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学部長インタビュー「法学部の魅力とは?」首都大学東京 星周一郎先生

  • 【学部リサーチ 2018年版】法・政治・国際関係学部系統の総合的研究
  • [2018/12/3]

社会で起こる対立や問題を、法律と全体を見据えた調整力で解決に導く

《公立》首都大学東京 法学部 学部長
星 周一郎(ほし しゅういちろう)先生

東京都立大学大学院 社会科学研究科基礎法学専攻博士課程修了。専門は刑法、刑事訴訟法、情報法、医事法。2017年首都大学東京都市教養学部長 兼 法学系長 兼 大学院社会科学研究科長。2018年学部再編により同大法学部長 兼 大学院法学政治学研究科長。研究テーマは公共危険犯論、防犯カメラ論、サイバー社会と刑事法など。


法学部は法律の実務家のための学部なのでしょうか

 たしかに、裁判官・検察官・弁護士のような法律の実務家のイメージで語られることが多いと思います。それは間違いではないですが、それだけではありません。法学部で身に付けられる法的な考え方というのは、法曹を目指す人たちだけに必要なものではなく、社会で暮らす一般の人々が社会全般のいろいろな場面で活かすことができるものです。

 法律学は「説得の学問」と言われます。対立が起きた時、その解決には当事者たちが納得する説明が必要です。その際、法律が説得のツールになります。法律は複数の解釈が可能ですから、その状況に合わせて、最適な法律を選択し、どのように法律を解釈して適用させていくか。そして、当事者が納得するには、どのように筋道を立てて説明すればよいのか。法律学は、そうしたことを考える学問です。

 社会は、異なる価値観を持つ人たちで構成されています。常に平穏無事であれば理想的ですが、人が関わるさまざまな場面で、どうしても対立が起きてしまいます。それを調整する役割が社会には必要です。そうした社会の要請を受けて、法の実務家はもちろん、法律とその使い方を理解して社会の問題解決に貢献できる人を育てることが法学部の役割でもあります。


社会の変化、技術の発展とともに新しい問題や対立が起きています

 法律学は、社会に合わせて変化が求められます。先端技術に目を向ければ、ここ数年でものすごい変化が起きていますね。法律学も、その変化に追いついて行かないといけません。先端技術への理解とともに、それがもたらす社会への影響や問題点を把握し、技術の恩恵を最大限享受しながらも、一般の方々にとって不安のないように法の適用を考えていくことになります。

 私の研究テーマのひとつ、防犯カメラの課題を例に挙げましょう。当初はカメラの性能がそれほど高くなかったので、プライバシーの侵害の心配を持たれつつも、防犯のメリットが認められて設置されるようになりました。ところが、カメラの性能や録画技術が格段に進歩した今では、高い解像度で録画が可能になり、さらに顔認証などの画像解析が瞬時に行えるようになっています。そのような高性能な防犯カメラが街中に設置されれば、一般の方々には「行き過ぎた監視社会になるのでは」という不安が生まれます。そうした問題点と、防犯というメリットを、どう折り合いをつけるか。そういった新しい課題が技術の進歩により生まれています。その判断には、法的な考え方に加えて、最新技術の理解が必要ですし、さらに、それに対する世間の感覚への共感も欠かせません。技術者が考える技術の可能性と、一般社会の感覚の間に立って、両方の利害のバランスを見ながら、社会全体にとって望ましい技術の使用のあり方を判断することになります。

 技術の発展以外にも、グローバル化など、社会の変化はさまざまな場面に及びます。法律の運用に関わる人であれば、社会の変化やその背後の構造に対して無関心であってはいけません。


法律の条文だけでなく社会や人の心理までも考える学問でもあると

 もちろん各種法制度の条文を読み、趣旨を細かく学ぶことも重要です。しかし、それだけでは対立の調整はできません。それには対立の原因となっている社会構造を知ることが重要です。なぜ対立が生まれるのか、どういう背景があって犯罪が起きるのか。その問題の根源を突き止めることなしに、法による根本的な解決はできません。

 バランス感覚も大事です。対立する当事者の利害、メリットとデメリットなどの対立点を正確に捉えて、全体で見た最大公約数の利益の実現を目指すことになるからです。それには、当事者が納得するように、わかりやすく説明する力も必要になってきます。

 主張を一方的に通すのではなく、当事者の意見や主張を聞き入れて対立を調整する学問ですから、法律学はよく「大人の学問」とも言われます。このことは、十代の皆さんはまだ実感できないかもしれませんが、社会に出れば、法律をもとに対立を調整するこうした力は、社会のいろいろな場面で求められる社会人としての能力でもあると感じるでしょう。実際に、そうした力を身に付けた卒業生は、法曹実務家以外にも、さまざまな業種・職種の企業に就職して、能力を評価されています。その点で、法学部は就職に強いと言われることが多いのでしょう。


法律の膨大な条文を暗記しないといけないのでしょうか

 法制度を覚える学問ではありません。六法全書を使用しますが、それは辞書のようなもの。英語に例えると、英語を学ぶ際、辞書を使いますね。辞書に書かれた一言一句をすべて覚えても、幅広く外国で活躍できるものではありません。英単語を覚えることは、手段です。法律も同じ。六法の条文を暗記しただけでは、問題解決の力にはなりません。大事なのは、複雑な状況を捉えて、それに合うように法律を解釈して当てはめること。そうして当事者の利害を調整することです。

 ただし、基本的なことをいちいち辞書に戻って確認していては、事が進みませんから、重要な部分は覚えないといけません。法律を専門的に学んだり、法の運用を検討する際には、そこが共通認識として話が進められます。


受験生にメッセージをお願いします

 変化の激しい社会の中で、そこから生まれる新しい価値観を踏まえて、より社会に即した法制度、政治行政のあり方を考えること、そして、それを社会に提示していくことが法学部に求められています。新しい技術や価値観に近いのは、私たちよりも若い皆さんですから、法律学がさらに発展していくためには、若い皆さんの挑戦が必要だと考えています。世界のICT化は益々進展しますから、そこで活躍できる能力を備えているのはデジタルネイティブと言われる世代のはずです。

 既存の法律の学びも重要ですので、そこを土台として、新しい未来の状況に即した法律の運用のあり方を一緒に考えていきましょう。私たち教員も、新しい価値観に近い皆さんの挑戦を受け止めて、激しい変化に対応する教育を実践したいと考えています。皆さんの挑戦をお待ちしています。


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