大学院を含む大学院は10%程度です。法学部で身につけた知識や能力は、ビジネスを進める上でも重要なスキルとされています。

 近年、企業コンプライアンスということが強く意識されるようになりました。優れた技術やサービスであっても、法的に正しい手順を踏んで提供されなければ、後々それが問題となり、企業にとって大ダメージとなってしまいます。どんな仕事も、法令に則って進めないといけません。そして仕事には、さまざまな権利関係や契約が伴います。そうした企業活動の一つひとつを安全に処理していくために、ビジネスマンにも法律の知識やリーガルマインドが求められるようになっています。そのため法学部は、一般企業への就職にも強いという特長があります。広く社会を学ぶ学問でもあるので、卒業後の進路は、法律の専門分野に限らず、広く開かれています。


どのような授業が行われていますか

 まず講義で各法律の概要や構造、その趣旨などを学びます。さらに各法が対象とする分野や事象を押さえます。

 講義とは別にゼミと呼ばれる少人数の演習もあります。ゼミは、学生同士が活発に議論をする場。その時々のテーマに沿って、その問題点や過去の判例、その解決の道筋などを話し合います。学生一人ひとりが自分の考えを述べる場なので、事前に文献などを調べて、考えをまとめるといった準備が必要です。ここで自分の考えに対する指摘を受けて持論を補強しつつ、自分とは異なるさまざまな考え方を学びます。九州大学法学部はゼミを重視していて、3・4年次だけでなく、1年次の入門ゼミも必修としています。

 この入門ゼミは、法学をはじめて学ぶ入学生にとって非常に大事な授業です。というのは、法学的な考え方は、高校までに身につけたそれとは異なるものだからです。高校までは、問題に対して正解がありました。正解は1つしかない。その正解を導くために勉強をしてきたわけです。

 一方、法学では法律というルールはありますが、それを使って問題を解決する方法はいろいろ考えられます。例えば、憲法9条があるから自衛隊は違憲だという考えもあれば、自衛隊は合憲で多国籍軍に参加できるという解釈もある。法をどう解釈するかは、いろいろな考え方があり得るのです。つまり正解がない。いろいろな考え方が成り立つ中で、自分の考えを明確にし、その根拠を説明することが求められます。法学部では、正解があった受験勉強から思考法を転換する必要があります。


九州大学 法学部の強みは何でしょうか

 ゼミの充実のほかに、学生を海外に送り出す取り組みに力を入れています。例えば、GVプログラム。法や政治における専門性を身につけてグローバルに活躍できる国際的な人材を育てることを目的に2015年度から開始した制度です。AO入試で学生を受け入れて、徹底した英語教育を行い、国際問題に対する理解を深める授業も行います。また、短期留学が必修となっています。このプログラムをとおして、多国籍企業などのグローバル企業や、国連などの国際機関に多くの日本人学生を送り出したいと考えています。

 もうひとつ紹介したいのが、文系4学部副専攻プログラム。他の文系学部と連携して、学部の壁を超えた学びを実現する制度です。例えば将来、法学を学んで民間企業に就職すると、経済や経営の専門知識も求められるようになる。そうした状況に対応するために、法学を学びながら、経済や経営の授業も履修することができます。法学とビジネスといった組み合わせ以外にも、学生が希望するテーマに合わせて柔軟な学びが可能です。


最後に受験生にメッセージをお願いします

 法学は、生きた社会を学ぶ学問です。変化する世の中の情勢に敏感であることが大事です。問題意識をもって新聞やニュースなどを見ることを習慣にして、社会や国際的な問題に対して、自分なりの考え方を持てるよう、日頃から心がけてほしいと思います。

 そして、法曹の魅力も最後にお伝えしたい。法曹は、専門知識を生かして弱者を救済できるやりがいのある仕事です。訴訟の場以外にも、最近では企業内弁護士などの需要も増えています。

 2020年度から法学部に「法曹コース」が設置され、これに入ると学部で3年間、法科大学院で2年間、最短5年間で司法試験を受験できる制度がスタートします。学部を3年で卒業するには成績条件がありますが、これにより法曹志望者の時間的・経済的な負担が軽減されます。司法試験の合格率も高くなっているので、ぜひ多くの人にチャレンジしてほしいと思います。


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