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学長インタビュー「造形学部の魅力とは?」長岡造形大学 和田裕先生

  • 【学部リサーチ 2019年版】家政・生活科学・栄養学部系統の総合的研究
  • [2019/7/4]

“カタチ”で人の思いをつなげる。デザインは新たな価値を生む力

《公立》長岡造形大学 学長
和田 裕(わだ ひろむ)先生

1951年岐阜県生まれ。東海大学教養学部芸術学科卒業後、いすゞ自動車株式会社に入社。同社で21年間、SUV(スポーツ用多目的車)やトラックを中心に多くの車両デザインを手がける。1994年長岡造形大学造形学部助教授、1998年同教授。2012年4月より現職。専門分野はトランスポーテーションデザイン。

和田先生のご専門について教えてください

 クルマだけでなく船や飛行機、はては草刈機や農薬散布車輌まで、人やモノを載せて動くものなら何でも扱うのが、私の専門であるトランスポーテーションデザインです。

 人を載せて動くものをデザインする上で最も重要なポイントは「安全性」と「作業性」。たとえば作業に使う車両であれば、万が一転倒したときに乗員を守れるかどうか、あるいは作業を行うときの視界がどれだけ広く取れるか、ということなどをよく検討することが必要です。デザインというと、いわゆる「姿形」を見る人が多いのですが、それはあくまで結果。安全性や作業性、操作性などに加え、そのメーカーがもっている哲学、それらすべてが包含されたものが「デザイン」という形になって現れているのです。ですから、デザインが「姿形」から入ることは基本的にはありません。形だけから入っている、いわば“ウソ”のデザインは、目の肥えた人にはすぐ見破られてしまうものです。


「デザイン」と「美術」どう違うのでしょうか?

 美術大学などで学ぶ「アート」は、自己表現の手段と言えます。また、アートには制約条件がありません。たとえばデザインの世界では、そこにかけられるお金の総額は最初から決まっていますが、芸術には予算はありません。もう一つ、アートは基本的に独りでつくるものという側面があります。作品を形づくる作業の部分では共同でシステマチックに行う動きもありますが、作品それ自体はアーティストの心の内を本人自身の手で形にするものです。一方デザインは、一つの製品に対して複数のデザイナーだけでなく、エンジニアやマーケターなどが加わり、チームとして動く仕事です。つくり出されるものがただ1つなのか、大量生産されるモノなのかという点もアートとデザインの違いと言えますね。デザイナー本人が手を動かしてモノをつくるのではなく、あくまでモノをつくるための計画を立てるのが仕事。実際にモノをつくるのは工場の工員や職人さんです。その結果として、アートの成果より非常に多くの人々が、デザインの成果を享受できるとも言えるのです。

 デザインを学ぶうえで、もちろん作図などの技術は必要ですが、それ以上に大切なのはコミュニケーション。特に“深層心理”を探ることが重要だと思います。かつてマーケティングの世界では、“勘や経験”に代わって市場調査に基づくデータを根拠とする手法がブームになったことがありました。それがなぜブームに終わってしまったか。市場について“いま”の時点での表層的なデータしかわからないからです。これに対してデザイナーは、その先の“未来”の人々がどんな生活をし、どんなことを楽しんでいるのかーを想像します。そこに行き着くためには、エスノグラフィー(ある集団の文化における特徴や行動様式などを、現場に入り詳細に調べる研究手法)などを用いて、対象とする人たちの言葉としては出てこないけれど、本当に求めているものを探っていくことです。

 かつては、仕事において「問題を解決する能力」が重視されていましたが、今は「問題を発見する能力」こそが重要です。それを、デザインの勉強をしながら培っていくのです。世間一般には、デザインといえば造形の表現手法を学ぶことと捉えられがちですが、それは自分が発見し、構想したことを形として表現しコミュニケーションツールとして使うのに有効であるというだけの話です。デザインの本質は今お話ししたような、「形で表現する」以前の、問題発見にこそあると思います。

 最近ではdesign thinking(デザイン思考)といって、デザイン以外の分野でもデザイナーの考え方や手法を取り入れる動きが広まっていますね。私たち自身も初めて気づいたのですが、デザイナーがありあわせの材料を使って「プロトタイプ」(試作品)をつくって見せるという能力は、人々のイメージを共有するためにも非常に有効です。

 実社会でデザイナーが仕事をするときは、チームで動くことが多いものですから、デザインを学ぶ上でもそのためのトレーニングをしますが、特にいま必要とされるのは「ファシリテーター」(facilitator: 学習や議論などの進行役を担う人)の能力。意見やその表現を異にする人々の真意を汲み取り、つなぎ合わせる役目です。多くのスタートアップ企業が活躍するシリコンバレーでは、「これからは一人の天才ではなく、複数の凡人が勝つ時代」という言葉を聞きました。そんな時代の中で、いまお話ししたようなデザイン教育を受けた人のもつファシリテーター能力は、相当なものだと思います。

 これからの時代のデザイナーは、新しい価値創造(イノベーション)の真っ只中で働くことになります。デザイナーは、そこに大きく貢献できる力を持っているからです。


長岡造形大学の教育の特長を教えてください

 まず、感性に基づく造形・表現能力の教育は、デザイナーだけがもつ大きなアドバンテージの一つですから、避けて通れないところです。未経験の学生にも、1年次の半分近い時間を使って、基礎教養としての造形・表現教育を徹底して行います。

 また、先ほどもお話ししたように、これからのデザイナーには表現する力と併せて考え、構想する力が必要です。その“新しい価値”を創造する力を育てるため「地域共創」といって、地域の具体的な課題解決を演習・実習とする取り組みを行っています。架空の課題を机上で解決するのではなく、実際の現場で、地域の人たちとともに解決の方法を考えるということです。

 3つめの柱がデジタル教育。プログラマーになるほどではないにしても、機器がある程度使いこなせるようになること、また最近のトピックであるIoTやVR(仮想現実)などがどんな仕組みで動くのかなどは理解できるようにしてほしいと考えています。特に構想を表現・共有する手法として、動画に関する教育には力を入れています。


受験生へのメッセージをお願いします

 先ほど、デザイナーは未来の人々について創造するというお話をしました。言い換えると、デザインとは、未来を引き寄せる仕事なのです。

 造形学部というと、従来は絵を描いたりものを作ったりするのが好きな人が行くところというイメージがあったかと思います。でも実際は、「考える」ことが好きな人、そして「考えた」ことを実現したい人にとって、デザイナーは職業としても、“近道”です。新しい価値を世の中に提案していきたいという気概をもった人に、ぜひ来ていただきたいと思います。


この記事で取り上げた大学

蛍雪時代

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