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学部長インタビュー「水産学部の魅力とは?」長崎大学 橘勝康先生

  • 【学部リサーチ 2018年版】農・獣医畜産・水産学部系統の総合的研究
  • [2019/1/8]

海というフィールドを人のために役立てる学問

《国立》長崎大学 水産学部 学部長
橘 勝康(たちばな かつやす)先生

1955年生まれ。1979年長崎大学水産学部卒業後、同大水産学研究科修士課程修了。徳島大学栄養学研究科にて実践栄養学博士課程を修了し、長崎大学水産学部助教授、教授を経て2016年より現職。「養殖魚の肉質改善」を主な研究テーマとし、長崎県の水産業活性化のための人材育成プログラムなどにも取り組む。


橘先生のご研究について教えてください

 私の研究のテーマを一言でいうと「どうしたら養殖魚がおいしくなるか」ということになります。魚をおいしくするためにどんなことをするか、その方法はいろいろありますが、私が主に取り組んでいるのは「致死方法」(魚をどんな方法で締めるかということ)や、締めた後の保存方法です。その他、養殖魚にどんな餌を与えるかという研究もテーマの一部として入ってきます。「神経締め」という言葉をご存知でしょうか。水揚げした魚の脊髄にワイヤーのような道具を差し込んで絶命させる方法のことで、この方法を用いると魚の身をとても良い状態に保つことができます。以前、私がある実験でクリーンベンチ(無菌環境の中で実験等の作業を行うための装置)の中にブリを入れ、細胞を取り出す作業をしていたところ、締めて血抜きをしたはずのブリが突然暴れだし、クリーンベンチの中が血まみれになってしまいました。困っていたところ、ある人から、地元の漁師さんたちが漁場で神経締めという方法を用いているという話を聞いたのです。実際に締めているところを見せてもらうと、締めた後の魚の体がまったく動きません。この方法は、魚の鮮度にもいい影響を与えるのではないかと考え、最適な締め方からその後、鮮度良く保つための保存方法まで研究し、発表しました。もともとは漁師さんたちが経験から編み出した方法ですが、これを学問として研究し、世の中に広めることができたというのが私の研究の一つの成果です。

 また、面白いところでは機器の開発という分野での研究がありました。最近だと「魚に触れただけで鮮度が測定できる機器」というものですね。これは魚肉に微弱な電流を流し、その電気抵抗の数値を測定するものです。細胞が新しいものは電気抵抗が大きく、鮮度が落ちて細胞が壊れているものは電気抵抗が低くなるわけですね。人の体脂肪計と同じ原理で、鮮度と併せて「脂の乗り」も測定することができます。


水産学部ではどんなことが学べるのでしょうか

 水産学のカバーする分野は広く、海洋、漁業、養殖、食品の生産と流通というところまでさまざまです。私の専門は、ちょうど養殖と食品生産の中間にあたります。安全で安心な魚を養殖する、つまりいい食品をつくるということですね。これ以外にも、かまぼこなどの食品加工技術に関する研究や、水生生物由来の「生理活性物質」に関する研究もあります。生理活性物質というのは生物の生体反応などに影響する化学物質の総称で、水生生物由来で身近なものだと、サプリメントにも使われているDHA(ドコサヘキサエン酸)などが挙げられます。生理活性物質の発見は陸上生物ではかなり進んでいますが、水生生物についてはまだこれからといった状況です。水産学部の研究の範疇はそうした物質を発見し、その構造や機能を解明するところまでとなります。しかし、それは医学や薬学分野などへの貢献へとつながっていきます。

 言い方を変えると、水産学という学問は、対象とする生物が非常に幅広いということもできるでしょう。たとえば、医学や薬学が対象とする生物はヒトだけです。対して、水産学が対象とするのはヒト、魚類、軟体動物など実にさまざまですから、一筋縄ではいきません。これを「海の理学」と呼ぶこともできますが、一方で水産学は、その研究成果が「人の役に立つ」ということが重要です。そういう意味では、この学問は工学的な側面も持っています。

 また、これは学問の内容とは別の特徴になりますが、水産学部では航海士の資格を取得することができます。航海士は近年、業界全体的な人手不足も影響して待遇が非常に良くなっており、人気の資格になっています。水産の勉強をしながら、そうした資格を取得できるというのは、水産学部のメリットと言えると思います。


水産学を長崎で学ぶことの利点を教えてください

 長崎県は、大きく特徴の異なる3つの海に面しています。「超閉鎖性海域」(外海との接点がわずかで湖のように穏やかな海)として有名な大村湾、極めて遠浅で広大な干潟をもつ有明海、そして大陸棚をもつ広大な東シナ海。これほど多彩なフィールドを比較的近場に有する水産系学部は全国でも珍しいのではないかと思います。それらのフィールドに、2隻の練習船を使って自由に行くことができるのが本学の強みです。また、長崎市の長崎新漁港には実験施設として「環東シナ海環境資源研究センター」がありますが、このセンターは立地の面で国や世界の水産研究所、また長崎県とも連携しやすいという利点があります。

 次に教育に関する特長ですが、本学水産学部では入学時には全員同じ学科となります。1年次、まずは幅広く授業を受け、海洋生産管理学・海洋生物科学・海洋応用生物化学・海洋環境科学の4つのうちから自分に向いたコースをじっくり考えてもらうという形をとっています。2年次から3年次はこれらのコースでそれぞれ学ぶことになりますが、4年次になるとふたたびコースを離れ、自由に研究に取り組めるようになります。このように、本学では2段階で、本人の希望と実際との“ミスマッチ” を防ぐことができます。

 また、本学水産学部のカリキュラムは日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定を受けており、卒業し、登録すれば無試験で技術士補の資格を得ることができます。技術士は科学技術の全領域をカバーしており、この資格を取得すると水産に限らず、機械や建設等の分野でも技術コンサルティング業務にあたることができます。その他には教員免許(文部科学省に再課程認定を申請中)、特に水産教員の免許も取得でき、先ほどお話しした航海士も含め、“資格に強い学部”と言えます。


受験生へのメッセージをお聞かせください

 大学は偏差値で選ぶのではなく、「理科が好き」な学生に来てほしいですね。水産学部だからといって、生物である必要はありません。確かに水産学の対象は生物ですが、その対象を物理的、あるいは化学的な視点で考える学問でもあるからです。

 また、「人の役に立つ学問をしたい」という思いをもったうえで、水産業や漁業を科学の目で見ることができる学生に、ぜひ来てもらえればと思います。


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