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学部長インタビュー「文学部の魅力とは?」東北大学 森本 浩一先生

  • 【学部リサーチ 2019年版】文・人文・外国語学部系統の総合的研究
  • [2019/5/7]

時代と共に変化する文学部で生きるための教養を育てる

《国立》東北大学 文学部 学部長
森本 浩一(もりもと こういち)先生

熊本県生まれ。1980年東北大学文学部哲学科卒業、同大大学院文学研究科博士後期課程退学(ドイツ文学)。横浜国立大学教育学部を経て1996年より東北大学文学部・文学研究科教員。2017年より文学部長・大学院文学研究科長。著書に『デイヴィドソン-「言語」なんて存在するのだろうか』(日本放送出版協会)など。

森本先生のご専門について教えてください

 子供の頃から本を読んだり文章を書いたりすることが好きで、高校では文芸部に入っていたのですが、その顧問の先生から現代の思想や文学について教えていただいたことが人生を決める大きなきっかけでした。浪人時代に読んだ本を通じて「現象学」という現代哲学のある分野に興味を持つようになり、当時この方面で著名な先生がおられた東北大学で学びたいと考え、入学しました。

 その後、哲学と文学にまたがるような研究をしてきましたが、一言でいうと、言葉やメディアを通じて何かを伝達するということ、つまりコミュニケーションとは本質的な意味ではどういうことなのか、ということが関心の中心にあります。

 言葉はそれ自体としては記号に過ぎず、記号を受け取った人がそれをどういうふうに理解していくかということが重要なんですね。たとえば小説を読むとき、われわれは書いてあることの意味を単に文法に従って解読するだけではなく、直接には書かれていない物語世界を想像したり、出来事や人物に対する様々な印象を受け取ったりしています。言葉や作品のあり方を観察するだけでなく、それがどのようにして思考や感情を呼び起こしているのかを考えてみる必要があります。現在は少し幅を広げて、映画やマンガなどの「物語メディア」の伝達においてわれわれは何をどうやって受け取っているのか、といったことを考えています。最近のメディアに関心がある学生たちは、興味を持って来てくれているようです。


文学部ではどんなことが学べるのでしょうか

 高校生のみなさんに対してわかりやすく言うと、高校で勉強する教科の中で関わる範囲が一番広いのが文学部です。国語、英語、社会、美術はもちろん直接に関わりますし、証明や統計などの面で数学も関係してきます。また、理科では特に生物学が心理学や言語学と結びつきます。つまり、高校生の段階でみなさんが知的関心を抱くようなテーマを、ストレートかつ専門的に深めていけるのが文学部の面白さです。

 東北大学の文学部でいうと、まずは言語。これは日本語も、欧米・アジアの諸言語も含みます。それと、哲学や倫理学、様々な信仰や習俗を扱う思想・宗教のグループ。そして各地域の歴史の研究。また、文学・芸術・大衆文化などは「文化」という枠で括ることもできますが、これらの分野は言語と密接に結びつくので、たとえば「○○文学」といった名前が付いている研究室でも、実際にはその地域の文化を幅広く扱っている場合があります。加えて、社会学・心理学・言語学など調査や実験を行う実証科学的な分野が、文学部の中でのメインストリームの一つとなっています。


時代の変化への文学部の対応は?

 学部を受験するみなさんには直接関係ありませんが、文学部の上の大学院(文学研究科)は今年の4月に大きな組織改編を行い、日本学・広域文化学・総合人間学という3専攻の体制になります。この再編にあたり重要な目標としたのが「現代的な変化への適応」ということで、その一つは国際化への対応です。近年はインターネットの影響で「日本」に興味をもつ外国人留学生が増えています。それもあって、従来は「言語」「文化」「歴史」といった学術カテゴリーで分散していた日本語・日本思想・日本文学・日本史などの分野を「日本」という地域性で括り直し、日本学という一つの専攻の中に集めて連携強化を図りました。

 もう一つの対応は「文理融合」です。かつて産業技術が「ものづくり」中心であった頃は、学問の重点は理系であって文系は添え物であるかのような捉え方が主流でした。しかし、近年のデータ/グローバル社会で求められるイノベーションにおいては、技術を使いこなす発想力が重要で、広い視野で人間と社会を俯瞰できる文系的知性が求められていると感じます。実際文学部の諸分野は、情報・医療・教育・防災をはじめさまざまな場面で実社会と密接な関わりがあり、その強みを伸ばすために総合人間学専攻を作りました。特にその中の「計算人文社会学」は、近年注目されているデータサイエンスへの対応を視野に入れた新設分野です。もともと人文社会学は、データサイエンスと高い親和性があります。ビッグデータといってもただデータを集めただけでは役に立たず、そのデータにどんな価値があるのかを読み取ること、言わばデータの質を評価することが重要になるからです。そこに、心理学や社会学、あるいは広く人文学が大きく関与するのです。

 また、社会貢献という観点では、文学部が先駆的に進めている「臨床宗教師の養成」というものがあります。東日本大震災後に始まった取り組みで、たとえば親族を亡くされた方へのグリーフケアに関連しています。悲嘆のケアは心理学的なテーマであると同時に、「死」という問題に直接関わることから宗教的アプローチが有効です。そこで、「布教」の側面を切り離した形で、人間の精神的なケアに宗教的観点を取り入れる可能性を研究し、現場での活動にも応用していこうと始めたものです。この分野については、広域文化学専攻で取り組むことになります。

 以上のような大学院の新しい方針や教育内容は、学部教育にも反映されていくこととなります。


受験生へのメッセージをお願いします

 人間や社会をめぐるさまざまな問題について考えるのが好きで面白さを見いだせる人は、ぜひ文学部(人文系)を進路の選択肢として考えてほしいと思います。他の学部では、特定のキャリアと結びついた具体的なテーマで知識を獲得しスキルを磨くといった要素が大きいですが、文学部は自分の好きなテーマを深く掘り下げることのできる場所です。

 ただ、それもあって文学部は、就職やその後の人生に「役に立たない」と言われることがありますが、これは誤っていると思います。一つには、これまで述べたように、普通想像される以上に文学部の学問は実社会とつながっているからです。しかしそれ以上に重要なのは、人文社会学の勉学を通じて、本質的な意味での教養、つまり柔軟な思考力や的確な判断力、繊細な審美眼などの知的な能力を身につけることの意義です。これらは人がよりよく賢明に生きていくうえで必要な能力であり、「幸福」に生きるという個人にとって最も大事な目標を実現してゆくために必ず役に立つものです。立ち止まり、深く考える時間を持つことは決して無駄ではないのだということを信じて、学びに来ていただけばと思います。


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