page_top

学部長インタビュー「歯学部の魅力とは?」長崎大学 澤瀬隆先生

  • 【学部リサーチ 2018年版】医学部・歯学部・薬学部の総合的研究
  • [2019/4/3]

来る超高齢化社会を口の健康から支える

《国立》長崎大学 歯学部 学部長
澤瀬 隆(さわせ たかし)先生

長崎県生まれ。1989年長崎大学歯学部卒業、同大大学院歯学研究科修了。スウェーデンイエテボリ大学生体材料研究所客員研究員等を経て2009年に長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授。補綴理工系歯学を専門とし、共著に『ライフステージに応じたインプラント補綴「人生90年時代」を見据えた診断と設計』(医歯薬出版)などがある。


「歯学」とはどのような学問なのでしょうか

 歯学をひとことで言えば「口の健康を通して全身の健康に寄与する」ための学問ということになります。そうした歯学のありかたが最近特にクローズアップされているのは、超高齢化社会と言われる時代を迎え、“噛む”ということが栄養の摂取だけでなく、運動や認知症など、全身のはたらきに影響を与えていることがわかってきたからです。これまで歯科医の役割は、歯科医院にやって来た患者さんの虫歯や歯周病を治すというのが主でしたが、こうした時代になって歯科医師の活躍するフィールドが広がっていることを、強く実感しています。


歯科医と歯学教育の現状について教えてください

 世間では「歯科医院はコンビニより多い」といった話が取り沙汰されたり、歯科医師国家試験の合格率の低さが話題に上ったりすることも多いようですが、10年、20年先を考えると、歯科医の需要は実際にはますます高まっていくと思っています。その理由の一つが、歯科医の年齢に関する問題です。国立保健医療科学院上席主任研究官の安藤裕一先生の論文によれば、2025年頃から開業歯科医の大量引退が始まると指摘されています。先ほどお話ししたように歯学・歯科医のフィールドが広がっている中で、将来的に歯科医師の人数が足りなくなるという危機感は強いものがあります。もちろん、歯科医師を闇雲に増やすということではなく、“良い歯科医師”を増やさなければなりません。このための教育の改革が、国を挙げて続けられています。例えばかつては、歯科医師になる条件といえば国家試験に合格することだけでした。しかし現在では歯学部での6年間の教育の中で、CBTやOSCEなどの共用試験を通じて学生の客観的な評価を行い、「質の保証」を保つ努力が行われています。また、歯学教育モデル・コア・カリキュラム(コアカリ、歯学部における必須教育事項)が平成28年度に改訂されました。今回のコアカリはいまお話しした「質の保証」に加えて、「医科との連携」が強調された内容となっており、「多様なニーズに対応できる歯科医師/医師の養成」という共通のスローガンが掲げられました。超高齢化社会においては、患者さんの口腔だけでなく全身の状態に応じ、治療方法について多様な選択肢を考慮しなければなりません。そのため、歯科医師も医師もさまざまな職種と連携を取る必要があるという背景が、このスローガンには現れています。


長崎大学歯学部の教育の特徴を教えてください

 我が国で最も多くの有人離島を抱える長崎県に位置することから、長崎大学歯学部は創立以来「離島での歯科口腔医療に貢献する人材の育成」をミッションの一つに掲げ、現在でも学部根幹の教育目標ならびにディプロマ・ポリシーの中に組み込まれています。幾多の試みを経て、平成21年からは離島歯科口腔医療実習・地域保健・福祉実習が本格的に開始され、5年生・6年生の全員が本実習に参加するようになりました。また、五島市の多大なご尽力により平成22年、旧富江町歯科診療所跡に歯学部離島歯科保健医療研究所を開設し、現在、歯学部の教育・研究拠点として活用しています。

 未曾有の超高齢化社会を目の前にして、これからの歯科医師には「治す医療」から「治し、支える医療」への転換が求められ、いつまでも美味しく噛んで食べることを支援することで、全身の健康に広く寄与する口腔医療の担い手としての役割が求められています。本実習では、その鍵となる内容が豊富に盛り込まれています。五島保健所ではさまざまな疾病に対する離島ならではの対応について、机上シミュレーションを医学部・歯学部・薬学部3学部生共同で行います。また3学部教員を含めた振り返りディスカッションでは、多職種協働の重要性とともに、主体的学習を実践します。特別養護老人ホームでの実習では、入所者の口腔ケアや食事の介助、デイサービス利用者との交流がプログラムに入っています。また歯科医院における実習では、現場の声をつぶさに聞くことができるとともに在所、在宅歯科診療を経験することができます。

 現在、日本の人口における65歳以上の高齢者の割合は約28%。これに対し、五島ではその割合が約38%に達しています。ここは、数十年先の日本全体の姿をまざまざと見ることができる場所です。1週間、超高齢化社会のフロントランナーと言われる我が国のさらに先を行く離島圏に身を置き、肌で感じることで多くのことが学べます。

 大学病院では、医学部と歯学部の連携にも力を入れています。長崎大学附属病院は同じ外来棟の中に医科と歯科が入っていることで、物理的にも患者さんのやりとりがしやすい環境にあります。医科で手術を受けた患者さんに口腔ケアを施すことが、肺炎などを予防し、入院日数の短縮といった効果にもつながるのです。これを周術期口腔管理といいます。

 さらに、本学では九州の大学としては唯一の歯科法医学研究室を設置しています。東日本大震災のような自然災害による遺体の身元・死因解明や児童虐待の原因究明などに力を発揮し、社会的な意義を増している分野です。


育てたい人材像と、受験生へのメッセージをお願いします

 歯学に限った話ではないと思いますが、物事に対して常に「なぜ?」を持ち続ける探究心を持っていてほしいと思います。

 また、歯科医療というのは一般の方々からすると、治療の“良し悪し”がなかなか見えづらい世界でもあります。だからこそ、治療に対して自分の中でしっかりとした倫理観が必要であると言えます。ただ単に技術が高いだけではなく、患者さんの痛みを理解し、寄り添ってあげられる人間性を持った人に、ぜひ学んでいただきたいと思います。

この記事で取り上げた大学

蛍雪時代

螢雪時代・11月号

国公立大&難関私立大合格!のために読む雑誌

先輩合格者の「合格体験記」、ベテラン予備校講師の「科目別アドバイス」をはじめ、センター試験関連情報 や大学入試の分析&予想など、お役立ち情報満載の月刊誌。志望校・合格へあなたをサポートします。

「螢雪時代」のご案内は、こちら

学部・学科内容ガイド 記事一覧

学部・学科内容ガイド 記事一覧に戻る

“長崎大学”の関連記事一覧

特別企画

今月の入試対策

supported by螢雪時代

大学を比べる・決める

My クリップリスト

0大学 0学部 クリップ中