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学部長インタビュー「社会学部の魅力とは?」法政大学 徳安彰先生

  • 【学部リサーチ 2017年版】社会・社会福祉学部系統の総合的研究

社会で生きるための“リテラシー”を身につけてほしい

《私立》法政大学 社会学部 学部長
徳安 彰(とくやす あきら)先生

1956年佐賀県生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。同大学院社会学研究科博士課程修了。法政大学社会学部専任講師、同助教授、ビーレフェルト大学客員研究員、法政大学社会学部教授を経て2016年より現職。共著に『社会理論の再興』(ミネルヴァ書房)、『理論社会学の可能性』(新曜社)など。

社会学とはどんな学問ですか?

 社会や社会現象と呼ばれるものについて何か語ればすべて社会学であるかのような誤解がよくあります。たとえばテレビなどで、社会学者でもない人が「◯◯の社会学」と称してコメントしていたりすることがありますが、これは社会学とはいえません(笑)。ただ、違いがわかりにくいケースもあって、たとえばルポライターがある社会現象について、地道で綿密な調査を行って優れたルポルタージュを書いたとします。社会学者も「質的な調査」といってフィールドワークを行い、そこで知見を得ます。現地へ行って現場を見て実態をつかむという点では、ほとんど変わらない部分もあります。しかし、ルポルタージュと社会学では、その先が違ってきます。ルポルタージュの使命は、現場で得た事実を社会に伝え、そして批判も含めて問題提起することにあります。社会学では、対象となる社会現象がなぜ現実に起こっているのか、それを社会学の理論や概念を使って説明してみせるということが大事です。たとえば家族について、父親は外で働き母親は家事育児をするとよく言われますが、「役割」という概念を使うと、働いて家族の生計を維持したり家事育児によって家族の生活を保ったりする「役割」が、なぜ父親と母親に固定的に割り振られる傾向があるのかと問うことができます。そこから性別分業や家族のあり方について新しい可能性を展望することもできます。ここが学生には理解しづらいところで、対象となる社会現象が日常的なせいか、かんたんに説明できることをどうして持って回った言い方をするのか、と言われることもあります(笑)。社会学の意義は、日常的になじみのある社会現象をその理論や概念で読み解き、今まで気づかなかった問題の要因や構造を解き明かすことにあると私は考えています。


ご専門の「社会システム論」について教えてください

 自然科学の分野から発達した「システム論」「システム科学」といった学問の概念を用いると、さまざまな社会現象についてうまく説明できる部分があります。そこから「社会システム論」が体系化されてきました。

 現代社会は非常に複雑だし社会システムは目に見えないので、ピンと来ない学生も少なくありませんが、私はよく授業で自動販売機を例にあげて、「私たちはしばしば人ではなくシステムを信頼して生きている」という話をします。私たちは自動販売機で売られる商品を製造している人や商品を補充する人をふつうは知らないので、その人たちを個人的に信頼することはできません。それでも当然のように自動販売機で商品を買うのは、お金を入れると確かに表示された商品が出てくるというこの機械の働きを通して、経済的な売り買いのシステムが社会全体で信頼されているからです。

 自動販売機の例からもわかるように、この社会は人の顔が見えないシステムによって動かされています。社会が何か変調をきたしたとき、その原因を誰かのせいにするのではなく、社会を動かしているシステムの中に求めていくのが社会システム論の一つのポイントであると思います。


社会学部でどんな人材を育てたいですか?

 これは法政大学に限った話ではないのですが、研究者の道に進む学生はごくわずかで、大半の学生は就職などで社会に出ていきます。それを踏まえて、すべての人に当てはまる方向性を言うと、社会学部で学ぶ専門知識を通して市民として社会で生きるための“リテラシー”を身につけてほしいと思っています。本学の場合、社会政策科学科で学ぶ政策に関する専門知識は、たとえば公務員として政策を動かす仕事の中で役に立つでしょう。社会学科で学ぶ社会構造や人間関係に関する専門知識があれば、企業だけでなくNPOなどの非営利団体での活躍も期待できます。メディア社会学科で学ぶメディアに関する専門知識は、さまざまなメディア産業の中での情報の表現や分析に活かせます。そのように、学部で身につけた専門知識を社会の中で活かせる人材になってほしいものです。


法政大学社会学部の教育の特色を教えてください

 本学社会学部は全国の私立大学の中でもかなり規模の大きな学部ですが、かなり早い時期から少人数教育に取り組んできました。この少人数教育には2 つのポイントがあります。

 一つはゼミでの学びです。1年生のときには「基礎演習」といって、大学で学ぶことの基礎的な知識や技法を学ぶ少人数のゼミに割り振られます。2年生以降はそれぞれの関心と専門領域に応じて希望の先生のゼミに入ります。各ゼミが20名前後で活動を行っています。大教室の授業とは違い、学生同士が顔も名前も、何を考えているかもお互いにわかった状態で同じテーマに取り組む形になるわけですね。

 もう一つは少人数での実習科目を多数設けていることです。実習の内容は学科によってさまざまですが、たとえば社会政策学科では実際の政策で使われているデータの分析や模擬的な政策立案を実習します。社会学科では実際にフィールドに出かけて現地調査を行ったり、アンケート調査の実施を通じて実際に世の中で行われている統計調査がどのように作られているかを実体験したりします。メディア社会学科では映像や文章表現を作品にしたり、既存の作品を分析したりするような実習も行います。いずれの実習も少人数ですから、大教室の授業と比べて集中的に学ぶことができますし、実際に手や足を動かして学ぶという、いわばアクティブ・ラーニングでもあります。

受験生へのメッセージをお願いします

 社会では日々いろいろな現象が起きていますし、望ましくない問題も起きていますね。そうした社会現象や社会問題に対して好奇心旺盛であってほしいと思います。身近でわかりやすい現象でもいいのですが、自分の生活からは一見離れていそうな現象にいかに関心が持てるかというのがある意味、社会学のポイントです。たとえば「私の生活」と「格差社会」との間には視点に大きな差があります。もちろん「私の生活」の視点から格差社会を考え始めても良いのですが、そこから視点を広げていくことが大切です。

 また、18世紀以降の近現代史にも興味を持ってもらえたらと思います。そもそも、社会学自体が産業革命や民主国家の成立といった歴史の大変動から生まれた学問です。その流れをざっと知っておくだけでも、大学に入ってからの授業の理解が変わると思います。

この記事は「螢雪時代(2017年9月号)」より転載いたしました。

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