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東京大学[地震防災研究]……地震研究所・古村孝志研究室

  • 大学での学びを知ろう![先端研究編]
  • [2013/12/1]

地震、火山、地球温暖化、気象災害の謎に挑む
 高校までの教育が既存の知識の修得に重点が置かれるのに対し、大学では、既存の知識の応用、あるいは、誰もがいまだ知りえていない知の創造が行われている。膨大な量の知がどんどんと収斂されていって、槍の穂先のようになった最先端を、世界レベルで競い合っているのが大学、研究型大学の姿なのだ。大学のランクが、日本では入試の難易度や、卒業生がどこに就職したかなどでつけられることが多いが、世界レベルでは、研究力の強さが大学を評価する最大の指標となっている。研究力はノーベル賞や各種の学術賞などのほか、世界トップランクの学術誌 での論文掲載数、引用数などで示される。日本の大学も、化学、物理学、数学などで世界トップにランクされる大学が数多くある。iPS細胞や素粒子研究、地震研究などがその代表例だ。数多い大学の研究のうち、今回は、東日本大震災以後、国民の大きな関心を集めている社会貢献のための研究、とくに天災や環境異変に関する研究を紹介する。

写真提供◎東京大学地震研究所・古村孝志

地震・津波をシミュレーションで可視化。避難・防災に役立てる

宮城県南三陸町での現地調査(ビデオ取材)


東日本大震災をシミュレート

記事画像

死者・行方不明者数18,550人という空前の被害をもたらした東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、世界の地震観測史上第4位にあたるマグニチュード9.0、阪神淡路大震災と比べて約360倍のエネルギーを持った超巨大地震だった。
 こうした巨大地震が起きたのは、従来より単独で起きると考えられていた5つの大地震(三陸沖中部、宮城県沖、三陸沖南部海溝寄り、福島県沖、茨城県沖の地震)がつながって一度に起きたことによる。
 東京大学地震研究所の古村孝志教授は、日本列島の1800個の地震計のデータを解析、地震発生から各地に揺れが伝わり平野が大きく長く揺れる様子を可視化した。そして、スパコンを用いて揺れと津波の再現を行い、強い揺れと巨大津波の発生原因をつかんだ。また、将来の巨大地震による各地の揺れのようすや津波の到達のようすをコンピュータシミュレーションで予測する研究を続けている。成果は、今後の避難や防災対策に活かされる。

南海トラフ地震のシミュレーション。東海、東南海、南海の3 地震が連動して起こった場合を想定。40秒後、100秒後、180秒後、300秒後ごとの揺れの様子が計算されている。


南海トラフ連動型地震に備える

巨大地震は、地球の表面を覆う十数枚のプレートがぶつかり合うことで起こる。一方のプレートが他方のプレートの下に沈みこむところでは「プレート境界型の地震」、プレート同士がすれ違うところでは「横ずれ断層型」の地震が起こる。このほか、沈み込むプレートの中で起きるスラブ内地震や、陸のプレートの中で起きる内陸活断層の地震など、地震の種類は実に多彩だ。
 4つのプレートが境界を接する日本は、これらすべてのタイプの地震が起きる。体に感じない地震を含め、一日平均320 個の地震を記録する世界一の地震国が日本なのだ。
 大地震に会うたびにその災禍に立ち向かい復興するという歴史をつないできた日本。向こう30年の間に70%の確率で起こるとされる首都直下地震、そして60~70%の確率で起きる可能性がある南海トラフ地震などについて、日本各地にどのような強い揺れと津波が起きるのか、どうすれば被害を最小限に食い止めことができるか、古村教授は日夜この研究に挑んでいる。



東京大学地震研究所とは?

地震学、火山学など理工系分野の教授・准教授・助教78名に加え、技術・事務職員51名と、研究員・大学院生150名が研究を続ける東大地震研は、1925年に設置されて以来、全国共同利用・共同研究の拠点としてわが国の地震火山研究をリードし続けている。地震研では、地震・火山活動の研究だけでなく地球内部の諸現象の科学的解明や、地震などが引き起こす災害の軽減を目指した最先端の研究が行われている。世界各地から研究者や留学生も多数集う世界の地震・火山研究の総本山なのだ。



先生からのメッセージ

古村 孝志 (ふるむら たかし)
東京大学地震研究所
巨大地震津波災害予測研究センター教授

地震のほとんどは、環太平洋火山帯とアルプスヒマラヤ造山帯に沿った地域で起こります。ヨーロッパの大部分の国々ではほとんど起こりませんし、米国でも大きな地震は西海岸でしか起こりません。多くの国は地震災害そして地震防災の研究には無縁なのです。
 全国で地震が頻発する地震国日本はそういうわけにはいきません。地震災害から国民を守る義務が政府や大学などの研究機関に求められます。地震学はまだ若い学問です。1923年の関東大震災をきっかけとして東大地震研が設立されてから90年、地震研究を大きく発展させたプレートテクトニクス理論が発表されてからでも40年とたっていません。その中で地震と強い揺れが発生するメカニズムなどはかなりわかってきましたが、なぜそこで大地震が起こるのか、いつ起こるか予測できるのかなどは謎のままです。
 私は、地震計に記録された地震波形データの解析や揺れの伝わり方のコンピュータシミュレーションを専門にしていますが、もちろん地震研究はそれだけではありません。断層を調べたり、地震計を設置したりする野外観測や、岩石を壊して地震を起こす室内実験、断層運動の力学や地震波の伝わりかたの理論的な研究など、研究は多岐にわたります。地震学の世界には自分の実力を発揮できる分野がいくらでもあります。そのためには、高校や大学で、数学や物理学といった基礎的な学問に力を入れることが大事です。その上に自分の得意とする専門分野ができるのです。皆さんといっしょに、世の中の役に立つ研究をいつか一緒にできることを願っています。

この記事は「蛍雪時代(2013年12月号)」より転載いたしました。


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