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学部長インタビュー「国際社会科学部の魅力とは?」学習院大学 末廣 昭先生

  • 【学部リサーチ 2017年版】法・政治・国際関係学部系統の総合的研究
  • [2017/11/22]

“日本は特別”ではない国際社会、タフに生き抜く力を

《私立》学習院大学 国際社会科学部 学部長
末廣 昭(すえひろ あきら)先生

1951年鳥取県出身。1976年東京大学大学院経済学研究科修了後、アジア経済研究所、大阪市立大学を経て、1995年より東京大学社会科学研究所教授。タイ国チュラーロンコン大学客員研究員、ベルリン自由大学客員教授等を歴任し、2010年紫綬褒章受章(東南アジア研究)。『新興アジア経済論』など著作多数。


ご専門の「東南アジア研究」について教えてください

 私は、実は高校生の頃からずっと東南アジアの研究をしたいと思っていました。これは今の日本の状況にも近いかもしれませんが、当時(1970年代)の日本は一種の閉塞状況にあり、一方で活発に動いている東南アジアを実際に見てみたかったのです。

 これまで、アジアの経済分野について研究してきたのですが、最近では社会発展についても取り組んでいます。いま、東南アジアの政治は、新国王が即位し軍事政権が主導するタイしかり、ドゥテルテ大統領のフィリピンしかり、国内の状況がほとんど外に伝わりません。新聞を読んでも、いまアジアで何が起きているのかがわからないんですね。これはトランプ大統領のアメリカとも同じで、私たちがこれまで学んできた政治学の尺度では、理解することができない。大切なのは自分自身の目と耳です。

 また、近年ではグローバル化がその国独自の個性を変えるある種の流れを生み出すのを見ることができます。その良い例が音楽。例えばタイのヒットチャートトップ5の音楽を年代別に比べてみるとわかるのですが、70年代だといかにもタイっぽい曲調だったのが90年代に入ると台湾でヒットしている曲とほとんど区別がつかなくなります。さらに2000年代にはどこの国の音楽かさえもわからない状態になります。そういった流れに対して、自国の文化本来の良さを見直そうという動きも当然あり、グローバルな流れと自国の伝統をどう統合するのかということが重要なテーマにもなっています。ただ、そうした流れの中でも否定できないのが中国の圧倒的な影響力です。日本でも昨年は「爆買い」などが大きく報じられましたが、東南アジアではそれ以上の影響力を感じます。


国際社会科学部で育てたいのはどんな人材ですか?

 いま学生たちに教えていかなければならないのは、彼らが社会で活躍するこれから先10年で世界がどうなるかを見通す力です。特に大事なのは、その見通しに複数の選択肢をもつこと。従来の教育のように「100%の正解」を求めるのではなく、常にリスクを認識しながらタフに生き抜けるような人材を育てたいと考えています。

 私の同級生で、財務省の官僚で日米の経済交渉などにも取り組んできた人物がいます。その彼が面白いことを言っていました。昔、日本の経済力が強かった頃には、日本人はたとえ英語が話せなくても、考えていることを周囲の国の人々が「忖度そんたく」というか(笑)、察してくれていたそうです。ところが今や、日本は完全にスルーされていると。たとえばWTO(世界貿易機関)の交渉の席上でも、以前なら日本に必ず意見を聞きに来たそうですが、今や声もかけられない。

 そんな状況ですから、本学の学生が国際的な舞台に出ていく頃には「日本だから」と特別扱いはされません。自分自身が力をつけて、道を切り開いていかねばなりません。語学力についても、文法的な正しさやネイティブスピーカーのようにきれいな発音といったことよりも、現実の社会で生きる能力が重要です。これも先ほどの財務省の友人から聞いた話ですが、日米貿易交渉の際、こちら側が交渉文句としての“significant” と “substantial” (どちらも英和辞典では「〈量などが〉かなりの、相当な、著しい」と訳される単語)の微妙なニュアンスの違いを明確に理解できていないことを見透かされ、日本に不利な条項を盛り込まれてしまったこともあったそうです。こういう場面で、相手と対等に渡りあえる力が必要だということですね。

 本学部開設の前、本学卒業生と関連のある多くの企業に「貴社が学生に求める能力は?」というアンケートにご協力いただきました。その結果、「英語によるコミュニケーション能力」を掲げた回答は全体の3位で、最も重視されていたのは「課題の発見・解決力」でした。先ほど「日本がスルーされている」という話をしましたが、国際社会がそうした難しい時代に入っている中で、自分自身を主張し、かつ周囲と共存していかなければなりません。その力を、しっかり育てたいと考えています。

 また、先ほど中国の影響力について話をしましたが、学生たちの多くはまだまだ欧米志向です。特に昨今ではテロなどの懸念からアメリカやヨーロッパも避けられ、安全を優先してカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが人気の留学先です。私自身はアジアのほうが安全なのにと思うのですが、残念ながら「アジア」と聞くだけで避けてしまう。特に中国に関しては「反中」の言葉に象徴されるように、感情的な取り上げ方が続いています。

 アメリカのある世論調査機関が全世界の国々を対象に行ったアンケート調査で、いまの中国を支持するかしないかという問いに対して、Noと答えたのは日本とベトナムを含むごく僅かな国々で、大半の国々がYesでした。日本と世界との間に感覚のズレが生じているわけですね。今後、日本が国際的ビジネスをしていく上で、中国やインドは欠くことのできない存在。そこで“好き嫌い”を超えて相手をどう理解していくかが重要です。

 昨年入学した第1期生は237名。そのうちのべ164名がこの秋までに海外研修に入りますが、私たちが学生に求めることは3つあります。まず、何に対しても知的関心を持ってほしいということ。research question(研究上の問いかけ)の意味での「なぜ?」を常に考えつつ取り組んでほしい。2つめは他者に共感する心です。頭だけではなく、他人と喜びも痛みも分かち合う心がなければ、国際社会で生きることは難しいからです。3つめは行動力。行動を起こすために一歩でも前へ踏み出す勇気を持ってほしいと思います。昨今のネット社会は、他者への想像力や共感力をどうしても得づらい環境です。学生たちが海外でのface to faceの体験を通じて共感力や思考の選択肢を広げることを願っています。


受験生へのメッセージをお願いします

 受験生のみなさんには、自分が5年、10年先に何をやりたいかということを考えておいてほしいですね。今は受験勉強で精いっぱいかもしれませんが、大きく揺れる現代社会の中で自分がやりたいこと、そのために何をするべきかをイメージしてもらいたい。それと同時に、自分の将来について選択の幅をできるだけ持っておくと良いと思います。例えば、将来はカリフォルニアで働くという目標と同時に、インドのゴアで働く、中国の上海で働くという選択肢があってもいいはずです。語学力はもちろん必要ですが、それはあくまでも手段。10年先を見通す目を持って、国際社会をタフに生きていく人の入学をお待ちしています。


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