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学科長インタビュー「保健学科の魅力とは?」岡山大学 中塚幹也先生

  • 【学部リサーチ 2019年版】看護・医療・保健学部系統の総合的研究
  • [2019/6/6]

ひとりの健康だけではなく、社会とつながる保健学科の役割

《国立》岡山大学 医学部保健学科 学科長
中塚 幹也(なかつか みきや)先生

1986年岡山大学医学部医学科卒業、同大大学院医学研究科修了。生殖医療を専門領域とする。1998年より岡山大学ジェンダークリニックで診療を行い、性的マイノリティや性同一性障害に関する問題にも取り組む。著書に『封じ込められた子ども、その心を聴くー性同一性障害の生徒に向き合う』(ふくろう出版)などがある。

中塚先生のご専門について教えてください

 私の専門は「生殖医療」です。たとえば、体外受精などを行う「不妊症」や、死産・流産を繰り返す「不育症」といったテーマを扱っています。赤ちゃんができない不妊症とは違い、不育症というのは赤ちゃんができても母親の胎内で育たない状態ですが、あまり知られていません。これらに対応する専門外来を二十数年前に開設し、診療を行っています。また、埼玉医科大学に続いて全国で2番めに開設された岡山大学のジェンダークリニックでは、性同一性障害の人々の診療も行っています。当時はまだマスコミなどでもほとんど報じられず、世間ではあまり理解されていませんでしたが、クリニック開設から少しあとになって、テレビドラマ『3年B組金八先生』で上戸彩さんが性同一性障害の生徒を演じたことをきっかけに認知が広がった気がします。現在では日本のジェンダー医療の中心として、全国から来られる人々に対応しています。

 小・中・高校生の性同一性障害当事者には、しっかり対応する必要があります。多くの場合、物心がつくころから身体の性や社会に割り当てられた性に違和感をもちます。たとえば男の子が赤いランドセルを欲しがる、あるいは女の子がスカートを履くのを嫌がる、といったことが現れ始めます。男女別の制服に苦痛を感じたり、小学校の高学年から中学生くらいになると声変わり、ひげ、月経、乳房の発達などの第二次性徴による体の変化に嫌悪を感じたりといったことが出てきます。そうした問題に対しては精神的な支援を行っていくことが重要ですが、たとえば自分の男性の身体に嫌悪を感じている子の心をカウンセリングによって男らしくすることはできませんし、する必要もありません。また、無理にそんなことをすればうつや自殺といった結果にもつながりかねません。そうではなく、その子が自分らしく生きていきやすくするためのサポートをすることが、私たちの役目です。そのための取り組みは病院の中だけで完結することがなかなか難しいものですから、当事者が生きる場である学校や企業といった場に出かけていって研修やお話などさせていただくこともあります。

 昨年はお茶の水女子大学が、戸籍上は男性でも自身の性別を女性と認識しているトランスジェンダーの学生の受け入れを表明して話題になりました。私たちのところにも、それ以前から女子大や女子高の方の問い合わせがよく来ています。


保健学科で学ぶこと、そしてその役割とは何でしょうか

 病院内で患者さんの疾患の治療を学ぶことが中心となる医学部医学科と比べ、保健学科、特に看護の分野ではその人の生活を支援するといった社会的な役割も求められる点で異なります。

 いま、本学保健学科では岡山県や県の産婦人科医会と共同で子どもの虐待防止に関する研修をしたり、リスクを持つ妊婦を早期に保健師が家庭訪問するようなシステムづくりを行っています。 近年、全国的にも虐待事案は増加していますが、私たちの取り組みを始めて以降、岡山県では件数の推移を横ばいになってきています。これはまさに保健学科が得意とするところで、人ひとりの健康だけでなく、社会のセーフティネットからこぼれ落ちる人が出ないよう網を密にする役割も果たしています。病院の中で患者さんを治すという仕事の面白さも経験できますが、もっと広い視野で取り組めるのも、保健学科の魅力だと思います。

 保健学科の構成は、本学の場合は看護学・放射線技術科学・検査技術科学の3専攻に分かれており、それぞれが独自に専門科目を学びますが、各専攻が目指すところは「メディカルスタッフ」という意味では同じですし、学びとして共通する部分もあります。また、大学としてチーム医療を重視しているということもあり、たとえば教養教育科目の一つで、入学後すぐに受けることとなる「チーム医療演習」では、看護師、保健師、助産師、診療放射線技師、臨床検査技師といった異なる職業を目指す3専攻の学生たちが一つのチームを組み、共通の課題に半年間、春から秋にわたって取り組みます。


岡山大学医学部保健学科の教育の特長を教えてください

 利点の一つはやはり総合大学であること。幅広い教養を身につけやすい環境と言えます。加えて、チーム医療を重視した授業もさることながら、実際、医学部医学科や実習を行う大学病院と保健学科との物理的な距離が非常に近いことも強みです。また、明治時代の岡山藩医学館以来の伝統から地域の医学界に卒業生が多く、その人脈が就職率の高さにも寄与しています。

 さらに、本学はSGU(スーパーグローバル大学)に指定されており、留学も奨励しています。保健学科ではタイでの研修を行っている他、先ほどお話しした「チーム医療演習」でも台湾や韓国へ行って演習を行うチームがあります。その他、4学期制の設定も含め、学科全体として海外留学しやすい環境を作っています。

 医学的知識の基礎となる解剖学に力を入れていることも、本学保健学科の大きな特徴の一つです。医学科であればどこの大学でもやっていることですが、亡くなられた方のご献体による実習を行うのは、保健学科としては全国でも珍しいのではないでしょうか。


育てたい人材像についてお聞かせください

 たとえば看護師や放射線技師、臨床検査技師になるのであれば、専門学校も含めていろいろなルートがあります。その中で岡山大学の役割としては、それぞれの医療施設において中心的・指導的な立場になったり、あるいは、その後大学院に進んで研究者になったり、大学の教員になったりといった人材を育てていきたいと考えています。臨床に進んで活躍する人ももちろん多いのですが、学生のみなさんには多様な進路も視野に入れながら4年間を過ごしてもらいたいですね。国家試験に合格できればいいというものではなく、継続して学ぶ姿勢を作っていくことが大切です。医療の世界は、看護、放射線検査などどの分野も進歩していくものですし、何歳になっても学ぶべきことはたくさんありますから。


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