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学部長インタビュー「理学部の魅力とは?」広島大学 安倍学先生

  • 【学部リサーチ 2019年版】理学部・工学部系統の総合的研究
  • [2019/8/2]

ヘンな人でいい。自由な発想が次代の新技術につながる

《国立》広島大学学 理学部 学部長
安倍 学(あべ まなぶ)先生

1995年京都工芸繊維大学大学院工芸科学専攻修了後、大阪大学大学院工学研究科助手、講師、助教授を経て、2007年広島大学大学院理学研究科化学専攻教授。2019年4月より同大学理学部長・大学院理学研究科長に就任。有機化学を専門分野とし、特に光有機化学を中心的なテーマとして研究に取り組む。

安倍先生のご専門について教えてください。

 私はもともと工学部の出身です。工学というのは、もともとある程度わかっている自然現象を使って、それをどうテクノロジーに変えていくかというプロセスを考える学問なんですね。つまり、ある程度は知られている事象を広げていくということになるのですが、私としては工学の学位を取った頃から、まだ誰も知らないことを研究したいと思うようになりました。そこで、大阪大学に助手として入ったときに「光化学」を研究テーマとして選んだのが現在の道に入ったきっかけです。

 光化学というのは簡単に言うと、光のもつエネルギーを使って化学反応を起こす、ということになります。身近な例を挙げると、植物の光合成がそれにあたりますね。緑色の葉が光を受け、そこからエネルギーを受け取って二酸化炭素と水から糖と酸素を生み出すというよく知られたはたらきで、“入口”と“出口”で起こる現象は誰もが知っていながら、実はその内部のしくみは未だによくわかっていません。このように、熱ではできないことを光を使ってできないか、と考えました。光合成のしくみを解明することはまさに理学の分野ですが、一方で工学的な視点をとると、そのように光のエネルギーを利用する仕組みが解明されれば、世界の資源・エネルギー問題の解決にもつながるかもしれません。


理学と工学の違いとは何でしょうか

 新しい現象を見つけて観察し、その現象が「なぜ」起こるかを解明するのが理学です。一方、先ほどもお話ししたように、すでにわかっている現象を混ぜ合わせたり組み合わせたりすることで、社会に役立つ「使いみち」を考えるのが工学です。ただ、どちらにしても研究の成果は工学を通らないと社会に出ていかないこと、またどちらの分野も学問として成熟しつつある背景もあり、最近では大学の側でも、「理工学部」のような形で、理学と工学を一緒にしているところが多いですね。

 これはもしかすると誤解を招く表現かもしれませんが、理学が“ヘンなこと”をする学問であるのは間違いないと思います(笑)。工学は社会と直結していて、「みなさんのお役に立つものをつくる」という点ではまっすぐなのです。対して理学の使命は「次の世代の新技術」につながる物事を発見するというところにありますから、誰もが理解できることではなく、一般の人々の“常識”から見れば「ヘンなことやってるなあ」と思われるくらいのことに取り組むのが、私たちの仕事なのです。理学は工学と違い、研究の成果がすぐ世の中の役に立つわけではありません。50年後、あるいは100年後になって初めてその価値が認められるものかもしれません。その「世の中に認められる」喜びは後進に譲るとして、物事の“根本”を見つける喜びは、まさに理学を学ぶ意義と言えると思います。


広島大学理学部の教育の特長について教えてください

 広島大学は、1929年に設立された(旧制)広島文理科大学が前身となっており、日本国内では理学部が4番目に設置された大学となります。旧帝国大学7校と東京工業大、筑波大と並び、理学の道を拓くという意気込みで進んできました。また、戦前は京城(ソウル)・台北も合わせた帝大9校に次ぐ位置づけでもあったことから、研究設備もたいへん優れています。たとえば放射光施設(電子を加速・貯蔵する加速器とそこで発生した放射光を利用するための実験施設。国内では兵庫県にあるSPring-8が有名)を大学として保有しているのは全国でも本学だけです。また、1967年に創設された両生類研究センターは国内唯一であるだけでなく、世界の両生類研究における三大拠点の一つです。これらの施設・設備を基盤とした物理学と生物学は本学理学部・理学研究科を代表する分野で、いずれの分野でも世界的に活躍されている先生方が、本学の施設を利用して研究を続けておられます。

 物理学にしても生物学にしても、観測・実験のための道具が揃っていないと何もできません。その点で大きな強みをもっている本学には、海外、特に中国・韓国・台湾などから多くの研究者が実験施設を利用しに訪れます。いわば、アジア圏の大学や研究者同士を結ぶ“ハブ”として機能しているわけです。もちろん、この充実した設備は学部生の教育においても力を発揮します。現場で実験を目の当たりにしながら学ぶのと、仮想的に学ぶのでは理解度にも大きな差が出るはずです。併せて、そうした施設で最先端の研究を日々行っている教員による授業の質の高さは言うまでもありません。

 また、本学の「理学融合教育センター」では、グローバル化に対応すべく「Hi-Scientist養成プログラム」を実施しています。ここでは科学のわかる英語ネイティブ教員が、科学英語を用いた論文の書き方や発音などを1年生のうちから指導しています。

 進路についてお話しすると、本学理学部から大学院に進学する学生は全体の約7割。残りのうち約1割が、教職課程を履修して中学・高校の理科の教員となります。理学界を担う次世代を育てる仕事に就くわけですね。理学部の勉強と教職課程を並行するのはなかなかハードですが、カリキュラムも教職をとりやすいように組んでいますし、先生を目指す人にも向いています。


育てたい人材像と受験生へのメッセージをお願いいたします

 最初に、理学部とは「ヘンなことをする」学問だとお話ししました。そういった意味で、本学理学部の教育方針としては、個性を大事にしています。こうしないといけない、こうならないといけない、というような指導はせず、少年少女のように自由な発想のできる学生を育てていきたいと考えています。実は、教員にも子供みたいな人が多いのです(笑)。

 一方で、きちんと“ジャッジ”ができる人にもなってほしいと思います。最近世間では、科学的な用語の定義を誤用した言説や商品があふれています。そうした「誤っていること」を自分の頭できちんと判断できる人であってほしいですね。

 残念なことですが、日本の教育は「こんなことしちゃいけないのかな…」と、何かと自己規制してしまう子どもを育てがちです。そうした殻を破って、自由な、チャレンジ精神のある人に来てもらえればと思います。もう一つ大切なのは、相対評価をしないこと。他人との比較や勝ち負けで価値を決めるのではなく、自分の信ずるところに従って良し悪しを判断できる、そんな人と一緒に学びたいと思います。

この記事で取り上げた大学

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