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学部長インタビュー「教育学部の魅力とは?」九州大学 坂元 一光先生

  • 【学部リサーチ 2017年版】教育・教員養成・体育・健康科学部系統の総合的研究
  • [2017/10/4]

グローバル化の時代だからこそ地に足を着けて“教育”を考える

《国立》九州大学 社会学部 学部長
坂元 一光(さかもと いっこう)先生

1954年鹿児島県生まれ。1977年九州大学教育学部卒業後、同大学大学院教育学研究科博士課程退学、同大教育学部附属比較教育文化研究施設助手、光陵女子短期大学及び大分県立芸術文化短期大学助教授、九州大学教授を経て2016年より現職。著書に『アジアの子どもと教育文化―人類学的視角と方法』(九州大学出版会)など。

「教育学」とはどんな学問ですか?

 大学の教育学部で学ぶことを2通りに分けると、一つはいわゆる教員養成系の課程で学ぶ、「人に教える技術と知識」です。もう一つは科学として教育を探求することです。そのことをここでは教育学と呼びますが、一言で教育学と言ってもその対象は非常に幅広いのです。あえてこの学問全体を短い言葉で表現すると、人間形成や発達、そしてそれに伴う心のありかたを研究する学問というふうに説明できるのではないでしょうか。この学問は、人文科学、社会科学および心理学等の自然科学系分野も含むきわめて学際的な領域といえます。本学教育学部についていうと、学生たちはそこでそれぞれ、自分の興味・関心に応じた専門コースを履修することになりますが、やはり子どもを含めた生身の人間を相手にする学問ですから教育学部で学ぶ学生全体に対し共通して期待するところは、相手ときちんとコミュニケーションをとり、その気持ちに共感する能力です。

 また、教育というとどうしても学校教育が注目されがちになりますが、教育学の範囲はそれだけではありません。たとえば私の専門は日本も含む東アジアや東南アジアにおける教育を文化人類学的な視点から比較・研究することですが、ここでは教育を「文化の伝達」の手段としてとらえ、伝統芸能・工芸の伝承や少数民族における教育を通じての文化の継承について研究を行っています。そういったことも教育学の範疇になりますし、教育というものを考えるうえで見ておくべき分野であると思います。


九州大学教育学部の教育の特徴を教えてください

 近年、「グローバル化」の言葉に象徴されるように、わが国の社会にも多文化化や多言語化が進む中で、学校に通う子どもたち、あるいは保護者にも、これまでとは違った形で社会や学校との距離のとり方が求められています。そうした社会の変化への対応は、今でこそ多くの大学で取り組んでいることと思いますが、本学教育学部では1950年代初頭に日本で初めての「比較教育学講座」を設置して以来、海外の教育事情に対する研究にかなり早い時期から取り組んできました。

 九州は地理的にも歴史的にも、アジア諸国と深い関係を保ち続けてきた地域です。ですから、世の中で一般的に言う「国際化」「グローバル対応」とはやや異なり、対象をアジア地域に絞った研究に力を入れています。中でも東アジア地域、特に中国や韓国では大学入試が大変過酷な状況であることはよく知られていますね。これに伴うメンタルヘルスの問題や経済的な教育格差の問題などは、わが国も含めた各国共通の教育における課題として共に考えることができます。国内だけでなく、国際的な視点で教育学に取り組むことができるというわけですね。

 一方で、われわれはローカルな部分、あるいは現場に立脚した学びの重要性についても認識していて、フィールドワークやインターンシップ、ボランティア等の実習を重視しています。たとえば、地域の小中学校を訪問して先生方のお手伝いをする、あるいは地域の教育デザインに取り組むといった形の学びです。変化のスピードが激しい時代にあって、どうしても脇に追いやられがちになる人どうしの直接的なコミュニケーションをいま一度見直してほしいと考えているからです。また、グローバル化する社会であればこそ、「アジアの中の日本」といったローカルな考え方を忘れず、グローバル化の波に流されない、地に足の着いた視点を持ってもらいたいと思います。

 来年(2018年)の後期から、本学教育学部は現在の箱崎キャンパスから伊都キャンパス(福岡市西区から糸島市にまたがる新キャンパス)に移転します。移転に先立ち、糸島市の小中学校や教育委員会と連携し、学生の教育と研究を行いながら地域の教育にも貢献する体制づくりを進めています。


受験生へのメッセージをお願いします

 いま、教育の世界にはいじめや心の問題をはじめ、多くの問題があります。本学教育学部で学ぶ学生にも、そういった物事への課題意識を強く持って入学してきた人がたくさんいます。受験生のみなさんも、ぜひ教育の現状に対する意識を持っていただければと思います。また、やはり人間に関心があり、相手の立場に共感できる力が大切です。

 それともう一つ。大学に入って、やりたい研究や将来のことを一つに絞り、それに向かって勉強するのも良いことではありますが、一方で目標の絞り込みすぎは考えものかなと思います。最初にもお話ししましたが、教育学とは人文科学・社会科学・自然科学を横断した、人間に対する総合科学です。その世界にせっかく入ったからには、幅広い視野で学んでいただければと思います。入学前に持っていた将来のヴィジョンというものも当然あると思いますが、そこであえて自分というものをいったんバラし、人間についてもう一度学び直すことは新たな展望を開いたり、自分の中に“引き出し”を増やしたりすることにもつながります。引き出しの多さは、最終的に自分のやりたいことを決めた後も、さらなる展開力として発揮されるはずです。

 ですから、いまは「将来こうなりたい」という目標を必ずしも強く持っていなくてもかまいません。むしろ、漠然とではあっても、人間についてこういうことを知りたい、明らかにしたいという強いこだわりを持った受験生も、私たちは大歓迎します。

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